23、フェニクス代表戦当日①
「よし!時間通り揃ったな!」
俺達は朝早くに召集を受けていた。何故か?それは今日がフェニクス代表戦当日だからであり、転移魔法で会場まで一気に向かうという話を既に聞いていたからである。
別に俺も転移魔法使えるのだが…それは置いておく。
ガルド先生の言葉に全員が並ぶ。
「それでは学園長!お願いします!」
ガルド先生の声でロード学園長が出てくる。
「はーい、集まって~、転移魔法使いますので集まらない人は連れていきませんよ~」
転移魔法は少しでも範囲をはみ出すと転移されないのだ。
範囲に入っていたとしても、外部からの妨害もされる事がある。
例えば、範囲に入っていても魔物が来て体に触れられていたら、転移はされない。
生徒達は授業でそれを知っているので魔法陣の中にすぐに集まった。
「よし!じゃあ行きますよ~…転移!」
さて、どんな場所なのかな―――
転移を終え着いたのは教室二つ分ほどの大きい部屋だった。
内装はレトロな感じで温度調整も魔道具でされている。かなり居心地が良い部屋だ。真ん中に大きなテーブルがあり、そこには菓子などが置いてある。
「はーい、休憩にするので時間まで休んでてくださーい」
学園長は後ろの扉から何処かへいった。
「いや~クロ、案外オシャレだな~」
「そうだな、でも自由時間だけど暇だな。周りの奴らは緊張で固まってるけど」
俺達Aチームとレイン・カシエルのBチーム以外は、緊張で動きが鈍い。
レイン・カシエルは緊張というより二人の世界を作っているから別の問題かもしれないが…
「そりゃそうだぜ、何せ連中にはスカウトされるかが掛かってるんだからな」
そういえばガルド先生が言ってたな…
ここで良い成果を出せたら王城の魔導士や有名な騎士団からスカウトが掛かり、将来になんの心配も無くなるぐらい重要らしい。貴族の生徒たちの事を考えれば緊張するのも分かる。
「とりあえず、コロシアムの中、見にいこーぜ~」
「あぁ、レナも行くか?」
「…え!?あ!うん!行く!」
レナも緊張で固まってたらしい…
まぁ、散歩すれば緊張もほぐれるだろ―――
コロシアムの内装を見てジルガ上機嫌で話しかけてくる。
「いや~凄いよな~」
「そうだな、軽くそこらの美術館よりは凄い」
廊下の壁には歴代の王都の王様の肖像画が飾ってあったり、王都の歴史等が書かれている石版が置かれている。
俺のとっては正直にどうでもいい、それよりジルの様子がおかしい方が気になってしまうからだ。
なんていうか…馬鹿になった?
「ジル、何でそんなにさっきからテンション高いんだ?頭打ったか?」
「何で頭打った限定なんだよ…まぁいいか、それで俺がテンション高い理由だがな、王様に会えるからだよ!」
王様?確かにコロシアムには国の代表が掛かってるから王様も来ると思うが…それが何故喜ぶ理由になるんだ?
「王様と俺の親父は古い仲でな~、その関係だよ」
「古い仲ってのは?」
「後で教えてやるから!」
「お、おう、そういえばレナは?」
レナを俺達は探す、すると後ろにレナが兵隊の行進みたいに歩いてる。
緊張がとてつもないんだろう…
「あ、そろそろ戻らないとやばいな・・・」
「よし!走るぞ!」
俺達は【走るな危険】の貼り紙を無視して走る。
レナも正気に戻ったのかついて来る―――
「よっしゃ!間に合った!」
俺達は時間の五分前ぐらいに控え室に着いた。
まだロード学園長も来ていない。
と、安堵の息を吐いていると後ろの扉が開いてロード学園長が入ってきた。
本当にギリギリだったようだ…
「はい!第一試合はAチーム!第五学園Cチームと戦ってきなさい!」
学園長の掛け声に俺達は「「「はい!!」」」と言って控え室を出て案内される。
案内されて見えてきたのは、大きな扉だった。
「この先がコロシアムの戦う場所だよ~。我が屈強なる騎士達よ、行くがよい!そして勝て!」
ロード学園長の騎士になった覚えはないがとりあえず勝ちに行くか―――
会場を出ると歓声が響く。
地面に白い線が引かれている。
形からしてフィールドの範囲なんだろうな。
あれから出ると負けなのだろう。
俺達はすぐに理解して、作戦の位置に立った。
「両者準備は良いですか?」
相手チームも位置に立ったらしい。
相手チームは全員前衛だ…俺達の学園のCチームとほど同じだな。
「では、はじーーーーーーめっ!」
この審判ナメてんのか?絶対遊び気分だろ…
スタート同時に突進して来る相手。
「ジル、半分よろしく、それとレナはジルのサポート」
「分かった」
「はい!頑張ります!」
まず一人をジルが盾ではじき飛ばした、俺も一人を足で蹴ったら綺麗にもう一人巻き込んで場外に飛んで行った。
ジルが盾を使っている間に一人を拘束していたレナが拘束を外し、ジルがはじき飛ばす。
「し、試合終了!!」
会場はシーンとなった。一瞬で片付けたので理解出来なかったのだろう。
それから一秒ほどたって歓声が響き渡る。
VIPルームのような所に座ってる王様も立ち上がり拍手している。
一試合目は終わった。
結構楽だったな…
さて、休憩しよう―――
何故今決勝戦か?それは第二試合目も第三試合目も相手が辞退したからだ。
おそらく負けると名声が下がるからだろう。
敵は全員貴族みたいだし、平民の俺達に負ける事は親の顔に泥を塗るようなものだ。
けれど驚いたのは、貴族が初めから諦めていたことだ。
貴族はプライドが高いらしいが相手に一矢報おうと言う思いはないようだ…
うちの学校のCチームとDチーム一試合目であっさり負けたらしい。
まぁ予想してたけど…
俺達の相手はどうせレイン・カシエルのBチームだろう…と思っていた…
けれど決勝戦で当たったのはうちのBチームではなかった。
これに関しては驚いた。
何故なら準決勝で当たった相手は三試合目まで普通の平均的なチームだった。
しかし準決勝になった途端、何かに取り付かれたように強くなりBチームに圧勝したのだ。
その様子はまるで以前暴走した生徒達のようだった。
「両者準備は出来ましたね?では始め!!」
「ライセイ!!」
開始の直後にジルがライセイを呼ぶ。
相手の様子を見た時に確信した。
コイツらは暴走していた生徒達と同じく操られている…
しかも、今回は呪いじゃない。明らかに何かが取りついているのだ!
「ごめん、今オムライス食ってたんだけど・・・」
ライセイは人の姿で口にケチャップをつけて出て来た。
可哀想に…
「あ、ごめん、でもそこを何とかお願いしますよ…ね?」
ジルが手を合わせてお願いしている。
「しょうがありませぬな…」
ライセイは渋々ポケットティッシュで口を拭いた。
ライセイはスレイプニル状態になり、角をこの前同様天に掲げて光った。
けれど以前のように倒れはせず、苦しみ出した。
そして相手生徒の背中に何か、影のようなものが見える…
「この前とは違いますぞ、今回は呪いでは無く、魔族本体に憑依されてます。それじゃ、オムライスが冷えるのでこの辺で…」
ライセイは再び人の姿になり、ジルの中に入った。
そして、相手の生徒を憑依していた奴が出てくる。
観客席がざわつく、その出て来た相手が大変なモンスターだったからだろう。
俺からしたらあまり脅威では無いが…
黒い重鎧。鎧の下は空で肩から上が無く、自分の首を腕に持っている。
首がない黒騎士、レナが震えながらそのモンスターの名称を言った。
「デュラハン…」




