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21、フェニクス代表戦三日前

俺とジルはいつものように寮をでて学校に向かった。

すると校門の前にある人物が仁王立ちしていた。

俺はその場でその人物を殺すか考えたが今騒ぎを起こすと面倒くさいので、通り過ぎようとした。すると見逃そうと思っていたのに話しかけてきた。


「ふっ、驚いているのだろ?俺がこの短期間で復活したことを…」


そう、その人物は精神崩壊して俺が(痛め付ける為)蘇らせたシード・カシエルだ。


驚いたけどわざわざここでそれを言う為に待つ意味はない気がする…

それに足を少し崩している。

おそらく何時間も前から待っていたのだろう…ここで待たなくていいのに…

俺が憐れみの目で見ているとシード・カシエルは笑っている。


「ふっふっふ、わかるぞ!その目は俺の姿を見て絶望している目だな!」


…こいつ…面倒くさい。

こういう時は関わらないほうがいいな。早々に話を切り上げるか。


「あ、はい、じゃあそれでいいです」


面倒くさいので軽く流すと、ジルが耳打ちをしてきた。


「クロ、コイツマジで頭イってる奴だ、怒ると多分猿みたいにキキーって言うから目を合わさない方が良いぞ」

「そうだな、野生動物には目を合わせると襲って来るって聞くしな」


俺達がコソコソ声で話していると、シード・カシエルが声を荒げて笑う。


「ハッハッハ!どんな作戦を考えても俺には勝てない!俺は賢者の石を手に入れたのだからな!!ハッハッハ」


賢者の石?賢者の石って自分の属性の魔法を全て覚えるってあれか?


レイチェルさんの家にあった賢者の石は確か濃厚な魔力の塊みたいな感覚があったけどシード・カシエルが持ってるあれ・・・ただの石ころだぞ?多分騙されたんだな。

いくらで買わされたんだろ?


「やべーよ、クロあいつあの石ころを賢者の石って言ってやがる」

「お前賢者の石見たことあるのかよ・・・」

「ないけどあれから何も感じられないことはどんな馬鹿でも分かるぞ!?」


俺達がコソコソ声でずっと話しているとシード・カシエルは笑いを止めて俺達を馬鹿にするような目で見下してきた。


「お前達はもう飽きた、それでは賢者の石の力を見るが良い!!」


シード・カシエルが賢者の石(爆笑)を天に掲げる。

しかし、何も起こらない…


「うおおおおお!!力が溢れてくる!」


それ気のせいです(爆笑)


「うおおお!…ん?」


どうやら何も無いことに気付たらしい。

俺は不思議そうに賢者の石(仮)を見ているシード・カシエルにこう言った。


「ウワー、ナンダアノマリョクハー、コンナノカテナイー」


うん、棒読みになったな。

これじゃあ、多分これ以上は面白いことが起きないだろう、失敗したな…


「おいクロ!もう既に手遅れなアイツにそんなこと言ったら「ハッハッハ!」」


ジルの耳打ちを終える前にまたもやシード・カシエルの笑い声が…

まさか…騙されてないよな?


「何だこの力は!?明らかに俺は強くなっている!!感じるぞ!」


…それ気のせいです。ってかあれで騙されるなよ…

シード・カシエルは俺に手を向けた


「今ならイケる!!喰らえ!蒼炎!!」


蒼炎とは蒼い炎だ、火属性の最高クラスの技。別名【神の炎】と呼ばれる

しかし、シード・カシエルの手からは何も出ない…

まぁ、そうなるよね…

だってコイツ何も変化ないもん。


「じゃあ、俺ら学校遅刻しそうだからじゃあな」

「生徒会長(爆笑)放課後会いましょう!」

「待て!まだお前らを許してはいな…!」


シード・カシエルが俺の肩を触れようとしたので俺は振り向き、シード・カシエルの制服の胸倉を掴み、こう言った。


「今は殺さないって言ってやってるんだ。分かったら失せろ」


俺はシード・カシエルの制服の胸倉を離した。するとシード・カシエルは地面に尻餅を着いた。

そして―――


チョロチョロチョロチョロ


「汚っ!」

「ん?どうしたー、さっさと行くぞークロ」


ジルは十メートルほど離れていて、シード・カシエルは俺の影にいて見えないらしい。


「いや、何でもないから行くか!遅刻しちまう!」


お漏らし・太郎のあだ名はもう確定だな


俺はジルと学校に向かい、結局間に合わず一緒に怒られた。あの野郎のせいだ―――





授業を終え、放課後になると再び召集がかかる。代表戦の練習だ。

シード・カシエルが復帰という事で、シード・カシエルは余ったチームに分けられ、チームは全部で四チーム。

俺達は一番初めに決めたチームなのでAチーム。


結局、レイン・カシエルはサリア先輩と離れる気はないらしいので、シャル・カシエルと組んで終わった。


今日は対戦するらしいので、火吹き龍は休憩してもらった。


「まずAチームとBチーム!前に出ろ!」


ガルド先生の言葉に俺達とレイン・カシエル達のチームが出てくる。


フェニクス代表戦と同じ形式で戦うらしく、二十メートルかける二十メートルのフィールドが相手サイドと自分サイドにある。


俺達は作戦通りの場所に立った。

ジルが一番前で、そこに着いていくように俺が右後ろにいる。


そしてレナが三メートルほど後ろでサポート。

相手サイドを見ると、レイン・カシエルが前衛で槍を構え、その後ろで弓のサリア先輩が構えてシャル・カシエルは魔導書を持っている。


魔導書は魔法をサポートする本の事、本の中身は詠唱を書いてある文字だ。

文字を詠むことで、魔力の消費をかなり減らせるらしい。


「よし…始め!!」


始まったので俺とジルは突撃する。

するとシャル・カシエルが詠唱を始めた。


「火炎を帯びた岩よ、今その力を壁とし我等を守護する力となれ!ラヴァウォール!!」


溶岩の壁が出て来た。溶岩の壁は海の波のようにこちらに迫ってくる。

この状況では手出しできないが、相手も何も出来ないはずだ。


「アクアウェーブ!」


ん?今度は詠唱なし?

まぁ、これはおそらく溶岩の壁が壊れる前に早めに使いたかったのだろう。

すると水の波が現れ溶岩の壁を岩に変えた。


「どういう意味だ?何故溶岩を岩に変えた?」


俺は普通にわからなかった。

すると壁の上を飛び越え、レイン・カシエルが槍を構えて飛び掛かってきた。この時点で作戦が丸わかりだ。フィールドを狭くした状態にすることで近接戦闘に向いていないサリア先輩でも後ろの安全な場所で弓を使うことが出来、役割の区別をつけたのだろう。

レイン・カシエルの足には風が帯びてある。

おそらくサリア先輩の風魔法を踏み台にして跳んで来たのだ。


しかし詰めが甘い。

おそらくはレイン・カシエルに前衛を任せ、サリア先輩が上から弓で援護。

シャル・カシエルも魔法で攻撃に専念する作戦だろう。


「ふん!」


ジルがレイン・カシエルの突きを避けて、横から盾ではじき飛ばした。

レイン・カシエルは場外にでて失格。

俺は岩の壁を魔力の斬撃で破壊し、穴を空けた。


「よし!行くぞ!」


俺の掛け声に頷く二人、そして俺達はシャル・カシエルとサリア先輩を倒しに行く。

サリア先輩は精霊をだした、使い魔だろう。

属性はもちろん風、一言で言うと風を帯びた白い鳩みたいな感じ。

俺達は溶岩をかけられたら堪らないので、シャル・カシエルを倒しに行く。

シャル・カシエルも使い魔を出す。以前みた炎の天族だ。確か名前は紅。


「また会ったな、今度は魔法を使わせてもらう!」

「ジル!先行け!」

「分かった!」


ジルがシャル・カシエルを倒そうと紅を通り過ぎる。


「行くぞ!小僧!フレアボム!」


フレアボムかぁ、小さい炎が術者以外の何かに触れると爆発する魔法だっけ?

とりあえず俺はまだ紅が持っていたので魔力の斬撃(凝縮)を紅のフレアボム目掛けて放つ。


ボンッ!!


するとフレアボムは紅の手の上で爆発、紅は学園内の結界で重傷ではないが戦闘不能になった。


「グハッ、は、早めに投げれば良かった…」


バタッ


こいつ、本当は馬鹿なのか?

さて、あとは二人かあれ?そういえばサリア先輩の弓は?

俺は周りを見る、するとジルはもうシャル・カシエルを場外に飛ばしていた。

サリア先輩はもう既に倒されていた!さらにそれをしたのはレナだったのだ!


「おぉ!レナすげーじゃんっ!」


俺はレナの方に駆け寄る。


「えっへん!凄いでしょ!まぁ武器の相性が良かっただけだけど…」


何やら暗そうな雰囲気なのでさっきから見ていたジルにきく。


「武器の相性って?ジル説明よろしく」

「あぁ、まずは弓を放とうとしたサリア先輩の腕をレナが拘束、次に精霊同士で戦ったけど相手は鳩、こっちは猫、まぁこの先は分かるな?」

「なるほど・・・精霊にも相性ってあったんだな・・・でも、使い魔だろうが何だろうが、レナは勝ったんだ!」


俺が励ますとレナは「あ!そっか!」と言い喜び始めた。


他のグループと戦ったがCグループは戦術も考えず飛び込んで来たのでジルが場外に飛ばして終わり。

シード・カシエルグループはまだ連携が取れていないので戦えないそうだ。


ちなみにシード・カシエルは装備の下がジャージになっていた…

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