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第八十七話  転生なんちゃって農家 4

 ロータリーとトラクターのセットによる販売。


 まずは北海道からひろまり、最近は関東や中京地域、九州でも土地改良の第二次政策が立案されている。が、これは前世でいえば昭和五十年前後から平成にかけて各地で順次行われた土地改良事業に相当する。時代を三十年以上早めてしまっているが、その原因はと言うと、前世でも有名な農機メーカーが早々にコンバインやトラクターを販売しだしているからに他ならない。


 こうしてあと十年もすれば俺が前世で見たものに近いトラクターやコンバインが田畑を走り回る姿が出現するのかと思うと、なんとも言えない気分になったが、問題がないわけではない。

 そして、今現在陛下が乗り回しているトラクターはロータリーや犂ではありえない速度で走り回っている。かといって、耕せていない訳ではない。


 北海道を中心にした大型機械による犂耕(プラウ耕)には地力低下という問題が付きまとっている。あまりに過度な反転をしているとはじめのうちは良いが、その後急激に地力を失うことになる。そして下層へと追いやられた細かな土によって硬い石灰化した土壌になってしまう。こうなると水の浸透や作物の根の成長を阻害し、養分の枯渇と共に作物の収量の低下を招く。

 日本では気候の関係もあってかあまり大きな問題とはならないが、米国では土壌流出という問題が起こる原因にもなっている。


 そして、ロータリーにも問題がある。


 ロータリーは犂に比べて耕す深さが浅い、犂は20~30cm程度まで反転させるのに対して、ロータリーは10cm程度でしかない。

そうすると、常に10cm程度の部分で土を細かくし続ける事で、その下層部分に細かな土が堆積し水を通しにくく、根の発達を阻害する層が出来てしまう。


 ロータリー耕ばかりしているところを犂で反転させれば、この硬い層を無くせるじゃないかと安易に考えそうだが、反転させることで、細かな土を下方に追いやり、余計に硬い層を作る手助けとなり、かえって作物への悪影響が出てしまう。

 プラウ耕ばかりやってる農地の改善にロータリー耕をやっても一時的な物で、再度のプラウ耕で状況を悪化させていくことになる。


 そんな場所をどうするのか、一つの回答が、プラウによる完全反転やロータリーによる攪拌を伴わずに耕せるチゼル・プラウという種類の犂である。


 チゼルはかぎ爪の一種で、引っ掻く事で耕すのだが、これに小さな反転板を付け、二、三列に互い違いのチゼルに並べる事で、適度な反転と下層の耕起が可能になる。こうすることで土の間に空気の層を作ってやることで、地力を回復させる。

 一度に深く耕すのではなく、数回に分けて深さを変えることで負荷の少ない作業が素早く可能になる。 もちろん、土塊はそれなりの塊だから、種まきの前には馬鍬やロータリーで上層を砕く必要はあるが。


 そしていま、陛下が乗り回しているのがそのチゼル・プラウを付けたトラクターだ。

 既に二往復を終え、再度深さ調節をして仕上げに入るところだ。侍従長が先ほどからこちらを見て何か目で訴えているが、気付かないふりをしている。触らぬ神に祟りなしというだろう?



 暫くして、一連の作業を終えたらしい。

 操作を教えた兵の元へとトラクターが帰還した。未だ固まって呆然としている兵に陛下が声を掛けられるとようやく兵はぎこちなく動いている様だった。


 そして、陛下がこちらへやってくる。


「上総宮、農作業というのもなかなかに良いものだ。これからあのような機械が広まれば作業は早くなり、農民たちも助かるだろうな」


 重労働を強いられる作業が減ることで作業効率が上がる事をトラクターに乗って実感されたらしい。


「ところで、あれは荒起こしで、もう一度作業があるのだろう?今はあれしか見えないが、何を使ってやるのだ」


 当然の疑問だと思う。が、


「陛下、ご覧のようにまだ終わったばかりで土が乾いておりません、早くても数日待ってから、円盤型馬鍬で土塊を細かく致します。その後、播種機によってソバの種を播くことになります」


「ほう、では、その時はまた乗せてもらうとしよう」


 平然と何言ってんですかね、この陛下は・・・・・・


「いえ、これらの作業は我々がやっておきますので」


「上総宮がやるのであれば、朕が加わっても問題あるまい?」


 ダメだ、きっと何言っても再度やってくるに違いない。


「わかりました、次の作業の時にお声を掛けさせていただきます」


 そういうとようやく満足して帰ってくれるようだ。


 このあとに行う砕土に使用する円盤型馬鍬ことディスクハローはチゼル・プラウ同様に、いわゆる高速耕が可能なモノで、かなり苦労して作り上げた逸品だ。当然、長野の松山さんが。


 前世、動画で見たディスクハローの印象が未だに残っていて実現させようと提案したのだが、あれは小さくともだいたい50馬力以上のトラクターで使うシロモノだった。今この農園にあるトラクターは30馬力少々、無理を言って農園にあるトラクターに合わせた機械を試作してもらった訳だが、軽量小型で機能を損なわないようにとディスクやフレームには硬く、薄く、軽いものをという事で、戦車や艦艇に使う装甲板や鋼材が使われることとなった。

 そう、無駄にオーバースペックな上に超高価、機密満載。


 おかげで市販品に出来るのは、どう頑張っても前世同様に50馬力以上の品になるそうだ。そりゃね、装甲板や艦艇鋼材を農耕用に利用したりとか、さすがにそんなことは色んな意味で許されないよね・・・・・・



長々と与太話にお付き合いいただきありがとうございました。次回からまた本編に戻らせていただきたいと思います。

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