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第六十六話  EU誕生?

 昭和二十一(1942)年秋、俺は驚愕した。何やら行われているらしいとは聞いていたが、欧州ではドイツを中心とした経済、資源同盟なるものが締結されたという。


「なんだそれは」


 驚いて聞き返したもの無理はない。なにせ、それは前世、EUの基になった独仏によるソレをなぞるような動きだったからだ。


「はい、ドイツが中欧や東欧諸国に呼び掛けて締約国内での関税の撤廃や軽減、投資の優遇措置、通行の制約緩和などを取り決めたようです。すぐに効果が表れるかどうかは分かりませんが、現在、イタリアへも参加を呼び掛けているとかで実現すれば巨大な経済圏が出現するものと見られています」


 ああ、それは分かる。なんせ、それは前世で実現しているんだから。

 が、それはある種の火種にもなっている。これに軍事的要素が加わった時、独ソは・・・


「それで、フィンランドの方は?」


「これまでのところソ連の動きは確認されていません」


 ソ連にニンジャを潜り込ませるのは難しい、それに、その役割はロシアが担っている。代わりに日本は偵察機をロシアに派遣してかなり奥深くまで偵察を実施している。39式偵察機は新たなエンジンを得てとうとう時速700㎞に届こうかという状態だ。

 そして余剰となった機体を表向きはフィンランドへの供与という形で今現在フィンランドで活動している。

 バレンツ海からカレリア地方、フィンランド湾、果てはモスクワ近郊までその活動範囲は広い。

 この世界では英国がソ連にタービンエンジンやレーダーを供与する事態は起きていない。ソ連はスパイ情報や市販品を基にコツコツと自作するしかなく、未だにレーダーの配備は少なく、タービン戦闘機の就役も確認されていない。おかげで39式は安全にソ連を偵察し放題となっている。


「ドイツの状況だが、今どうなっているんだろうか?」


「軍事面に関しては、着々とその軍備は増強され続けています。ただ、経済が好調なため兵員は最近横ばいで推移している模様です」


 ドイツは現在、量より質の向上に集中しているらしい。


「ドイツは現在15吋砲戦艦を建造中で、すでにタービン技術も獲得している模様です。すでに16吋砲の製造に入っているとの情報もあり、近々16吋砲戦艦の建造が始まると推測されています。あと、チェコでこのような戦車が発表されています」


 そうして見せられたのは。有名な38tではなく、Ⅲ号戦車なシロモノだった。主砲は37mm砲だが、将来的にさらに大口径も考慮されているという。我が国でようやく6听砲が実用化されたところであることを考えると、ドイツ圏の追い上げも凄まじいものがある。豆タンクとかの停滞期が存在するはずだが、あ、そうか、ベルサイユ条約で飛行機や装甲車両の制限がなかったから何の制約もなく開発が出来たという事なんだろうな。


 なるほど、ここも想定外な部分だった。


 よく考えれば、ドイツはシュリーフェンプランによるフランス侵攻をあと一歩のところで自らの輸送力や機動力のせいでとん挫している。そのことを考えると、内燃機関による輸送、機動力確保は容易にたどり着く結論だろう。しかも、俺が不用意に全周砲塔という答えを世界に見せてしまったのだから先見の明があるドイツの士官がインスピレーションを受けない訳が無い。

 しでかしたのは俺か・・・


「あと、フランスについてなのですが、これまでの反独一辺倒ではなく、経済同盟参加派が一定数存在している様です。彼らとしても我が国や米国と繋がりをもって好景気を謳歌する英国への怨嗟、反感が募っているのでしょう。ドイツが労働者党政権となってこれまでの政策に対し、フランスでは労働者を中心にドイツに親近感を覚える層が出始めています。戦争から20年以上が経ち、その間大人しく平和的なドイツの姿に、昔ながらの反英感情がぶり返しているのかもしれません」


 まあ、そんな事だろうとは思ったよ。なんせ、この世界のヒトラーはやることが平和的だ。きっと敗北という記憶を持つ彼には如何に死から逃れるかという命題を抱いているのだろう。21世紀初頭のドイツが軍事から経済に手段を切り替えてEUという第四帝国を築こうとしていたように、ヒトラーは新たな方策を思いついているのかもしれない。

 この状況を見れば英国がポーランドをけしかけて戦争始めてもおかしくはないのだが、ドイツの敵(ソ連)の後ろに味方(極東ロシア公国)が居るという現状ではおいそれとは動けない。下手をしたらソ連とロシアが戦い、漁夫の利でドイツの戦力が英国に向かいかねない。現に独ソは水面下の同盟関係との見方が大勢であり、それもあってポーランドを抑えているというのが現状なのだから・・・


 ホント、これ、どうなるの?


今回も読んでいただきありがとうございます。


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