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第五十九話  雪中の奇跡

  昭和十八(1939)年十月十八日、ソ連軍が突如フィンランドへ侵攻した。


 ここ数年来、レニングラードの安全や軍の自由通行やら無理難題を吹っ掛けていたソ連に対し、フィンランドはそれらをすべて拒否していた。


 交渉にならない平行線をたどっていたそれはとうとう開戦という形で問題解決が図られようとしていた。


 前世においてはあとひと月遅く侵攻が開始されたため雪中行軍となり、フィンランドに有利に働いたとされる。ただ、多くの国がフィンランド支援に消極的ですでにドイツと交戦の危険があった北欧諸国は静観を決め込んでいた。


 この世界ではどうかというと、ドイツがバルト海への進入を一切規制しておらず、戦争の危険が存在しないため北欧諸国や英国による支援が早期に行われていた。

 そんな中で異色を放ったのが日本だった。


 日本は十一月に船団をフィンランドに送り込んだが、その積み荷は武器弾薬だけではなかった。


「日本より貴国支援に参りました『抜刀隊』隊長、近藤であります」


 前線近くの司令部に現れた東洋人の代表はそのようにフィンランド語でもって挨拶を行った。


「大量の物資とともにご苦労。ただ、支援と言われるが、訓練部隊は十分に整っておりますゆえ、その好意だけ受け取っておきます」


 そう答えたフィンランド軍司令官だったが、


「いえ、我々は少ないと言えど、通常の部隊にすれば十分一個師団並みのことは出来るつもりでおります」


 これには司令官も肩をすくめるしかなかった。なにせ、近藤と名乗った男が連れてきた部下は僅かに四百人しかいなかった。たかがこの程度で何ができるというのだろう?

 先の大戦で西部戦線に弾幕を張った日本軍の姿を見ているし、旅順要塞戦や奉天会戦などのすさまじい戦闘を彼は知っていた。しかし・・


「しかし、この人数ではさすがに任せることは出来んよ」


「お気遣いは結構です。ただの死にたがりが来たと思って前線に送り込んでもらえればそれで構いません。日本政府から貴国政府へもその旨の親書が届けられているはずですが?」


 確かに、そのような話を聞かされている。しかし、司令官はその時には少なくとも数千の義勇兵が来たのだとばかり思っていたのだった。


「確かに聞いてはいるが、本当にこの人数で行くのか?相手は何個師団にも上る大軍なのだが?」


「構いません、将軍も日本のハラキリをご存知かと思います。我々はただ腹を切りに来ただけのバカ者ですのでお気遣いご無用です」


 何の臆面もなくそのように宣言する目の前の人物に気圧され、司令官は激戦のカレリアを希望する彼らを、希望通りの場所へと差し向けることにした。


「たしかに、日本からも血の気の多い奴らだからその生死は一切問題にしないと伝えられているが・・・」


 数日後から驚愕するような報告が司令部には届くようになった。


 日本からの義勇兵は僅か四百人のはずである。しかし、それを更に細分化してフィンランド軍の各部隊に分散しているというのだ。

 彼らは確かにフィンランド語を解した。とはいえ、日本とフィンランドでは戦術も何も違うはずである。少人数で容易に部隊になじめるとは思っていなかったのだが、その予想を良い方に裏切り、彼らは偵察や破壊工作を率先して行い、カレリアの各所で活躍していた。


「あれがニンジャというやつか?本当に少数とは思わせない戦果をたたき出している・・・」


 司令官もさすがに雪が降れば自分たちが優ると考えたが、その考えすら裏切られてしまう。フィンランド軍の精鋭と何ら変わらない動きを易々とやってのける。


 ある時、司令部を訪れた近藤を呼び止めて聞いたところによると、冬季には零下数十度の極寒になる樺太や北海道という地域で訓練を積んでいるという。


 十二月に入り、雪に埋もれた中での戦闘になると、フィンランド軍もその実力を発揮しだすが、そこには『抜刀隊』の手ほどきを受けた超人や変人が現れだしていた。


「ソ連軍3個師団がほぼ壊滅ですね。カレリアにおける戦闘はあの日本人たちのおかげでものすごく楽になりました。あれがノギ将軍の教えを受けた部下たちなのでしょうか?」


「いや、ノギ将軍の戦術は後から大量の物資と共に来た教練部隊ではないかな。あれはうわさに聞くニンジャだよ」


 日本から送られたのは抜刀隊という人的支援だけでなく、西部戦線でもその威力を発揮した火力投射物資も大量に届けられていた。

 多くはフィンランドの地勢にも合致する軽量で速射性が高く、待伏せでの火制が可能な迫撃砲や擲弾筒の類だった。


 こうして前世同様、雪解け前にはソ連は攻勢を中止し、豊富な物資を持つフィンランド軍は戦争前の国境線まで押し戻すことに成功した。


 こうして翌年三月には停戦を迎える。ドイツの仲介や英国の圧力もあり、ソ連は戦争前の国境線の堅持を確約することになる。


「邪魔しやがったな!!ちょび髭~!!!」


 クレムリンの執務室でウォッカの入った瓶やナイフがドイツ首相の写真に投げつけられたとか投げつけられなかったとか。

ヒトラー出したことで最初の予定から完全にずれてきた。


多分、話が今後ずれていくことになるのは確実・・・

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