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第五十二話  日米開戦

 昭和十八(1939)年九月十八日、アメリカによる宣戦布告によって日米は戦争へと突入した。

突入したはずだ。

 突入したんだ。


 しかし、大連やフィリピンに居る米軍は動かなかった。大連総督府は宣戦布告を批判、総督府として連邦政府に従わず中立を宣言している。駐留米軍も総督府に従う事を宣言し、日本にもその旨を伝えてきた。遼東軍司令部の話によると、フィリピン駐留軍は通信不調を口実に行動拒否の姿勢を見せているらしい。


 俺は統合参謀部装備計画部長なので、作戦指揮には直接関与していない。が、結局は宮さまとして何だかんだと表に出ることを求められてしまう。今回は俺よりアナスタシアの方が前面に出ているが・・・

 アメリカでもニコライ二世を中心にすでに動いてくれている人々が居る。


 そして、元老会議から衣替えした企画院会合では今回の大統領の行動についての報告が行われることとなった。


「今回、済州島で放火を行ったのは朝鮮赤衛軍だと思われます。『藤』からの報告によれば、大連総督府から朝鮮の仕業であろうという報告を受けた大統領と国務長官はその情報を握りつぶした上で、日本の仕業と煽っている様です」


 ちなみに「藤」とは、伊藤さんがハニトラを逆利用して仕立てたスパイ機関の事である。後継者まで養成していたのかスカウトしたのか。今でも立派に機能している。


「もしかして、ルーズベルト不況の逆転劇を狙っての博打だったりするのか?」


 米国は前世同様、ルーズベルトによるニューディール政策で1936年まで急速に経済回復を遂げてきていた。しかし、公共投資は息切れし、とうとう昨年は成長が鈍化し、失業問題が騒がれだしてしまっている。


「はい、フィンランドやポーランドに対する工作も、ドイツやソ連を戦争に引き込んで不況から目を逸らす事が目的だったのではないかと思われます」


 なんちゅう迷惑な話だ・・・


「しかも、未だ噂の域を出ていませんが、ルーズベルトは三選を目指していると言われています。来年の選挙での事を考えると、不況に何らかの対策を打たなければ自身の立候補など不可能ですし、それが叶わなかったとして、他の候補を立てたところで民主党が大統領の座を守るのは難しいと言われています」


 おいおい、日本はルーズベルト個人、あるいは民主党という政党のために利用されてんのか?


「ちなみに、現大連総督は民主党ですが、反ルーズベルト派だそうです」


 なるほどね。自身の報告した情報を握りつぶしたからブチ切れたと。なんせ、総督と話した総理による と、総督はルーズベルトの事をクソ野郎だ売国奴だと散々こき下ろしたそうだ。相当腹に据えかねているらしい。

 とはいっても、米国では格差問題が深刻だ。

 極東貿易を担う企業は日露との交易や満州で上がる収益で非常に景気が良い。フィリピンにしてもプランテーションの農産物をロシアに輸出しているから極東に大きなウェイトを置いている。


 それに対して、アメリカ本国はというと、公共事業が一息ついたことで雇用が減り、金融引き締めも重なって不況感が増しているらしい。しかも、少ないといえど、西海岸に移民した日本人や中国人など黄色人種に職を奪われているという差別意識が根強くある。前世とは違い、中国とアメリカは内蒙古の帰属をめぐって対立しているので反日ロビー活動は低調で、反中と殺朝感情が強い、だが、同じ東アジア系の日本人を見分けるのは難しく、西海岸では半ば同一視されていたりもする。そこを大統領は付け込んできたようだ。


「これ、ソ連が絡んだ日米離間だと危ないよな」


 そういう俺に参加者全員が頷く。


 アメリカでも反戦や停戦の動きをしてくれてはいるが、不況打破という目先の利益に目がくらんだ人々や極東貿易で利益を上げる企業への妬みなどが先行して効果のほどは今一つといったところらしい。ただ、聞き捨てならない情報として、交渉していた二週間のうちにサンディエゴでは準備を終えた艦艇が続々とハワイへ発し、それらの艦艇は場合によってはハワイを素通りして日本へ向かっているともいわれており、哨戒線構築に大わらわになっている。

 早ければ来週にもサイパンやグアム近隣に現れるかもしれない。


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