第四話 よくある展開 2
俺は日露戦争から太平洋戦争までのダイジェストを話した。
「う~ん」
明治天皇は初めは関心したように、後半になるにつれ困った顔になりながら聞いていた。
「言っては悪いが、よくある盛衰物語だな」
少し間を空けてその様な感想を漏らした。
「私にもそう見えます。ただ、こちらの世界と記憶の世界では技術の発展状況が若干違います。これは、15年後に起きるかもしれない第一次大戦に多大な影響があるでしょうし、このままの技術発展ならば、42年後に海軍が真珠湾を奇襲することやその後に米軍がサイパンから日本を爆撃することは無理かも知れません。そうなると、私の記憶とは全く異なった戦いが行われるか、或いは戦争の時期がずれるかも知れません」
ここで天皇に言いたくないが、日露戦争の発生や経過自体が変わることも十分あり得る。
「なるほど。して、亨仁のいう『天ぷら』とやらでは、今後どうすれば良いのか?」
ツッコミたい、非常にツッコミたいが、ここは我慢する。そして、ここのところ考えていたプランを説明する。
「はい、まず、理想を言えばロシアとの衝突を避けるという事になりますが、可能だとは思えません。現状を座視すれば、技術の進歩でより強力になった時期に戦いが起きてしまうだけです」
天皇を見るが、先を促すだけだった。
「ならば、ロシアとは戦うしかありません。日露戦争では陸海の連携のマズさが出てくるでしょうから、今から手立てを講じるならばら陸海の上位に常設の参謀部と指揮官を置く体制にすることですね。ただ、6年で混乱なく動ける組織に整えるのはいささか不安があります。戦後に手をつけるのが最善です。それ以外についても同様です」
天皇はしばし考え込んでいた。
「亨仁の意見に否やはないな、軍が政府の指揮を離れてはどうにもならんし、陸海でいがみ合っては外敵を倒すことが出来ん。あと10余年のうちに朕が手を打つ事柄だろうな」
明治天皇は俺の話を信じてくれたらしい。
さて、俺の今後についてだが、兄(大正天皇)の補佐を務める為にまずは陸海いずれかの兵学校へ行くことになった。この世界に居ない伏見宮の代りという意味合いもあるだろう。
俺は当然のように海軍を選んだ。