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第四十話   制式名称について

 大正から昭和に代わって一つ大きな問題が発生した。


 大正はわずか十年程度しかない、そうなるとこれまでの制式名称では不具合が生じることになる。


 例えば、「大正」三年式速射砲と「昭和」三年式速射砲というように重複した兵器が現れることになる。


「昭和に改元するにあたって制式名称には元号以外を使用しないと重複や混乱が起こることになりかねません」


 ボケっとそんな話を聞いていたのだが、よくよく考えてみれば、前世でも昭和に入って開発された兵器には「昭和」三年式のような名称ではなく、八九式とかいうかたちで皇紀が使われていた。


「元号を使わないとしたらどうするのだ?アメリカのように開発順序ごとに番号を振るのか?」


 そんな意見が出て。

 アメリカの兵器は考えてみれば確かにそんな感じだ。M4戦車とかMk22両用砲とか、F6Fとか。


「いや、番号を振るにしても開発順、あるいは計画順として、今ある計画番号や開発番号を使うとなると急に大台から始まる事になる。小銃や機関銃などはいきなり五十や八十となるが、制式採用されるのは十や二十離れた計画である場合もある。そうなると、五十の次がいきなり八十とかになるが?」


 採用年を現すならともかく、開発順、計画順なのにいきなり数字が飛びまくるのも確かにおかしくはある。


「ならば、皇紀を使えばどうだろう。元号と被ることもないし、我が国独自のものと一目でわかるではないか」


 この意見には多くの賛同が集まった。そもそも前世ではこれが採用されているのだから賛同が集まるのも当然だろう。

 皇紀とは、神武天皇が即位した年だっけ?から数えるんだそうだ。もう2580年を過ぎてるって?


 まあ、前世記憶持ちの俺にすればだからどうしたの世界ではある。西暦より前から続いている。まあ、それは凄い事かもしれんが、中世の王朝じゃあるまいに歴史の長さだけを威張っても何も得にならない。そりゃ、皇室の待遇はよくなるだろうが、日本の価値が変わるわけではない。

 そんなのローマ法王庁みたいなもんだ。例えば、前世でよく言われていた中国に侵略される云々。もしかしたら皇室は残るかもしれんよな、京都天皇庁とか言ってさ。なんせ、世界最古だからその権威は使えるんだから、中国も無下にはしないかもしれない。ただ、それと「日本人」は別の話だ。

 天皇残って国滅ぶって、笑い話ではないが前世の太平洋戦争なんてその一歩手前だったわけだから、間違ってもいない気がするんだよな。

 当然、俺としては変な思想が台頭する因子は徹底的に摘み取りたい。


「私としては皇紀の使用には反対です」


 皆が何言ってんだ?ってな顔で俺を見る。


「殿下、天長歴を使用するというのに何が不満ですか?」


 一人がそう問いかけてくる。


「不満とか満足とかの話じゃありません。現在のわが国は国産、英国製の兵器の二本立てで成り立っています。そして、今後はロシアとも協力していくわけですよ?英国もロシアも兵器には西暦を当てています。5.5吋砲は英国でも採用されています。日本では三年式ですが英国では?今後、英国なりロシアなりとの共同開発や輸出を考えた場合、我が国も西暦を用いた方がよいと思いますが?」


 会議室では隣同士で話し合う声がそこかしこで漏れ出す。


「我が国のみが採用するのなら良いですが、英国やロシアとともに開発や運用するのであれば、名称もある程度統一しておくのが良いですよ?」


「しかし・・『我が国はロシアという緩衝地帯を放棄しますか?』、いや、それは・・・」


 国体がドーノ、皇国がドーノ。すでにそんなことを言う連中がこの会議室にも居るようだ・・・


「国体や国威で兵器の威力が決まるのであれば、土佐を英国で改修するような恥ずかしい事態にはなってません。日本には新しい発想に対処できる技術力がまだ備わっていなかった。今も英国へ新型戦艦を発注しているのも同じことです。ようやく英国の背中に手が届こうかという今の時期に慢心してはまた引き離されますよ?」


 俺以外が言えば問題発言とされたかもしれんが、ここで異論を言う人間はいない。


 そうして西暦の採用が決まり、南部さんが開発した拳銃と銃把握内に弾倉を収めた新型短機関銃が新方式の第一号として24式拳銃、24式短機関銃として採用されることになった。

 ただ、この拳銃、前世の南部十四年式とは全く別物で、ロシアの技術協力もあり、出来た銃はより俺の知る自動拳銃に近い。あれだ、米国のガバメントだとか、ヤクザの代名詞トカレフとか、そんな感じ。ただし、日本人に合わせて口径は南部弾より多少大型化して9mm、前世の9mm軍用弾のそれを採用してる。当然、短機関銃もそうなのだが、形が某国の超有名サブマシンガンに似ているのだが、きっと錯覚だろう。


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