第三話 よくある展開
父に呼び出された。それは誰あろう明治天皇である。
これはある意味お約束の展開だね。さて、どうしようか?
ただ、まだ何年も先の事件や戦争の話をしても子供の戯言で終わることは間違いない。
そもそも、これまでに分かった所によると技術的な部分が前世より遅れている。機関銃はあったから全てではないかも知れないが。
こうなると、きっと前世の歴史を忠実になぞることはない。様々な違いが出てくるから、俺の知る歴史は価値が低いかもしれない。その事も考慮が必要だろうな。
色々考えたが、一応、前世の歴史については語る必要がありそうだ。さて、行ってみようか。
流石に相手は10歳の我が子とあって、公的な接見などではなく、ただの親子の話になった。
「亨仁、色々なところで迷惑をかけているようだな」
諭すようにそう言われた。
確かに、ピクリン酸の件以外でもあれやこれややっている。歩兵のライフル確認したくて衛兵に迷惑かけてしまっている。資料見たさに子供の好奇心が先走ったりもした。
「父上、信じられない話ですが、私には今ではない時代の記憶があります」
明治天皇は呆れた顔をしている。
「そうか、だがな、お前も自分の立場を弁えて行動する歳だと自覚してもらわなければ困る。市井の学童とは違うのだぞ」
確かに、おっしゃる通りです。しかし・・・
「俄に信じて貰えるとは思っておりません。もう少し時間をください。前世の記憶がたしかなら、あと数日内に近畿で地震が起きるはずです。それを見届けてから再度、機会を設けていただけませんか?」
天皇は心底困っているようだ。きっと我が子がどうかしてしまったと。
しばらくの沈黙の後
「・・・地震か。しかし、多少の揺れなら偶然ということもあろう」
「多少の揺れではなく、死者が出るような揺れです。何十年も先の世では規模の大きな地震しかすぐに調べることは出来ません」
即座に俺がそう反論したので、渋々という顔になっている。
「そこまでいうなら待ってみよう」
一応、これまでに調べた所、歴史は概ね同じだが、ペリー来航が2年遅れたり、日清戦争の内容が少し違ったりというのがある。事件や事故は技術の影響があるのだから差異が出て当然。唯一、違わないのは地震だった。明治三陸地震とか、記憶の通りに起きている。
今年は都合よく、俺が前世で一時期暮らした地域で地震があったから調べていた。大和地震とかいうこの地域の地震も時折起きていたのだ。知っている地震があって良かった。いや、被害でるから良くはないけど・・・
それから一週間経って地震が起きた。勿論、父に呼ばれた。
「確かに、亨仁のいう通り、地震が起きた」
明治天皇も先日とは違い真剣だ。
「はい、起きてしまいました。大きな地震としては、6年後に広島や呉が被害に遭う瀬戸内の地震があったはずです」
淡々と語る姿がから虚言でないと理解したのだろう、明治天皇も聞き入れてくれた。
「さて、父上。以前お話ししたとおりです。私には前世の記憶があります」