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第三十六話  内燃機関の発達と誤算

 大正七(1918)年に飛行機が飛んだ、同じ年にはヤンマーエンジン(ディーゼル)も実用的なものが量産されだしている。

 そして、昭和に入るとその進歩は俺の予想をはるかに超えるものとなっていくことになる。


 ヤンマーエンジンのライセンスを買ったロシアのとある会社はそれをもとに舶用エンジンを開発、昭和三(1924)年には試作エンジンを船に載せている。

 こうなると進歩は加速する。昭和九(1930)年にはロシアにおいて潜水艦にヤンマーエンジンが搭載され、艦内で発電を行う試験まで行われた。

 前世では潜水艦にディーゼルエンジンが搭載されて十年もしないうちに第一次世界大戦で大暴れしている。つまりは・・・


 飛行機の方は戦争が終わっていたこともあり貴族や富裕層の趣味としての部分が先立っていた。気球や飛行船と同等に見なされていたのである。

 発動機も初飛行から五年、昭和二(1923)年頃には専用のものが設計、製造が始まり曲技飛行が行われ始めている。

 当然、曲技飛行が行われるということは、それ相応の性能を持っているわけで、水上機や飛行艇が生まれてきていた。

 そう、飛行機のカンブリア紀が十年遅れでやってきていた。なにせ、アルミ材の進歩は前世とほぼ変わりないのだから飛行機への採用も当然、この頃から取り組みが始まっている。



 そう、できれば見たくなかった。前世のことを考えると、今のところ米国を取り込めているとはいえどうなるかわからない、少なくとも、ソ連とどこかで事を構える以上、飛行機の発展は悪夢を見ることになりそうだ。

 潜水艦へのヤンマーエンジンの搭載。これについてはソナーの開発によって対策を急いでいた。そもそもモーターで進む潜水艦は静かだから聴音ではなかなか見つからない、音波を発振して対象物を探知するアクティブソナーが重視されていた。

 前世との違いである警備隊の存在が頼もしかった。警備艦があるので船団護衛については悩む必要がない。ただ、潜水艦が大洋を走り回るという発想がこちらではまだ希薄で、潜水艦による通商破壊戦という考えがまだ出てきていないため、対潜護衛という考えが広まっていない。こればっかりは性能がしっかりした潜水艦が登場して実際に演習でもしてみないことにはどうしようもないだろう。


 飛行機が出来た、潜水艦が史実に近づいた。当然、陸上でも・・・


戦争が終わって陸軍が縮小された。ただ、戦争で活躍した運搬車はどんどん性能が上がっている。


 昭和五(1926)年になるとガソリンエンジン型のトラックが普通に走るようになっている。


 日本においては農機といえば車輪型のトラクターなので戦車という発想はないが、装甲車は既にある。建機には履帯式が開発されているので英国で生まれた初期の戦車のようなものが生み出されるまで時間はかからないだろう。昭和十(1931)年にはそれっぽいものがあると予測が付くくらいにはこの分野の発展も著しい。


 さて、これからが一番の問題だ。覚えているだろうか?


 大正五(1916)年にガスタービンの開発を推進したのを・・・

 あれから十年、昭和五(1926)年、想定よりも早く完成しやがった。確かに基本的な仕組みや耐熱合金の必要性、テーパー構造や差し込み構造による負担軽減などテンプレ知識を教えたとはいえ、たかが素人の話と拙い図面からわずか十年で作り出すとは、正直大誤算だった。最低あと五年、遅くてよかった。

 今あるものは前世でいえばガスタービン発電所のガスタービンや初期の船舶用ガスタービンと同じく蒸気タービンをベースにしたもので、躯体は分厚く構造も重い代物だが、当然、発想を変えて作れば簡単に航空機用エンジンも出来てしまうだろう。そう、早ければ昭和十(1931)年頃、遅くとも昭和十五(1936)年頃には・・・

 ガスタービンの開発が十年以上早まったことでジェット機の出現も早まるかもしれない。


 俺が前世知識に目覚めたころには内燃機関すらなかったんだぜ?それが気が付いたら前世の歴史すら早めようとしている、いったいどうすればいいんだよ・・・



 そうそう、八木アンテナとかマグネトロンとかも前世と変わりなく登場してきたのでさっさと囲うことにした。

 これ、テンプレなことやらなきゃいけないってことなのか?



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