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第三十一話  ベルサイユ条約

 大正八(1919)年、前年十一月に終わった大戦の後始末が行われていた。パリ講和会議である。


 ただ、内容は前世とはかなり異なる。欧州戦場での状況は前世よりもドイツが善戦している事が大きい。

 ドイツは東部戦線でこそ打撃を受けているが、西部戦線は戦車や航空機の参戦が無かったことでかなり拮抗していた。しかも、米国が極東ロシア公国建設を優先して参戦が遅れたことも大きい。


 日米の参戦で物量の米国、機動力の日本が半年程度戦線を引っ掻き回したが、それはベルギーにおける進展に僅かばかり寄与した程度だった。

 その結果、講和会議におけるドイツは強硬で、どちらかというとフランスがより疲弊し、妥結を急いでいる様にすら見えた。


 何せ、ドイツ交渉団は講和不成立なら再戦も辞さずとフランスを脅したのである。


 対するフランスも強硬な姿勢を見せてはいたが、それは殆ど面子の為であり、結果を見ればその内情がわかる。


 七月まで続けられた会議の結果、前世の一千万マルクという莫大な賠償金は半減され、日米は受け取ってさえいない。


 フランスは賠償金を受け取るが、要求した領土は割譲されることはなかった。


 ドイツは前世に近い軍備制限を設けられたが、戦車や航空機の参戦が無かった事でこの分野は制限されていない。海軍にしても、潜水艦の制限が無いのだが、俺としても未だ登場していない兵器の脅威を唱えて列強に知恵を付ける気もなく、あえて無視した。


 さて、日本についてだが、南洋の島々を前世同様に提示された。


 資源のある島々はともかく、その大半は伊藤さんによる根回しもあり日米共同管理として摩擦を避ける事になった。オーストラリア等が主張した地域についても英国が納得していない。なんせ、日本海軍が居なければ英国本国艦隊に余裕がなかった訳だから、英国の日本への配慮は露骨なものだったが、この地域は英国に管理を任せることで妥協した。


 そのかわり、日本はドイツの技術を最優先で取得出来る条件を条約に盛り込むことに成功する。


 他でもない、ヤンマーエンジンの安定生産にはドイツの技術がどうしても必要だから。もちろん、それが潜水艦の発達に寄与して将来惨事を招く危険もあるが、対潜兵器開発を行うことで対処することにした。

 日本には壱岐型から派生した護衛艦艇がある。対処は可能と判断した。


 そして、ドイツが賠償金を減額され、ヤンマーエンジンの一大欧州拠点になる事で、仮想戦記小説のテンプレとも言える、ナチスの芽を摘む事が出来ただろうと安心した。


 さて、これで国内、そう、関東大震災対策に乗り出せるだろう。



 あ、極東ロシア公国だが、日米のごり押しと英国の協力もあり、正式に承認された。その国土はバイカル湖より東の旧ロシア帝国領土を引き継ぐものとされた。勃海沿岸部は極東ロシア公国からの譲渡として米国が領有した。

 この辺りについて、中国代表から意見があったが完全に無視される。朝鮮から使節が乗り込んだが、これは米国が強制退去させる一幕があった。彼らは決してコロンビア号事件を忘れていない。

 更に、極東ロシア公国建国にあたって朝鮮では赤衛軍を自称する組織が立ち上がるが、瞬く間に米国が乗り込み文字通りの蹂躙が行われた。そう、まるでインディアンに行われたように・・・


 日本では米国の行為に反発や抗議も行われたが、盛り上がる事は無かった。


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