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第十話  戦後の改革

 明治三十八(1905)年十二月二十四日、約90年先の未来でクリスマス事件と言われるテレビ番組でのテロップ誤挿入事件が起きたり、学生、生徒を悩ます難問となるポーツマス条約が調印され、日露戦争は正式に終結することになった。日付がクリスマスだからと皆がクリスマス条約と覚えてしまうらしいんだが、いや、まさかね・・・


 既に国内では政府や軍に対する不満が鬱積しており、一部では暴動まで起こる始末だったが、それらの混乱も軍の帰還、復員が進むにつれて鎮静化していくことになる。

 華々しい緒戦の熱気に浮かれていた人々も前線での厳しい現実と弾薬欠乏を知っては鎮まらざるをえなかった。しかも、天皇陛下から軍人全てに対する慰労まで発せられては騒ぐわけにもいかなかったというめんもある。


「これは流石に予想外でしたな」


 威厳のある髭の元老が憮然としてそう呟いた。


「懸念が現実になりました。しかし、頂いた資料には気になる人物も居なくなった人物も見当たりませんね。正直、皇帝一家や司令官の名前くらいしか私には分かりませんが、日本海海戦が前世に近いものだった事からすると、陸軍のそれほど地位の高くない地位に居る人物かもしれません」


「それでは今後、日本はより厳しい事態に成りはしませんか?」


 そんな声に皆が俺を見る。


「それは大丈夫でしょう。あるとすれば、ロシアで革命が早まるか遅れる事で、アメリカが遼東半島を手にした以上、ロシアの注意はそちらに向きますよ」


 これは小説知識であったが、まるで記憶だという風に見せているぶんにはバレることはないハズだ。


「さて、陛下とも検討を重ねた結果、陸海軍の上に統合参謀部を設けるという意見で一致しました。今の将官教育を改め、陸海統合の大学校として、陸海全体を見渡せる教育を前提にしたいと思います」


 メンバーは唸る。しかし、今しか機会が無いのは誰もが理解している事だったので、反対なく通ることになる。

 問題はどう実施するかで、混乱はあるだろうが、兵学校を統合してしまうよりはマシと言われて妥協した。


「後ですね、ご存じの通り、お歴々の重石が取れる世代は暴走します。原因は憲法にあります」


 これには、既に伝えてあるとはいえ、やはり顔色を変える人が居る。もちろん、戦後の9条の話もしている。


「陛下のお許しが下り次第、軍の規定、大臣の規定を改訂することに為ります。方向性は以前の通りです」


 軍の統合を進めると憲法にも支障が出る。今は陸海軍を天皇が統帥するとされているが、統合されれば軍、或は国防軍等と名称を変えなければ、戦後の9条問題よろしく陸海軍が騒がないとも限らない。

 そして、天皇統帥はそのままだが、指揮権を総理大臣に預ける。その為には、総理大臣の優越を大臣規定で定める必要がある。改革は始まったばかりで色々大変だろうが、俺は兵学校入りだから、皆がんばれ。


「ところで殿下、特許の件は?」


「あ、そうそう、いつだったかの内燃機関、こちらの世界には未だに影も形も無いようだったから機関学校や民間に研究(丸投げ)してもらって、列強各国に特許申請していたものが、この程、独露を除く各国で認められました。今後、国をあげて各国と研究開発を行うので、膨大な特許料が見込めます。国債償還までは無理でしょうが、産業振興には十分廻せるでしょう」


「その、内燃機関とやらはそんなに儲かるのかね?」


 怪訝な顔の元老が居る。


「旅順へのトロッコ線に動力車を走らせることが出来たらどうですか?やろうと思えば輜重車や気球にすら付きますよ?」


 一瞬考えたあと、驚愕している。


「そういう事です。馬車や荷車を駆逐するでしょうね」


 記憶による歴史チートが早くも崩れ去った中で唯一残った技術チート。これでどうにか日本の崩壊を救うことが出来そうだ。

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