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僕たちは異世界と未完成の上で踊る。  作者: 紺野 定
第二章 血族Xの空似
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第二章 23『マリオネット』


騒がしく最後をかざるように暴れまわっていた三発の空薬莢からやっきょうはやがてその動きを止め、辺りに一時の静寂せいじゃくが訪れた。

天井に開けられた大きな風穴から覗く神々《こうごう》しさを放つ月光が、割れた照明に代わって室内に明かりを届けている。眩しくも暗くもない僅かにぼやけた自然の白光はっこうは少しずつだが俺たちに冷静さを取り戻してくれた。



「やっぱりユズナなんだな?コノハの姿にけてどういうつもりだ」

「どういうつもりかって、タブレットの中身を確認したのだったら大体は予想がつくんじゃないかしら、ヒイラギさん?」

「……やっぱりあの地図の配色はいしょくは意味があったんだな?」

「ええ、その通り。私の口から詳しい内容を漏洩ろうえいさせる訳にはいかないからこれ以上はご期待に応えられないけどね」



そう言ってユズナは、コノハのコアを両手でバランスを取りながらうごめかせる。

そんな自由気ままにコノハの力を使用する様子にオウセンは苛立ちを隠せないようで、たくましい腕に握られた見覚えのあるチャクラムの表面に銀光ぎんこうつややかに反射させながら震えていた。



「おい、それより本物のコノハはどこにいる」

「あら、私が本物のコノハちゃんよ?」

「ふざけるなクソ野郎が……!」

「別にふざけてるつもりはないのだけれど……」



ユズナが返した天然のあおりに限界を迎えた様子のオウセンは、ずかずかと荒々しい足音を刻みながら無防備むぼうびに彼女のもとへ近づき、思い切り拳を振り上げた。

が、そこまで来た彼の憤懣ふんまん理性りせい愛情あいじょうによって制御が掛けられる。目の前にいる人物がコノハでは無いと理解していても、自分の子供の姿をしたものに手をあげることなど実行どころか想像も出来ないのだろう。


そんなオウセンの動きを予測出来ていたかのように、一切の抵抗を見せることなくユズナはそっと彼の顔を見上げると優しく微笑みながら彼を賞賛した。



「うふ、やっぱり優しいわねあなた。なんか今の家族愛を見て感心しちゃったから、ちょっとだけ今の状況を説明してあげるわ」



するとユズナの背後からコノハのコアとはまた違った淡い光がゆらゆらと浮かび上がる。

そしてそれは彼女を包み込むようにして巻き上げられた直後、勢い良く俺の方向へ飛び込んできた。



「――え?」

春吹雪はるふぶき!!!」



アカネの叫びと同時に放たれたそれはユズナのもとから来る物体と交差しながら俺の前に大きな氷壁ひょうへきを作り上げる。数多あまた氷針ひょうしんは、壮観そうかんな雪の結晶をまといながら一瞬のうちに辺りに冷気を撒き散らした。

体温の低下を肌にひしひしと感じながらも、アカネが何を狙って大技を繰り出したのか確認するべく視界を塞ぐ氷壁に目を向ける。そこには透き通った氷の他に、パチパチと音を弾ませながら床をう小さな球体が無数に確認できた。それは間違いなく以前研究所で彼女と交戦した際に目にしたあれの姿だった。



「これ、もしかして……菌属性のコアか」

「あーー、本当に面倒くさいわねえその技!でもまあいいわ……あわよくばと思ってたけど説明だけでもしてあげる」


突如遺憾(いかん)の声をあげたユズナは、再び短剣を構えたアカネとにらみ合いながら言葉を紡ぐ。


「研究所内でもあなたたちに披露したこの菌属性の子たちは殺傷能力の他にもう一つ力を持ち合わせているのよ」

「もう一つの能力だと?」

「ええ、そう。詳しく言うとこの菌属性は本来そっちの能力を利用するために作り上げたの」



そしていきなり彼女は御機嫌ごきげんにステップを踏みながら、懲りずに新しい菌類を辺りに蔓延はびこらせ笑いながらその続きを口にした。


「人を操る能力をねっ!」


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