5話 訓練、始めました
今回は少しシーンが点々とします。
行動指針を定めてから早いこと1週間経つ。
行動指針を定めて3日くらいで2匹の猫達に変わって、2人の従者たちがお世話するようになった。
銀の長髪、海を連想させるような吸い込まれるような青の瞳の胸の発育のよろしい方の従者は感情の起伏が顕著でよく笑い、よく泣く(怒ってる所は見たことないけど……)。
くるくる回る表情が実に面白い…見てて飽きないナニコレ可愛い。
そして黒髪の若干背の低く闇夜を思わせる漆黒の瞳の少女は超がつくほどのクールビューティ…自己主張の乏しい身体だがとても引き締まったいい身体をしている。(まぁ私が設定したんだが…これはこれで…)
そして私は今その2人の間に居ます。白磁器のように白く、絹のようにきめ細かい2人の肌の間に挟まれています。とても眼のやり場に困ります。元男なので…。
何でこの2人は裸になって一緒の布団に入っているのでしょうか。
お世話されるようになってから毎晩こうである。
とりあえず私は2人を起こさないように布団を抜け出し、日課を始める。
まず腕立て伏せ100、腹筋100、まだうまく立てないので、壁に手をついてスクワットを5セット行う。次に《限界突破》を用いて先程のセットを2セットおこなってベッドをよじ登ってまた2人の間に戻ればいいだ…け。え?おかしい?だろうね。私もびっくりしてる。一体どういう仕組なのかガブリエルさんに聞いてみたいところだ。
ベッドによじ登りきったところで視線が交錯する。
目が点になった1対の青い瞳と1対の黒い瞳の少女たちと…。
とりあえず私は「やぁ」と声をかけて(相変わらず赤ちゃん語なんだが)何事もなかったかのように2人の間に入って布団の中に潜り込むのだった。
◇◆◇その日の昼◇◆◇
お昼のミルクを堪能した赤ん坊は銀髪の少女に頭を撫でられながら膝に座っていた。
「ねぇご主人様?」
「あい?(呼んだ?)」
少女が呼ぶと赤ん坊は上を向いて少女を見る。
『この時点で違和感わかない私は多分異常なんだろうなぁ…』
本来生後1週間の赤ん坊は首が座っていないがゆえに上を向くことすらできないはずである…。
「ご主人様は何者なんでしょうねぇ〜?」
「ふぁ〜う゛(何言ってるのかわからない…早くもっとこの世界の語彙力を…)」
上を向いた赤ん坊の頬をフニフニしながら優しそうに微笑む。
「そうだ!ご主人様、歩行訓練しましょ?」
ひらめいたと言わんばかりに目をキラキラさせ、赤ん坊を抱き上げ高い高いさせる。
◇◆◇同時刻◇◆◇
「赤ちゃんの成長って凄いですね…」
1階の酒場でホットミルクをちびちび飲みながら、黒髪の少女が感嘆のため息混じりに呟いた一言にハーベナーは気になった。
「今日この昼までの間で既に5回言ってるよ?何かあったのかい?」
心配そうに覗き込むハーベナーに少女は単刀直入に尋ねる。
「朝起きたら生後1週間の赤ちゃんが筋トレしてたらどう思う?」
「…疲れてるんだね…奥で休んでくるといいよ…」
ハーベナーはかわいそうなものを見るような表情で少女の肩をポンポンと叩く。
「姉も同じものを見ていたから夢ではない…と思いたい…」
黒髪の少女は三角の黒い耳をぺたんとたれさせシュンとした顔でつぶやいた言葉は酒場の喧騒に掻き消された。
◇◆◇数分後◇◆◇
私は今目の前の従者に手を引かれながら2足歩行の練習をしている…。
今朝見られた段階で2人の反応は2つに分かれた…。
1つは信じられないものを見たとでも言うようにフラフラと部屋を出ていった…まぁ…そうなるな…私だって生後間もない赤ん坊が朝イチで筋トレしてたらひくわ…。
もう1つはそれを受け入れる…。
もちろん前者は黒髪の従者…後者は今こうして手を引いてくれる銀髪の従者…。
そして今思った…『黒髪の従者』と『銀髪の従者』って呼びにくい…。
名前をつけよう!もしついていたら話せるようになったらそっちにすればいい…。
そうだなぁ…まずこっちからにして見るか…。
あ、歩きながらだと考えるのしんどいからちょっと座る。
「―――、―――?」
ピコピコと耳を動かしながら私に話かけてきた。あ、銀髪のアホ毛発見。なんかすごく掴みたくなる。
ダメだ、我慢我慢…。それとさっきなんて言ったのか聞き取れない。まぁ、わからないから返事だけ…。おわっ返事をしたら抱っこされた。なるほど休憩の意図を汲み取ってくれたからだっこを提案してくれてたのか…てそうじゃなくって…名前名前…。
この娘、よく黒髪の娘によく怒られてるな…。そしてその度にいじけたり、泣いたりしてる。
よく泣き、よく笑い、まるで台風みたい…
銀の髪の毛がまるで新雪みたい…
あぁ…昔飼っていたゆきもよく寂しがったり、怒ったり、喜んだりしてたな…
「ゆき」…じゃ安直すぎるな…
あぁ…これならどうだろうか…これなら呼べるだろうか?試してみるか…
「ぅ…ぇ」
次回ようやく彼女たちに名前が!!
ここに至るまでがなんか長く感じたのは気の所為…なの…かな?