6話 疾風怒濤
トキの従者ユネとセラ達はいくつもの雪のトンネルでできた分岐を手当たり次第探し、すでに1か月が過ぎていた。しかし収穫がなかった訳じゃない。
『姉さん、雪竜の幼性を見つけて腹をかっさばいたけど主様の姿は無かったわ。』
ユネの頭に語りかけるように聞きなれた声が響く。
銀髪の魔術師は手に持った透き通った石を額に当て念じる
『装備品は消化されないと思うけどそこの所は?』
『溶けかけの金属もないからこっちはハズレ…姉さんの方は?』
銀髪の魔術師は辺りを見回してから先程同様念じて返す。
『こっちはアタリっぽい…雪竜の幼性が掘った穴が迷宮に繋がってたみたい』
『どこの迷宮?』
『見当もつかないわ…未踏破の迷宮かもしれない…』
『今いく』
直後魔術師の真横に縦一文字の亀裂が入ったかと思うと亀裂は広がり、1人の黒髪の女剣士が出てきた。
しかし亀裂から踏み出した足は小さな穴につまづき顔から 転んだ。
「しまらない登場の仕方ね…」
ユネはやれやれというジェスチャーをしながら黒髪の剣士に手を貸す。
「何ですか?この大量の穴は…」
鼻の頭についた土を袖で拭いながら魔術師ユネに尋ねる。
2人は手に持った石をウェストポーチに入れ、セラは短剣をユネに返す。
先程の石は念話石と言い、割った石を額に当てて念じると割った片割れを持った相手に念話ができる代物。しばらくすると効力を失うが割るとその割った物同士で念話ができる。
セラの持っていた短剣はユネが即興で作ったもので術者の近くに簡易的なゲートを作る物である。なお使い捨てなのは言うまでもない。ちなみに金額にすると小さい領地経営をする領主の10年分の税金に値する。その為トキは『ただでさえおんぶ抱っこ状態だから』と言って使いたがらなかったのだ。
「さぁ?…でも最近できた穴なのは確かね」
「主様に関係してると?」
「ご主人様が掘った…にしては大きくて深い。ご主人様が持ち出したのは手のひらサイズのスコップなのだし…」
「…何かが生えていた?薬草かなにかかしら?」
「薬草ならこんなに広くある必要はないわね…もしかしたら植物型の魔獣の可能性が高いわね」
「ならもはや時間との勝負…姉さん、あれやるよ」
剣士セラの言葉にユネは頷くと2人は通路に出る。
セラは目を瞑り、集中する。そこへユネは手を大きく広げたかと思うと勢いよく手を叩く。
叩いた音が尾を引き、静寂が再び戻ってきて数秒後、セラは目を開けていった。
「この階にはいない…階段は1つだけ。道順は覚えた。」
「じゃあ急ぎましょ」
2人は揃って駆け出す。トキが1週間かけて探しだした階は1時間物足らずで攻略し終えた。
それからというもの新しい階に行っては1層目同様ユネが手を叩き、その反響音でセラがマッピングするという手順で瞬く間に迷宮を攻略していく。
そして到着した第5階層…。
「こんなに先に行ってるとは思えない…」
セラは驚きながら言うとユネが言った。
「それは激しく同意だけど、何かが御主人様に手を貸していると考えるとまぁ納得よね…」
2人は道中、鱗や爪を剥ぎ取られた残骸や、夜営の跡を見た。第4層では水場が無いのに水を使った痕跡も残っており、剥ぎ取られた残骸は魔術的痕跡も、内部から爆ぜたような不思議な死に方をした物もあった。2人はトキの狩猟光景を見ているため内部から爆ぜた痕が「銃」によるものだと見て分かった。
しかし最初の部屋を除いてここまで全て石畳だった為、トキにどのような人物が手を貸してるのか皆目見当がつかなかったのである。
試しに匂いで解析しようとセラが瞬間的に《限界突破》を用いて短時間だけペナルティを被って調べたが、『ユネとトキの匂いしかしない』というおかしな結果が出てくる始末だった。
2人は目の前の扉をゆっくり押し開く。
「守護者の部屋っぽいわね」
「…首おとして終わり。」
ユネの言葉にセラはブロードソードを抜き放つ。
2人はいくらか進むと目の前に大きく赤いリザードマンが立ちはだかっていた。その傍らには青い鱗に覆われた首の無い守護者の亡骸が有った。
赤い鱗の守護者は2人を見つけると雄叫びをあげながら駆けつける。
セラは軽く剣を縦に振って納める。
「ぎゃんぎゃん五月蝿い…犬じゃあるまいし…この蜥蜴やろう」
セラはそう言って何食わぬ顔で赤いリザードマンの股下を歩いて通過する。ユネもまたその後に続いていく。
2人はそのまま通路奥の扉から出ていく。
パタンと言う扉が閉まる音ともに真っ赤な鱗のリザードマンは膝を着き、地面に倒れた。倒れた際、まるで豚の梨割りでもされたかのように、綺麗に縦半分に分かれた。
やはり2人はチートであるということで…。
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