家族と会う前に
さて、自分のことが何もわからないという迷子(重度)の女の子をリビングで休ませて既に数時間が経ち、時刻はそろそろお昼時だ。
俺は二階の自室から出て、自分のと迷子ちゃんの昼食を作ろうと一階のリビングへ向かった。
とりあえずあんまり胃に重いものを急に食べさせるのは良くなさそうだからソーメン茹でるか。
リビングの前に来た俺はふと思った。
これっていきなり開けたら着替えとかしててラッキースケベ的なことになるんじゃね……。一応ノックしとくか。
コンコン。
「おーい、入るぞ」
「……」
返事が無いな。
でもノックはしたし、もし着替えたりしてても俺のせいじゃないよな!
よし入ろう!
「お邪魔しまーす」
何故かそっと入りソファーの方に目を移す俺。
「……すぅ」
「何だ、まだ寝てたのか」
よっぽど疲れていたのだろう。
俺はちょっと残念なんて思いつつ、その子の可愛い寝顔を三度見くらいしてキッチンに行った。
キッチンに入った俺は手際良く鍋に水を入れ沸騰させる。
俺はその間に戸棚からそうめんを取り出しておき、冷蔵庫から細ネギをとりだしそれを手早く切っていく。
その下準備がちょうど終わった頃に鍋の中の水が沸騰してきた。
その中にさっき出しておいたそうめんをぶち込んでしばらく待つ。
その間にそうめんに一緒についてきたつゆをお椀に入れて、水で少し薄め氷も入れる。
三分後、茹で上がったそうめんをざるに移して完成。
「うし、できたな」
俺特製普通のそうめんだ。
それじゃあ起こしに行くか。
「おーい、昼飯できたぞ。起きてくれ」
「う……うぅん……もう少し……だけ……すぅ」
「いやいや二度寝決め込もうとすんなよ。起きてくれ、食うもん食わないと元気にならないぞ」
「うぅん……、起きた」
「じゃあこっちのテーブルに来てくれ。簡単なもので悪いけどそうめん茹でたから」
「うん」
完全に起きてくれたっぽいな。
俺はお椀を彼女にお椀を渡し俺も席に着く。
「いただきます」
「いただきます」
さっき聞けなかったことをもう少し聞いておくか。
「君はこれからどうすんの?」
「わからない……」
「わからないか……」
「ならとりあえず家に今日は泊まって、俺の両親に相談するか。それでいい?」
「いいの?」
「まぁ夜には両親も帰ってくるから大丈夫だ」
「ありがとう!蓮!」
「お、おう」
また随分嬉しそうだな。
「それじゃあこれ食い終わったらとりあえずシャワーでも浴びておく?」
「うん」
そういえばこの子マント羽織ってるだけで服を着ていないっぽいな。
「着替え用意するけど俺のジャージでいい?」
「うん。ありがとう」
「「ごちそうさま」」
「それじゃあシャワー浴びて来な」
「うん。行ってくるね」
「あ、着替えのジャージとタオルは食器洗った後脱衣所に置いておくから」
「わかった。ありがとう」
「もうそんなにお礼ばっか言わなくても大丈夫だよ」
「わかった。蓮」
そう言って彼女は風呂場に向かい、俺は洗い物をするためにキッチンへ向かった。
洗い物を終えた俺は足早にキッチンを出て自室へ向かい、ジャージを手に脱衣所に向かった。
早くしないと出てきちゃうからな。
俺は脱衣所に入る前にノックをしたが返事は無く、シャワーの音が聞こえた。
少し大きめの声で「入るぞー」と言うと奥から「はーい」と返事が返ってきた。
持ってきたジャージを置き、棚からバスタオルを取り出し一緒に置いておく。
チラッと浴槽の方を見ると曇りガラスの奥に彼女のシルエットが見えてドキッとしたがすぐに目をそらす。
俺を信用して家まで来たのに下心を抱くのは心苦しいからな。
「タオルと着替え置いといたからな」
「ありがとう」
彼女がお風呂から上がってきた後、今日泊まるであろう部屋なりリビングにいるなり好きにしていいと言って適当にくつろいでもらった。
そんなこんなで彼女にくつろいでもらってさらに小一時間ほど過ぎ、そろそろ妹と母親が帰ってくる時間になった。
母親の仕事場と妹の小学校は近いので一緒に帰ってくるのだ。
俺は家族がそろそろ帰ってくることを知らせ、俺もリビングで待機。
さぁ、ここからが一番大変だな。
家族との対面は次回にしました。投稿が遅れて申し訳ないです。






