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「~全略~いろいろあったけどラブラブです」

作者: 草月叶弥

「全略」とは全『力で間を』略『す』の事である。多分!!

2回目のキスのあと…全力で逃げた。

ヒールで踵蹴りつけて(そこしか蹴れなかった)痛みで解放された拳を握りしめて右腕の肘をそのまま肩口へ叩き込み、不安定な姿勢からの左腕でのボデイーブロー。

肩と腹を押さえている男の横をすり抜け、無事に書庫へと逃亡を果たした。

「私が好きとか頭沸いてるんじゃないの!?」

安全地帯に逃げ延びた安堵から、資料を確認するために置かれている小さな机に崩れ落ちる様に座った。

アレは駄目だ。本気だ。

今まで冗談だろ。とか、嫌がらせにしては手が込んでる。とか色々考えていた。

チラッと好意から?と考えて、今までの関係を振り返り「ないな」と結論を出していたのに…

「明日からどんな顔したらいいのよぅ…」

自他共に認める『犬猿の仲』とはいえ、憎んだりしている訳ではないし、仕事が絡まなければいがみ合いも半分位に減る。

そんなアイツが

『私の事が好き』

…駄目だ。混乱しすぎて泣けてきた。

とりあえず今は仕事中だと思い出したので、全ては終業してからだ!と考える事を放棄して、仕事に集中する。

資料をピックアップし、ざっと内容を確認したら必要な物だけをよけておく。

こういった準備作業は次の仕事の始まりを期待させてくれるので好きだが、苦手な人も多く手が空いている時は頼まれる事も多い。

無料で引き受けるとこちらの状況お構いなしに頼んでくる迷惑な人が発生するので、報酬は貰ってるけど。

たまに嫌な顔をされるけれど自分の仕事を人に押し付けて当たり前。みたいな考えは受け入れる気がないのでこのスタンスを変える気はない。

つらつらと考えながら選別していると、完璧に仕事モードに気持ちが切り替わった。

さぁ、もう一頑張り。

資料を抱え、部署に戻った時には男の事など綺麗さっぱり忘れていた。



******************************


男による怒濤の押せ押せタイム(省略)


******************************



どうしてこうなった…

ベットの上で頭を抱えた。

隣では男がすやすやと満足そうに眠っている。

殴り飛ばしたくなるが、これでも一応【彼氏】になったんだからと我慢。

しかし真っ最中に、付き合う付き合わないの問答っておかしくないだろうか。

あぁいうのは物語だから面白いのであって、実際に行われるとドン引きする。

少なくとも私は引いた。

でも凄くせつない声で…いつもの偉そうなお前はどこ行った!?ってくらい必死で

「好きだっ…!」

って繰り返されちゃったら、ねぇ?

正直な話、未だに気にくわない所は多々あるし仕事では意見が一致する方がマレなんだけど、愛されてるって実感は充分あるし、ほだされちやったんだよ…ねぇ。

これからどうなっていくかは分からないけど、付き合うからにはしっかり話し合っていこうと思う。

じゃないと喧嘩しかしなさそうだし。



******************************


何か色々あった(省略)


******************************



どうしてこうなった…!!

売り言葉に買い言葉。

何時ものように喧嘩していたはずなのに何故か結婚することになっていた。

おかしい。

しかも招待客リストとか諸々下準備の手配終わっていて、後は私がドレス決めたら良いだけになっていた。

文句を言ってやる気満々で見たプランは好みドンピシャで文句のつけようもなく…親も懐柔されてたし…逃げ場がなかった。

そりゃあいつかはそうなってもいいかな。とは話したけれど、そこからこの短期間でここまで詰めるなんて思ってなかった。

話ぐらいしてもいいじゃないかと怒ったら、

「話したらお前は絶対逃げてた」

と言われ、反論できなかった。

だって確かに逃げただろうから。

好きだと言われて、好きになった。

絶対本人には言わないけれど、実は愛してる。

追いかけられて、捕まって、逃げなかったのは私の意志。

でも、結婚するなら一生を共にするというのなら、その覚悟を決める一言が欲しい。

喜ぶ周りに合わせながら過ごしていると、仕事終わりにアイツに呼び出された。

場所は行きつけの静かな喫茶店。

夜中までやっていて、美味しいコーヒーを淹れてくれるマスターと、静かだけど優しい雰囲気が好きで、煮詰まった時やゆっくりしたい時に利用している。

たまに騒がしい時もあるけれど、それはそれとして楽しいし。

アイツとも付き合いはじめてから何度か一緒に行ったけれど呼び出されたのは初めてで、少し緊張する。

からん。とベルと共に扉を開ける。

マスターの「いらっしゃいませ」の声に少しホッとした。

奥の席に案内されると男はもう座っていて、他愛ない話をしてるうちにマスターがいつものブレンドを持ってきてくれる。

口をつけると苦味のなかに少しだけ甘さを感じて、その甘さが自分の中のささくれだっていた気持ちを癒してくれた。

「好きだよ」

突然男からもたらされた言葉に吃驚してカップを傾ける手が止まった。

「なに?突然どうしたの?」

「お前はさ、気が強くて男と同じかそれ以上の仕事をバリバリこなしてるけど、弱くて涙もろい所もあるって知ってる。

 そんなお前を俺は好きになった。」

「な…に…?」

「好きになって追いかけて受け入れられて。

 それでもやっぱ不安だったんだよ。

 結婚しよう。って言って拒否されたら、って思ったら言えなかった。

 騙し討ちみたいにしたのは悪いと思ってる。

 でも、俺は本気でお前と結婚して一生一緒に生きていきたい。」

紡がれた言葉に、涙が零れた。

「ばか…」

「おう。自覚してる。」

「それ、ここまで決める前にいってよね!」

「わるかった」

「仕方ないから結婚してあげるけどっ…」

「ど?」

「~~っっ!!愛してるわよ!!このくそばか!!」

泣きながら叫んだら、爆笑されたのでヒールで思いっきり蹴ってやった。

痛い痛いと喚きながらも嬉しそうだったので、足を追加で踏みつけておく。

きっと私達はこうやって、ずっと過ごしていくんだろう。




終わり

迷走をしました。

書きたいことを書いていたらこんなことに……でも楽しかったです。

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