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雷撃の神様

 数分後、服に付いた汚れを払った翔と金剛姉妹は並んで岸壁に座っていた。

「驚いたよ。俺はてっきり怒られるものとばかり」

「私たちもそのつもりだったんだけど~、翔君の成長した姿を見たらどうでもよくなった~」

 ふわふわした笑顔を浮かべているのは、戦艦『霧島』の舟魂霧島だ。金剛姉妹は長女の金剛が厳格だが優しい性格で、次女の比叡は基本は静かだが、戦闘となれば勇猛果敢、三女の榛名は不良もどき、四女の霧島はふわふわしている感じで掴みどころがない性格で、とにかく一癖も二癖もある姉妹なのだ。そして重度のブラコンでもある。

「あの、お願いだから君はやめてくれ。流石に俺ももう二四だから」

「私たちにとっては何時までも翔は可愛い弟だから」

 比叡の言葉を聞いてかなり照れている様子の翔だったが、顔を引き締め立ち上がると榛名の後ろに立ち頭を下げた。

「榛名姉さん本当にごめん! いまさら言うのもアレだけど、あの時は一方的に言うだけ言って姉さんの気持ちまったく考えてなかった」

「いや、私の方も感情的になっててろくに話も出来なかった。一方的に責めるばかりで、本当に悪かった」

 その後も、互いに譲らず謝りつづける二人を金剛が止め。ようやく姉妹と翔の間にあった確執は消え去ったのだった。


 季節は流れ、八月八日に空母『翔鶴しょうかく』が竣工しゅんこうし海軍に引き渡され、九月二五日には、『翔鶴』の姉妹艦にあたる『瑞鶴ずいかく』が竣工したことで、海軍は第一航空戦隊空母『赤城あかぎ』『加賀かが』、第二航空戦隊空母『飛龍』『蒼龍そうりゅう』、第五航空戦隊空母『翔鶴』『瑞鶴』という南雲忠一中将が長官を務める機動部隊きどうぶたい、通称南雲機動部隊に六隻の正規空母せいきくうぼが揃ったのである。

 その間、八月二五日に淵田美津雄ふちだみつお少佐(十月一五日に中佐)が『赤城』の飛行隊長兼全攻撃隊の隊長として配属されるなど、いよいよ決戦近しという雰囲気になりつつあった。ちなみに、各空母の飛行隊は各地の陸上基地に分散して訓練を行っていた。

 そして十月七日『加賀』の長官室に各空母の飛行長、飛行隊長が集められた。そして南雲司令長官から、アメリカとの開戦とハワイ奇襲作戦が打ち明けられた。

その日の夜、『赤城』の飛行甲板で艦攻隊長である村田重治むらたしげはる少佐が一人考え込んでいた。そこへ人影が近づいていく。

「村田か? どうした一人で?」

「赤城さんでしたか。いえ、少し考え事を。赤城さんは何故ここに?」

 村田に問われた赤城は、顔を赤らめながら口を開いた。

「い、いやな。御堂と会う約束をな・・・」

「そうですか。では、俺は邪魔でしょうから失礼します」

 と、村田が立ち去ろうとした時、階段から御堂一樹みどうかずき飛曹長が姿を見せた。

御堂は二七歳で戦闘機乗り、階級は飛曹長でこれは准士官と呼ばれ経験を積んだ下士官に与えられる階級である。ちなみに、さらに経験を積めば特務士官と呼ばれ少尉以上の階級にもなれる(特務士官の最終階級は少佐)。彼は一度『赤城』に配属された後、教員を数年務め、その後日中戦争で初陣を飾り昨年一二月に赤城に再び配属されていた。赤城と御堂は互いに気が合いすぐに友人となり、恋人関係となるのにも時間はかからなかった。

 そして、現在の状況である。御堂は村田の姿を認めると慌てて敬礼した。

「おお! これは村田少佐ではないですか! 赤城と何か話でもありましたか?」

 村田は雷撃の神様と渾名されており、その渾名の通り抜群の雷撃の腕を持っている。年齢は三二歳でユーモアに溢れた男でもある。彼の他の渾名にブーツというものがあり、これは彼が常にブーツ(搭乗員用の長靴)を履いているからという説、仏のような人柄だったからという説、男性の一物ブツが大きかったからなど様々な説が存在している。ちなみに彼は前述の通りユーモラスな男で、冗談をよく言う男でもあった。そして、それはこの場合でも例外ではなかった。

「実はな御堂よ。俺は赤城さんに告白をしようと思い立ったんだ」

「ほ、そうでしたか。それはそれは・・・って、えぇええええええ!」

 村田があまりに真面目な顔で言ったので、御堂は思わず叫び赤城の顔をまじまじと見た。

「か、一樹! 村田が言っているのは真っ赤な嘘だ! 信じるんじゃない! そ、それに私はお前のことが好きだから、仮にこいつに告白されても断る」

 赤城の顔を真っ赤にしての否定と、御堂の狼狽を一通り楽しんだ村田はいつもの冗談であることを話し、二人に謝りその場は収まった。

「赤城への告白が冗談というのは分かりましたが。それでは少佐は一体ここで赤城と何の話を?」

「いや、別段話というほどのものではない。たまたま、考え事をしていた時に赤城さんが来ただけだ」

「そうだ、村田は一体何をそんなに深刻そうに考え込んでいたんだ?」

 赤城から質問を受けると、村田はちらっと御堂の方を見た。

「あっ、士官以上しか知れない機密事項でしょうか? なら、自分は失礼しますが」

「いや、貴様は優秀な搭乗員でもあるし信頼の置ける男だ。それに時期がくれば皆が知ることだ」

 その言葉を聞いた二人の顔が怪訝な表情になる。

「時期がくればとはどういうことですか少佐?」

 はやる二人を制して、村田は『加賀』で聞いたアメリカとの開戦の話と、それに伴うハワイ奇襲作戦、そして奇襲作戦のためには魚雷の改造が必要な事、その改造案を村田が任されたことなどを話すのだった。

 その後、悩んでいる村田の元に愛甲中佐から数年前に開発されていた魚雷を改良して利用すれば、真珠湾の浅い海底でも問題なく敵艦に命中を得られるという情報がもたらされ、村田の悩みは一気に解決するのだった。

今回から実在の人物である村田重治少佐も絡んできます。村田少佐は今後も中心人物として登場します。

この際なので言っておきますが、村田少佐には恋愛パートはありませんが、一部実在の人物と舟魂の恋愛シーンが存在します。故人には許してくださると幸いです。なお、無いとは思いますが遺族の方から苦情があった場合は即刻削除します。(ま、まあ、織田信奈の野望なんかでも実在の人物を登場させてるしいいよね?)

なんか、村田少佐にえらく後書き使ってますが、赤城さんと御堂もよろしくな!

では、また次話で。

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