ハルナの変化
桜が、青空に舞った。
まるで命を持つように、風に揺られて桜が踊る。
「ハルナぁ?何しているの?」
「ちょっと、窓見てた」
「ハルナって時々寂しそうにしているよね。
誰かと別れたの?」
「別に、別れたわけじゃないよ?」
ぼんやり、教室から舞っている桜を見ていると、話しかけてくれたクラスメイトの女子。
かつてあたしに、「ハルナの話はつまらない」と言った子だ。
「じゃあ何?
誰かに恋しているの?」
「恋、かぁ。そうかもね。
あたし、忘れられない人がいるから…」
「誰なの?どんな人?」
恋愛話が好きなそのクラスメイトは、好奇心旺盛な瞳をあたしへ向けながら、前の席に座った。
好奇心旺盛な瞳…懐かしいな。
「前にあたしが事故に合った時…出会った人なの」
「え?その人も怪我で入院?」
「ううん。
その人は病気だったの」
「そうだったんだ~」
「今、何しているか…わからないけど、あたしにとって大事な人なの」
「そんないつ来るかわからない人待っていないで、新しい人探せば?
今日合コンやるから、ハルナも来れば?」
「遠慮しておくよ。
あたしは、その人を待っていたいから…」
「もしかして、ハルナの喋りが飽きなくなったのって、その人の影響?」
「そうかもね。
その人は、あたしの長い話を、嫌な顔しないで聞いてくれたの。
だけどやっぱり、もっと上手く話せるようになりたいなって」
「ハルナの話、最近聞きやすくなって、飽きなくなったよ」
「ふふ、ありがとう」
あれから、数か月経った。
カイくん、元気かな?
あたしはぼんやり、桜を眺めた。
カイくんに出会ったのは、確か桜の季節だった。
あれから、随分経ったんだなぁ。
また桜の季節が巡ってくるんだもん。
毎日って、遅いように見えて、結構早いものなのかも。
数分後、チャイムが鳴って、ホームルームを行うために先生が入ってきた。
クラスメイトは自分の席へ戻り、あたしも窓を見ていた目線を前へ移す。
「今日は、転校生がいる。
今までずっと入院していたけど、皆と同い年だ。
勉強に遅れがあるから、わからない所は教えてやれ」
転校生と言う言葉に、クラスメイトがざわめき始める。
あたしは、入院と言う単語に反応した。
「じゃあ、入って来い」
担任が、廊下で待っているであろう転校生に向かって声をかける。
すぐに「はい」と聞こえ、扉が開いた。
「――――――っ!」
廊下から入ってくる“その人”に
あたしの涙腺が、崩壊し始めた。