6 面倒事には関わりたくないのですが。
「事の始まりは、私が買ったあのストラップが壊れたことなんです…」
やよっさんが、なんだかしゅんとして言った。
「壊れたって?」
「お腹を押しても音が鳴らなくなって。お気に入りなのにな―なんて思ってたんです。でも…」
「でも?」
「家でひとりでいたとき…しゃべったんですよ!日本語を!」
……はい?
「え?」
「だから、しゃべったんです!『アタシさ、なんでこんなとこにいるわけ?狭いんだけど』って!」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!
「それで私、怖くなって鞄にしまったんです…」
いやいやいや、怖いってねえ?!おかしいでしょ!ストラップがしゃべるわけないだろ!今日エイプリルフールだっけ?!
「……なんか、からかってない?」
「ほ、ほんとなんです!る、瑠衣さんなら信じていただけるかと思ってっ……」
う、うわわわわわ!やよっさんやめて!うるうる目攻撃やめて!分かったから!信じるから!
「し、信じる信じる信じる!!やよっさんが嘘つくわけないもんね?」
「ありがとうございますぅ……。それで、鞄にしまったんです。そうしたら音も鳴らなくなったんですけど…」
すると、今度はわが友その2が声をあげた。
「今朝、るーさんがぶっ倒れちゃったでしょ?」
うん、そうだね。私のせいじゃないけどね。
「るーさんが失神してる間にね、また音が鳴ったんだよねー。あ、その時は教室で鳴っちゃったときみたいな感じの叫び声ね?で、やよっさんが必死にお願いしたんだけど…」
「お願って?何に?」
「ストラップに決まってるでしょ」
「…」
あのぐにょぐにょしたストラップに頭を下げるやよっさんを想像する。…うーん、なかなかシュールな光景ですね…。
「でも、なんか日本語はもうしゃべってくれなくって…。いつまた叫び声あげるか分かんないから、るーさんに相談しよう!ってなったわけ」
「ずいぶんと面倒なことですね…」
私は正直に感想を述べる。なんだよ、この状況!
「というか、なんで先にこの二人に話したの?」
というか、なんで私に話してくれなかったんでしょーね、やよっさん。
「あ、それは…。瑠衣さんをこういうごたごたに巻きこみたくなくって…」
本当かなあ。まあいいか、あのやよっさんうるうる目攻撃には遭いたくないし。やよっさんのうるうる目って、本当にかわいいんだから。10秒以上直視すると倒れます。
「そういうことだから、瑠衣なんかいい案ない?ストラップに再び日本語をしゃべらせる方法!」
南波は軽い口調で聞いてきますけどね、そんなの誰も知らないと思うよ。
「このままじゃ、いつまた変な声を上げるor日本語しゃべりだすか分かんないしさー。るーさんならなんとかできるるんじゃね?ってことで!」
おい、なんだよ「私なら」って!私別にモノと会話できる超能力を持った少女とか、そんなんじゃないんですけど!ただの女子中学生なんですけど!
「私はただの平凡な女子中学生だ!」
思わずそううったえると、
「え?何言ってんの(笑)」
「瑠衣さんって、個性的ですし、平凡ではないと思いますけど」
「というかるーさんほど変な女子中学生っていないと思うよー」
なんだよ!私の友達たちは!もういいよ!どっか行ってよ!