4 これってSF小説なんでしょうか。
教室に響いた未知の言語の叫び声…って、ここに宇宙人さまはいらっしゃいますか?
…というボケはおいといて。
当然ながら、教室のザワザワ度は半端ない。なかには涙目の女の子も…。
わが友その1、2、そしてやよっさんの方を見ると……あれ、なんか三人ともすごくあたふたしてる…。
「*!★!◎?♡?????」
「きゃああああああああ!!」
また、未知の言語の叫び声、そして女子の悲鳴。
私も立派な女子ですけどね、もうこんなシチュエーションじゃ怖いとかそういうのより前に反応できないでしょ。普通。
「誰かふざけているんですか?すぐにやめなさい!」
ふだんのおだやかな水野先生からは考えられない大声に、教室中が静まり返る。
そんな静かな教室の中で聞こえるのは、わが友その1のひそひそ声。え?わが友その1?なんで?
「……だから、シーッ!」
間違いなくわが友その1は、誰かに話しかけている。その誰かは、ここからじゃ見えない。
というか、授業中に話しちゃいけませんよ~。悪い子だなあ。
そしてわが友その1は、クラスメイト全員+先生の注目をあびていることに気づいていない…。
あ、わが友その1、顔をあげたな。ほら、なんかあせってる。「ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤb」って感じの顔してるし。
「鈴宮さん?何を話しているのかしら?」
「あ…え…」
わが友その1、ピーンチ!……私は助けてあげられないのだよ。何もできない私を許しておくれ。
その時わが友その1を助けたのは、あのやよっさんだった。
「先生!申し訳ありません!」
やよっさんはいきなり立ち上がると、綺麗なよく通る声を教室に響かせた。
そのため、クラスメイト全員+先生の注目は一気にやよっさんへ。あ、わが友その1、めちゃくちゃホッとした顔してるよ。何なの?ほんとに。
「どうしましたか、北沢さん?」
「さっきの変な声…私のストラップが鳴ってたみたいですっ!」
次の瞬間、クラスメイト全員+先生の心の声がハモる。
‘ストラップ?’
(こんな瞬間人生に一度あるかないかだよ!ヤッター)
「ストラップ…ですか?」
皆の思いを代表する先生の言葉。
「はい。これです」
やよっさんが皆が見えるようにかかげたのは、アメーバみたいなぐにょぐにょした形の、青色をした、一つ目のキャラクターのストラップ。なんだ、それ…。まあ、可愛いと言えなくもない…かな?
「これ、お腹を押すと…」
「*!★!◎?♡?????」
さっきの叫び声が、また響く。
「まちがって鳴らしてしまったようなのです…。本当に、ご迷惑おかけしました!」
やよっさんが、また深々と頭を下げる。いや、そこまでしなくてもいいんじゃないの?
「あ、あら…。そうなのね。今度からは気を付けるようにね」
「すみませんっ」
先生が教卓に戻り、やよっさんが席に着く。その間、教室のザワザワ度は下降していく。
「それでは、授業に戻ります。大政奉還は…」
水野先生の温和な声。さっきと同じ、いつもの教室、いつもの授業。
うーん、やっぱ日常って、平凡って、サイコーだね!人生穏やかに暮らしたいよ。将来の夢は「御隠居さん」ってことで。