4 推理の巻。
文「まあ、皆さん、ひとまず落ち着いて」
魔「誰も興奮してないがな」
文「こほん。それでは」
早「ええ、どうぞ」
文「まず、先程の発言を思い出してください」
魔「私のか?」
文「ええ。食事目当て、たしかにそう言いましたね?」
魔「ああ」
村「まあ、真実味には欠けるよね」
早「でも、セコい魔理沙さんなら…」
魔「…悪かったな」
文「ええ。ありえなくはない。私もそう思います」
魔「…悪かったな」
輪「じゃあ、どうしてクロだと?」
文「問題は彼の料理の腕前です」
早「中の中、ですか?」
文「この発言、嘘はありませんね?」
魔「ああ。もうすぐ食べることになるぜ」
村「この発言、何かラブラブと関係あるの?」
早「むしろラブラブなら、『あいつの料理はめっちゃおいしーんだぜ! ずっきゅんハートなんだぜ!』とか言うのでは?」
魔「…怒っていいか?」
文「料理上手ならともかく、普通の人のもとに来るでしょうか?」
早「泥棒とかして疎まれて、他に行く所が無いのでは?」
魔「…お前は私に恨みでもあるのか?」
文「実は案外嫌われてはいないようです」
村「つまり料理上手のあてはあるのにこっちを選んでいる、と?」
文「はい。例えば、アリスなんちゃらロイドさんですね」
魔「マーガロイド…じゃない、マーガトロイドな」
村「料理上手な人なの?」
文「器用そうですし、彼よりは上手いでしょう」
魔「そうなのか?」
文「はい、おそらく。家にはあらん限りの調理器具が揃っているようですし」
魔「へ、何のためだ?」
文「…さあ、誰のためでしょうね。この調子だと使う機会は無さそう…」
魔「?」
文「ええと、他には十六夜咲夜さんですかね」
早「メイドコスの人ですね」
魔「無給だが本職だ」
文「彼女の料理の腕前は誰もが知るところでしょう」
早「仲いいんですか?」
魔「別に普通だな」
文「いえ、そんなことはありません」
魔「私の交友の何がわかるんだよ…」
文「記者をナメないでください」
魔「そんなこと言われてもだな」
文「あなたは現在も足しげく紅魔館に通っていますね?」
魔「…まあ」
文「親密さ、通う頻度、料理の質…全て考慮すると、そちらで食べるはずです」
早「たしかにあそこって凄いお屋敷ですよね」
輪「ということは、ごはんも凄いご馳走?」
早「しかもメイドの作ったご馳走とは付加価値が高いですね…」
村「今そこは関係なくね?」
魔「私だって、遠慮もするんだぜ」
文「本をパクってるあなたが?」
魔「いやまああれは借りてるだけだし…」
文「ふっ。チェックメイトですよ」
早「恋、しちゃってるんですね?」
魔「してない」
村「今はまだ気になってる程度の…」
魔「気になってない」
輪「別に悪いことじゃ…」
魔「違うってのに」
文「往生際が悪いですね」
魔「だから私は」
早「というか、今まで何も無かったんですか?」
魔「無いな。全く何も」
早「手を繋いだりは?」
魔「するわけないだろ…」
早「手に触れたことも?」
魔「んー…腕相撲ならしたことあるな」
早「おお、どうでした?」
魔「どうって…いちおう負けたが…」
早「…勝敗じゃなくて…」
村「男らしい手だったとか、すごい温かかったとか」
魔「べ、別に無いって…」
文「おやおや、顔が赤いようですが」
魔「赤くない。うるさいな」
早「とにかくプッシュしないとダメですよ」
文「そうですね。彼は腰抜けですから」
輪「…断定?」
村「そうそう。彼女いたことなさそう」
早「このパジャマパーティーが終わる前に、勝負を決めましょう」
文「それはつまり?」
早「はい、彼を…オトします!」
魔「なんでお前が決めるんだよ…」
早「作戦はこうです」
村「ドキドキ」
早「まず最初の一手として…」
輪「一手として?」
早「キスをします」
魔「作戦じゃないだろ…」
早「以上です」
文「さすが平成の怪物ですね」
村「でもそれくらいしないと状況は打開できないんじゃない?」
輪「たしかに。長い間通ってるのに何も無かったのなら」
文「脈なしの可能性がありますね」
魔「いや、それはさすがにないだろ」
村「えっ、何か脈アリっぽいことあったの?」
魔「…いや、そういうわけじゃないが…」
輪「ダメじゃん」
魔「………」
早「あの人、好きな人はいるんですか?」
魔「…さあな」
文「心当たりは?」
魔「………」
文「なくもない、といった感じですか」
早「逆に、彼を好いてる人は?」
魔「…わからん。人はいいからな」
早「なるほど。顔はイマイチですが」
文「私としては、なよなよした性格も無理ですね」
村「私は誠意を見せてくれればなんとか」
輪「あんた尼だけど」
早「でも男の人は誠実さだけでは物足りないと思います」
文「そうですね。強くて聡明で金持ちであるべきです」
村「そこはほら、付き合っていくなかで」
輪「だからあんた尼だって」
早「なるほどだんだん変えていく、と」
文「性格や気質が簡単に変わるとは思えません」
村「変わらなかったら、好きになった私の負け、かな」
輪「あんたそんなキャラだっけ?」
早「ちょっとロマンチックですね」
文「私はそんなのは御免ですね」
村「ああ、そうきたか」
輪「現実主義ね」
早「ストイックそうですもんね」
文「ええ、あくまで自分の納得のいくように選びますね」
村「それは自分が選べる立場だから」
輪「美人だったらそれもできるわね」
早「そうそう、肌とかも綺麗ですよね。何かしてますか?」
文「私? いえ、特に何も」
村「へー、いいなぁ」
輪「この時期だとまだ乾燥とかあるのに」
早「ああ、乾燥しますよねー」
文「そうでもありませんが…場所によるんですかね?」
村「結構場所の差ってあるわよね」
輪「天気とかも、ちょっと離れてるだけで違ったりとか」
早「そうそう。特に山は他と全然違って」
文「ああ、ありますね。山以外晴れてるとか」
村「そういえば、山の天気って、本当に変わりやすいの?」
輪「こっちはずっと晴れ続きだけど?」
早「天気変わりやすいですよ。洗濯物とか大変で」
文「ちなみに、海はどうでした?」
村「天気というか風がやっぱり」
輪「陸とは違うの、風?」
早「あ、風といえば、この前人間の里で風邪が流行ったらしくて…」
魔「…おい、キスの話はどうなった…」




