おせうがつ
『もう何度寝ーるーとー』
魔「おせうがつぅー」
『お正月ではー、タコ焼いてー』
魔「イカの切り身を炙りましょー」
『はーよー来ーて来ーて』
魔「おせうがつぅー」
『ここで繰り返し』
魔「おせうがつぅー」
『ビブラートで繰り返し』
魔「おせぇうぅがぁあぁつぅうぅうぅうぅ」
『スタッカートで』
魔「おっ、せっ、うっ、がっ、つっ」
『グランディオーソで』
魔「ぅおおせぇいうぅがぁつぅうううう」
『ハミングで』
魔「ふーふーふーふーふーん」
『ヤンキー風で』
魔「雄ー瀬ー憂ー峨ー津ー」
『妹で』
魔「おーせーうーがーつー、お兄ちゃん大好き」
『セリフ入っちゃったよ』
魔「いや、けっこう頑張った方だぜ」
『まあ、前半は良かったけどさ』
魔「じゃあおまえ、妹やってみてくれよ」
『おうよ』
魔「さんはいっ」
『おーせーうーがーつー、お兄ちゃん私の部屋に勝手に入るなんてサイッテー』
魔「セリフ入ってるじゃないか。しかもマニア向けの」
『いや、標準装備だよ。もうこの部分はセリフじゃないの』
魔「歌詞か?」
『いや、歌詞どころかもう…なんていうか…呼吸?』
魔「わけわかめだぜ」
『わけめかぶだぜ』
魔「わけひじきだぜ」
『わけこんぶだぜ』
魔「わけもずくだぜ」
『わけあおのりだぜ』
魔「わけめ…あ…あぁ…負けた…」
『まあ、海藻で俺に勝てると思わないことだね』
魔「まだあるのか?」
『きくらげ』
魔「キノコじゃねえか!」
『いや、クラゲってついてるじゃん』
魔「ついててもキノコだぜ。第一、たとえクラゲだとしても海藻じゃないだろ」
『ふっ、それはどうかな?』
魔「いや、違うだろ」
『クラゲの生物学的分類知ってる?』
魔「え、いや、知らないけど…まさか…」
『いや俺も知らん』
魔「じゃあダメじゃねえか!」
『もっと勉強しないとなぁ』
魔「いや、クラゲには詳しくなくていいだろ」
『じゃあ何を学べばいい?』
魔「知るか」
『汁?』
魔「いや、汁か、じゃなくて…もういいや…」
『東汁海』
魔「は?」
『いや、東シナ海に見えるかな、って』
魔「見えないだろ」
『ですよね』
魔「あー、退屈だな」
『うむ。宴会とか無いかな?』
魔「そろそろあってもよさそうだな」
『忘年会とかね』
魔「もう年末だもんな」
『今年も終わりかぁ。早かったなぁ』
魔「本当だぜ。またやっかいな異変もあったしな」
『振り返って今年一年どうだった?』
魔「だらだらしてたら終わった」
『ダメじゃん』
魔「いや、じゃあおまえは?」
『だらだらしてたら終わった』
魔「まったく同じじゃないか」
『や、年頃の女の子が何もせず歳をとるって…』
魔「おまえのせいだろ!」
『え』
魔「何が、え、だよ」
『いや、どっちかっていうと、俺が魔理沙に振り回されてたような…』
魔「ああそうですか。私が悪いのかよ」
『いや、悪いっていうか…楽しかったよ。ありがとう』
魔「お…おう…」
『そだ。みかんでも食べる?』
魔「そうだな」
『やっぱり冬はこたつにみかんだよね』
魔「あと、ケーキとかクッキーとかスコーンとか」
『それは年中』
魔「まあ、年中とはいえ、うまいもんはうまい」
『否定はしないけど』
魔「じゃあ食べようぜ」
『まあ、賞味期限近いやつなら』
魔「いつのだ?」
『三〇日まで』
魔「期限切れてないか?」
『あれ、今日何日?』
魔「ええっと、三日前が二九日だから…」
『………』
魔「………」
『………』
魔「………」
『今日元旦じゃねーか!』
魔「今日元旦じゃねーか!」
霊「あの二人、忘年会からずっと来てないけどまさか…」




