15 はくしょん
天「あはは。超たのしー」
フ「うぅー」
『…何この天人』
魔「器が小さいな」
輝「まったくだわ」
衣「…はずかしい…」
天「ほら、また1点入ったわよー」
フ「うぅぅ!」
『…フランちゃん、俺が手伝ってあげようか?』
フ「じぶんでやる!」
『あ、そう…がんばって…』
輝「さすがのプライドね」
魔「それに比べて、こっちときたら…」
衣「…はぁ…」
天「やった、またヒット!」
フ「ぅああああ!」
『フランちゃん、ゲームじゃなくて別の遊びでも…』
フ「うっさい!」
ごすっ
『…っかはっ!』
魔「だ…大丈夫か?」
『………』
魔「息、ちゃんとできるか?」
『………』
魔「おい、ほんとに大丈夫か?」
輝「お腹だったわね」
衣「大丈夫…なのでしょうか…」
『…っ…』
魔「か、顔が青いぜ…」
『…だいっ…じょ…』
輝「しゃべった…わよね?」
魔「そうだな。大丈夫なのか?」
『だい…じょう…ぶ』
天「あ、やった、初ホームランよ!」
フ「うぎゃああああああああ!」
すっ!
がしっ!
『ちょ、コントローラーを振りかぶらないで!』
フ「びえええええええ!」
魔「あわわ、泣くなよ、フラン」
天「そうそう、みっともないわよ」
衣「…もうやだこの人…」
輝「そんなときには飴玉よ」
『おお、さすが輝夜さん!』
フ「びえええええええ!」
『フランちゃん、ほら、飴玉だよー』
ひょいっ
ぱくっ
ガリガリガリ…
フ「びえええええええ!」
『泣きやまない! しかも露骨に噛み砕いた!』
魔「仕方ない、お前の血でここはひとつ!」
『え…う…背に腹はかえられないか…』
魔「フラン、血を吸って機嫌を直してくれ!」
フ「うう…」
『………』
フ「………」
『………』
フ「ぅおえ゛っ…」
『…え…』
魔「どうしたフラン、血が合わなかったのか?」
『いや…え…』
フ「びえええええええ!」
『…まだ…吸われてないのに…』
衣「………」
魔「………」
『…おえって…言われ…た…ぐすっ…』
魔「…まぁ、気にするな…」
フ「びえええええええ!」
輝「こういうときはリモコンよ!」
魔「何に使うんだ?」
輝「ほら、これを持ちなさい」
フ「びえええええええ!」
輝「そして思いきり投げる!」
『ええっ、何言って…』
びゅんっ!
ガシャーン!
『うぅわぁぁぁー! 窓がぁぁぁぁぁぁあ!』
輝「すっきりしたでしょ?」
フ「ぐす…うん、ちょびっとだけ」
衣「…すごい強行策ですね」
『…もうやだこの国…』
天「ねえ、寒いから窓閉めてくれる?」
『ねえよ! 閉める窓がねえんだよ!』
天「なにキレてんのよ」
『キレるよ! 輝夜さん、なんてことさせるんですか!』
輝「いや、まあ、ああするしかなかったのよ」
『ああ、窓が…』
輝「ここで一句」
『詠まなくていいです』
輝「割れた窓過ぎる秋風身に染みて」
『…残酷なまでに侘び寂びを感じます』
衣「あ、俳句なら私も知ってますよ」
『…別に知らなくてもいいですよ』
衣「すずめの子そこのけそこのけ舌切るぞ」
『舌切りすずめ!?』
魔「それは間違ってるな」
衣「えっと、違いましたか?」
魔「正解はこうだな」
『言わなくていいよ』
魔「すずめの子豆が欲しいかそらやるぞ」
『ハトじゃん…』
魔「あれ?」
フ「はっくしょん!」
天「マジで寒いわね」
『…ホントだよ』
輝「命が助かったと思えば、ほら、ね?」
『まあ、そうですけど…』
フ「さむい」
魔「窓を割るからだな」
衣「へくちゅっ!」
『っ――!』
天「なんか悶えだしたやつがいるんだけど」
魔「………」
衣「えっと、どうかされましたか?」
『く…くしゃみひとつで…この破壊力…』
魔「よし! 寒いからそろそろお開きにするか!」
輝「あら、ずいぶん唐突ね」
魔「じゃ、かいさんかいさーん」
『え、もう帰るの?』
魔「ほら、フラン、帰るぜ」
フ「うん、でもお昼だよ」
魔「曇ってるし、傘差せば大丈夫じゃないか?」
フ「もってきてない」
魔「玄関にあるぜ」
『俺の傘がね』
輝「私も風邪引かないうちに帰ろうかしら」
『…窓はどうすればいいんですか』
輝「形あるものは、いつか朽ちる運命にある。これが世界の真理よ」
『…あんたが言うなよ』
輝「それじゃお邪魔しましたご馳走様でした美味しかったです!」
『あ、ちょっ…!』
たったったっ
ばたん!
天「逃げたわね」
魔「フラン、準備はできたか?」
フ「うん」
魔「じゃ、こんな所はとっとと立ち去ろうぜ」
フ「うん、おじゃましました」
『あ、え、じゃ…じゃあね、フランちゃん、魔理沙』
フ「ばいばーい」
魔「………」
すたすた
ばたん!
『…無視…だと…』
天「怒らせたんじゃないの?」
『俺、なんにもしてなくね?」
天「知らないわよ。とにかく私も寒いから帰るわ。おみやげちょうだい」
『うん、早く帰れ』
天「けち」
『二度と来んな、あほ、まぬけ、あんぽんたん』
天「なっ、私に向かって何てことを…」
衣「はいはい、いいからおいとましますよ」
天「だってあいつ私にアンパンマンって…」
衣「言ってませんよ。耳腐ってるんじゃないですか?」
天「え…」
衣「それでは、お騒がせしました」
『あ、帰っちゃうんですか』
天「何よ、やっぱり私が帰るのは寂しかったのね」
『衣玖さんなら、うちで暮らしてもらっても構いませんけど』
天「私は無視かい。ってか、暮らすとか意味不明なんだけど」
衣「やはり暮らすわけには参りませんので」
『そうですか…残念です』
衣「では、また今度お会いしましょう」
『はい、絶対また来てくださいね』
衣「…前向きに検討します」
『…はい』
衣「それでは」
『はい、また』
天「んじゃね。また来るわ」
『………』
天「はい、無視キタコレ」
衣「ほら、帰りますよ」
天「ちょ…待っ…」
衣「ほらほら」
天「絶対また来るから覚悟しときなさいよーッ!」
『くんな、あほ!』
ばたん!
『ああ…みんな嵐のように去っていったなぁ…』
ぴゅ~
『…魔理沙は何で機嫌が悪かったのか』
ぴゅ~
『うん、寒かったからであろう』
ぴゅ~
『………』
ぴゅ~
『ああ…』
ぴゅー
『寒すぎるわ!』
第4回 完




