13 あさごはん
魔「おい」
『…むにゃ…』
魔「おいってば」
『…あとごふん…』
魔「何でおまえがフランの布団で寝てるんだよ」
『…ねてないよー…』
魔「いや、寝てるって」
フ「んぅ…あ…まりさ…」
魔「フラン、どうしてこいつがここで寝てるんだ?」
フ「…んー…」
魔「んー?」
フ「…すーすー…」
魔「寝ぼけてたのか」
『…ぐーぐー…』
魔「おーきーろーよー」
『…なにさ…朝は弱いんだよ…』
魔「何でここで寝てるんだよ」
『フランちゃんの遊びに付き合って気付いたら寝てたでござるの巻』
魔「…お疲れさん」
『…ぐーぐー…』
魔「朝ごはんはどうするんだ?」
『…パンでも食べて…』
魔「作らないのか?」
『…いと眠し…』
衣「ひゃあっ!」
魔「お、なんだ?」
『びっくりした…』
衣「な、なんで隣で寝てるんですか!?」
天「…え、私?」
衣「びっくりするじゃないですか!」
天「いや、私の寝床が確保されてなかったから」
衣「だからって入って来ないでください!」
天「いいじゃん、ちょっとくらいさー」
衣「まったくもう…」
天「朝ごはん、まだー?」
『パンでも食べてや』
天「…何よ、その態度は」
『眠いんだよ』
魔「こいつは朝に弱いからな」
天「お腹すいたー」
『うるひゃいうるひゃい』
天「衣玖も、お腹すいたでしょ?」
衣「そうですねぇ、まあ、少しだけ」
『ぐ…』
天「お…」
魔「………」
天「衣玖は、パンと手づくり料理なら、どっちが食べたい?」
衣「えっと…でも、その、悪いですし…」
『………』
天「あんたはどうなのよ」
魔「私は和食がいいな」
『………』
天「まあ、私たちがいくら望んでも、無理に起こすのは、かわいそうよね」
衣「ええ」
魔「そうか?」
天「おとなしくパンを食べることにするわ。残念だけど」
『………』
天「おとなしくパサパサしたパンをついばむことにするわ。みんな本当に和食が食べたかったけど!」
『………』
………
魔「やっぱ和食だよな」
衣「おいしいですね」
天「この女好きめ」
『…ちがうよ、やさしいんだよ…』
魔「もぐもぐ」
『輝夜さんは?』
魔「まだ寝てるんじゃないのか?」
天「いや、ゲームしてるわよ」
『…朝っぱらから…』
衣「もうひとかたも見えませんが」
魔「フランは寝てるな」
『輝夜さーん、フランちゃーん、ご飯だよー』
輝「今セーブするー」
『…ああ、このセリフは、三十分くらいやり続けるぞ』
魔「なあ」
『ん?』
魔「おかわり」
『ああ、はいはい』
天「私もジュースおかわり」
『はいはい』
衣「え…じゃ、じゃあ私は…その…お、お味噌汁あたりを…」
『…いや、無理におかわりしなくてもいいですよ』
衣「一応、空気を読んだのですが」
『…使いどころ間違ってます』
魔「ところで、フランが起きてこないな」
『ん、たしかに。おーい、フランちゃーん』
フ「………」
『フランちゃん、ご飯だよ』
フ「…っるせぇ…」
『………』
フ「…むにゃむにゃ…」
『…寝かせとこう』
魔「起こさないのか?」
『無理に起こさない方がいいね』
天「どれ、ここはひとつ私がひっぱたいて起こしてやるわ」
『…やめれ』
天「起きなさい、ちびっ…」
『やめてー!』
天「なによ」
『ただでさえ危ないのに、寝起きで機嫌悪かったらどうするのさ』
天「逆に安全になる」
『…バカだこいつ』
天「誰がバカよ!」
魔「ごちそうさん」
『あ、食べ終わったの?』
魔「食べ終わったぜ」
衣「私も、ごちそうさまでした。おいしかったです」
『あ、はい、お粗末さまでした』
天「あんたが執拗に話しかけるから、私だけ取り残されたじゃない」
『お・れ・の・せ・い・か・よ!』
天「うん」
『くぅ…なんて癪に障る天人だ!』
輝「ごぱん、ごぱん」
『わ! 急に現れた!』
輝「私のご飯は?」
『あ、ありますけど…』
輝「じゃあ用意してちょうだい」
『あ、はい。ゲームやめたんですね』
輝「いや、セーブして置いといたわ」
『ゲームばっかりしてると、頭パーになりますよ』
輝「あなたみたいに?」
『そうそう。俺みたいに。あはははは………って、余計なお世話ですよ!』
輝「いただきます」
『スルー!? 渾身のノリツッコミをスルー!?』
天「ねえ」
『ん、どうしたの?』
天「………」
『………』
天「食事中だから、静かにしてもらえないかしら」
『…こいつ…』




