12 ふたりはまりさ
『みんな、洗面所使い終わった?』
魔「使い終わったぜ」
『よし。じゃ、布団敷こうか』
魔「そうだな」
輝「どこに敷けばいいのかしら?」
『あ、どうぞお好きな所に』
輝「そう。じゃあ窓のそばにするわ」
『どうぞどうぞ』
フ「わたしは魔理沙のとなり」
魔「いいぜ。その代わり、大人しく寝てくれよ」
フ「うん」
衣「あの…」
『はい、どうしました?』
衣「布団を持参しなかったのですが…」
『ああ、そういえば、そうでしたね』
衣「やはり床で寝たほうがよいのでしょうか」
『いえ、俺の布団でよければお貸ししますよ』
衣「え、でも…」
『大丈夫ですよ消臭スプレーはしてますよ汗臭くありませんよ!』
魔「何でそんなに必死なんだよ…」
『いや、毎回臭いって言われるから…』
衣「しかし、悪いのでは?」
『俺はソファで寝るから大丈夫ですよ、多分』
衣「そうですか。それではお言葉に甘えて」
『そうと決まれば、ねぇ、てんこちゃん』
天「え、何、やめていいの!?」
『いや、布団敷くから、向こうでやってて』
天「ああ、そういう…」
『よっ…はい、敷きましたよ、衣玖さん、どうぞ』
衣「わざわざありがとうございます」
『いえいえ、どういたしまして』
魔「それじゃ、そろそろ寝るか」
『俺は、お風呂に入ってくるね』
魔「そういえば入ってなかったな」
輝「私たちは先に寝てるわよ」
『はい、どうぞ。おやすみなさい』
輝「襲わないでよ?」
『…襲いませんよ』
魔「じゃ、おやすみ」
フ「おやすみー」
輝「おやすみ」
衣「おやすみなさい」
『はい、おやすみなさい』
すたすた
『おっふろー、おっふろー』
天「ねえ」
『ん?』
天「もうやめたい」
『上がったらね』
天「…つらいんだけど」
『はいはい。頑張って』
天「…くっ…なんで私がこんなこと…」
すたすた
ガラガラ
『今日も大変だったなぁ』
ガラガラ
『お風呂で疲れた体を癒…』
『………』
『…うん…』
『…湯舟にお湯が無い…』
………
ガラガラ
『ふぅ。もう皆寝てるかな』
天「お、上がったのね」
『ああ、まだやってたんだ』
天「もうやめていいのよね」
『え、上がったの?』
天「今、上がったでしょ」
『いや、知らんがな』
天「お風呂から出てきたじゃん」
『俺が?』
天「うん。上がった」
『ああ、俺がお風呂から、ってこと?』
天「うん」
『屁理屈こねてないで、早くやりなよ』
天「…ぶぅ」
『さ、ちょっと優雅に休憩したら寝るかな』
天「暇ならあんたもやりなさいよ」
『ふんふーん』
天「…無視とか…」
とことこ
フ「ねえ、あそぼーう」
『フランちゃん、もう寝ないとダメだよ』
フ「ねむくない」
『ああ、吸血鬼だからか…』
フ「あそぼー」
『そうは言っても、俺は眠いんだよね』
フ「やだ。だめ」
『ダメと言われましても…』
フ「つまんない。あそぼうよ」
『うーん…そうだなー…』
フ「なにしてあそぶ?」
『布団で横になってできることにしよっか』
フ「たのしいこと?」
『うん。多分』
フ「じゃあ、布団に行きましょ」
とてとて
とことこ
ごそごそ
フ「はい、横になった」
『よし、じゃあ…』
がしっ
魔「おい、変なことはするなよ」
『わ、魔理沙…起きてたの?』
魔「私が起きてたら不都合なのか?」
『そうじゃないけどさ…もっと信用してよ』
魔「なんか危険な気がしてな」
『いや、俺、何か悪いことした?』
魔「まあ、してないけど…」
『変なことしないから』
魔「本当か?」
『もちろん』
フ「はやくあそぼうよ。魔理沙もあそぼう」
魔「いや、私は寝るぜ。なんか頭が痛いんでな」
『うん、飲み過ぎだね』
フ「そっか、魔理沙は寝ちゃうんだ」
魔「んじゃ、おやすみ」
フ「うん、おやすみ。じゃあ、はい、あそぼう」
『あ、うん。しりとりでもしようか』
フ「ふつうの?」
『普通の』
フ「つまんない」
『じゃあ、ラ行以外の音禁止で』
フ「じゃあ、しりとりの『り』から始めて」
『り…り…リール』
フ「ルール」
『…る…る…』
フ「………」
『………』
フ「………」
『…ぐー…』
フ「寝たらダメ!」
『…はっ! ね、寝てないよ』
フ「『る』だよ」
『る…ルビー』
フ「ラ行以外だめ」
『無いよ、もう』
フ「じゃあ負け」
『うあー負けたーじゃあ寝ようかおやすみー』
フ「だめ!」
『…ねむいー…』
フ「寝たら指ちぎる」
『!?』
フ「なにしてあそぶ?」
『夢の中で一緒に遊ぶってのは?』
フ「いいけど、指ちぎる」
『よし、別のにしよう』
フ「なに?」
『クイズにしようか』
フ「うん、いいよ」
『スリランカの首都はどこでしょうか?』
フ「次のもんだいは?」
『…ちょっとは考えてよ』
フ「つぎ」
『えっと、タイの首都は?』
フ「知らないもん。つぎ」
『えー、デンマークの首…』
フ「えいっ!」
ぐぐぐ…
『いったいたいたい! ゆゆゆ指が逆に曲がる!』
フ「もっとちゃんとしたやつにして」
『うーん…じゃあ次は、あれやろうか』
フ「なあに?」
『羊を数える遊び』
フ「何それ」
『まず、目を閉じます』
フ「うん」
『そして羊を数えます。間違えて執事を数えてはいけません』
フ「メイドは?」
『メイドもダメです』
フ「はーい」
『では、用意はいいですか?』
フ「うん」
『1から順番に数えるんだよ。よーい、スタート』
フ「one sheep, two sheep...」
『うんうん』
フ「three sheep, four sheep...」
『そうそう』
フ「five sheep, a wolf came, and ate the sheep」
『こらこら』
フ「なに?」
『食べちゃダメ』
フ「えー。ふつうに数えるとねむくなる」
『いいんだよ、眠くなって』
フ「じゃあ、魔理沙を数える」
『…うん、まあ、好きにして』
フ「魔理沙がひとり、魔理沙がふたり」
『………』
フ「ふたりは魔理沙…」
『…ん?』
フ「魔理沙が三人…魔理沙がよにん…」
『うんうん』
フ「魔理沙がごにん…まりさがりょくにん…」
『うん、りょくにん』
フ「…まりさ…ななにん…」
『うん』
フ「…はちにん…」
『………』
フ「…ん…」
『………』
フ「………」
『…お、案外あっさり寝ちゃったみたい』
フ「…すぅ…」
『ふぁ…』
フ「…すぅ…すぅ…」
『俺も寝なきゃ…』
フ「…すぅ…すぅ…」
『…ん…おやすみ…』
フ「…すぅ…すぅ…」
『………』
たったったっ
天「終わったわよっ」
フ「…すぅ…すぅ…」
『…すぅ…すぅ…』
天「………」
フ「…すぅ…すぅ…」
天「…なんかちょっと兄妹みたいね」
『…すぅ…すぅ…』
フ「…んぅ…むにゃ…」
天「ふふっ…さ、私も寝ようかしら。ええっと…」
衣「………」
輝「………」
天「うーんと…」
魔「…すぅ…」
フ「…あむ…」
『…すぅ…』
天「…私の寝床は?」




