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もっと東方寝巻巻。  作者: もっぷす
第3回
71/173

いもうと

「ねえねえ、お兄ちゃん」


『ん、どうした?』


「あのね、お兄ちゃんってさ」


『うん、何?』


「お兄ちゃんって、彼女いるの?」


『いや、いるわけないじゃん』


「そんなのわかんないじゃない。いるかもしんないじゃん」


『いーまーせーんー』


「ふうん。いないんだ」


『この顔で彼女がいたら天変地異が起こるわ』


「えー、原因は顔だけじゃないと思うなー」


『ぐっ…痛いところを突いてきますな…』


「あはは。傷ついちゃった?」


『うん、傷ついた』


「えへ、ごめんね」


『もう立ち直れないかも』


「ごーめんってばー」


『リモコンに単三電池じゃなくて炭酸飲料入れちゃうかも』


「あはは、なにそれー」


『ああ立ち直れない俺は外見だけじゃなくて中身もあああああ』


「んもう、お兄ちゃんったらー」


『どうせ俺なんて…俺なんて…』


「じゃあ、こーゆうのはどう?」


『どういうの?』


「私が…」


『私が?』


「私がお兄ちゃんの彼女になってあげる」


『…え…』


「だめ…かな…?」


『え…えっと…』


「………くすっ」


『え?』


「なーんて、冗談だよ、おにーちゃん」


『わ、わかってるよ、そんなん』


「うっそだー。ぜったい本気にしてたもん」


『してませーん』


「してましたー」


『しーてなっいもーん』


「しーてたもーん」


『大体、あれじゃん』


「なに?」


『三等身ぐらいまでは結婚できないじゃん』


「それを言うなら三親等でしょ。しかも、結婚するなんて言ってないよ」


『………』


「…けっこん、したいの?」


『ち、ちがわい!』


「お兄ちゃん…私と結婚したいんだ…」


『そもそも、あれじゃん』


「なに?」


『三等身くらいまでは結婚できないじゃん』


「ループしてるよ。動揺してるの?」


『べ、別に動揺なんて…』


「お兄ちゃんがシスコンだってことは、よくわかったよ」


『シスコンじゃないよ』


「じゃあなんなの?」


『リモコンに炭酸飲料入れちゃうかも、って』


「あはは、ループしてるってば」


『歴史は繰り返すの!』


「お兄ちゃんってば、また意味わかんないこと言って」


『まったくもう』


「それはこっちのセリフだよ。まったくもう」


『そもそも、あれだよね』


「あれ?」


『…あれれ?』


「どしたの?」


『うん、なんかね…』


「うん」


『いや、俺ってさ…』


「うん」


『妹いたかなって…』


「さあ、わかんない」


『………』


「………」


『………』


「………」


『………』


「………」


『あーっ!』


「てへ」


『こいしちゃんか!』


こ「こいしちゃんだよ」


『もー、「恋する妹ごっこ」はやめてって言ってるでしょ!』


こ「えー。面白いんだもん」


『面白くてもダメ。無意識に付け込むじゃん。俺、気付かないじゃん』


こ「でもでも、今は気付いたでしょ?」


『それは、今、俺が自分の無意識の領域を意識的に無くしたから』


こ「えー、なにそれー」


『今の俺は全て意識。心臓も意識で動かしてるのだよ』


こ「あはは、それすごい」


『まあね』


こ「ほんとうは私が、無意識の領域をもとに戻しただけだよ」


『俺の実力は?』


こ「ぜーんぜん関係ない」


『あらら…そうでござったか』


こ「そうでござったよ」


『まあ、とにかく妹ごっこはダーメ』


こ「妹ごっこじゃなくて、恋する妹ごっこ」


『おんなじでしょ』


こ「同じじゃないよ。私はもともと妹だもん」


『さとりんの妹でしょ』


こ「妹じゃん」


『俺の妹ではないでしょ』


こ「だから、こうやって遊ぶの」


『そんなのつまんないでしょ』


こ「おもしろいよー。あー、でもー」


『でも?』


こ「前も言ったけど、本当に恋してるわけじゃないからね」


『うん、わかってるよ。設定でしょ?』


こ「そうそう。恋してるって設定。こいしだけに」


『うん、それ、前にも言ったよね』


こ「へへ、覚えてたかー」


『でも、あんまりやってると危ないよ』


こ「えー、どうして?」


『襲うかもしれない』


こ「あははー。妹なのに?」


『俺、妹襲うのに罪悪感とかないからね』


こ「ふふ、危ない人だー」


『危ない人ですよー』


こ「でも、本当にそんな勇気あるの?」


『無い』


こ「やっぱり。奥手そうだもんね」


『ええ、さようでございます』


こ「あはは、認めちゃうんだ」


『あ、そうだ、全然関係ないけど、どらやき食べる?』


こ「え、いいのー?」


『ちょうどさっき、来客を予感したから。無意識に』


こ「ふふ、そんなわけないよー」


『まあ、本当は間違って買っちゃったんだけどね』


こ「まちがって?」


『どらやきくださいって言ったらさ、店員、なんて言ったと思う?』


こ「うーんと、レモンとミルクがありますが、って」


『…紅茶?』


こ「ちがう?」


『違うよ。いくついりますか、って』


こ「え、ふつうじゃん」


『うん。それで、俺の答えが』


こ「なに?」


『え…えと…ふ…み、みっちゅ…』


こ「あはは、みっちゅ、って」


『何だこの人、みたいな顔されたよ』


こ「なんでそんなにキョドってたの? 店員さんがすごい美人だったとか?」


『いや、普通のオバサンだったけど』


こ「えー、じゃあどうして?」


『俺、人見知りなんだよ』


こ「どらやきの個数聞かれただけでキョドっちゃうの?」


『イエス』


こ「あはは、それ人見知りとかじゃないよー」


『ね。本当は2個買う予定だったのに』


こ「どうして3個にしたの?」


『いや、いくついりますかって言われたらさ…3個って答えるじゃん』


こ「ん、なんでなんでー?」


『なんか同じものは3つ欲しくなるじゃない?』


こ「あー、エクストリームアタック! みたいな?」


『うん、ちょっと違うかな…』


こ「あ、わかった。せんせー、わかりましたー!」


『んーと、じゃあここをー…はい、こいし君、答えてみて』


こ「自分と妻と子供のぶん」


『違いまーす。先生未婚でーす』


こ「自分と彼女と子供のぶん」


『違いまーす。先生彼女いません。ってかその状況どうよ…』


こ「自分と彼氏のぶん」


『いや、それは可能性低いでしょ…ってか2個になってるし』


こ「えー、じゃあわかんなーい」


『だから、間違えて3個って言ったんだってば』


こ「もともとの2個って、自分のぶんと、誰のぶん?」


『来客用かな。とは言っても、ほぼ魔理沙で決まりだけど』


こ「ふーん。仲いいんだね」


『まあ、仲いいというか、食べ物目当てというか』


こ「あー。釣りか」


『違います』


こ「いっただきまーす」


『はい、めっちゃ唐突ー』


こ「ん、おいし」


『このマイペース大魔王め』


こ「つぶあんだよ?」


『知ってます。ってか訊いてない』


こ「おいしいね」


『満面の笑みで言われても…』


こ「とにかく、おいしいの」


『まあ、おいしいならいっか。今お茶持ってくるね』


こ「ありがとー。お兄ちゃんイケメンー」


『はいはい』


こ「もぐもぐ」


『………』


こ「もぐもぐ」


『はい、お茶』


こ「もぐもぐ」


『ここ置いとくよ』


こ「ありがと」


『よっこいしょ、と』


こ「お兄ちゃんはうちに遊びにこないの?」


『え、ああ、最近行ってないっけ』


こ「うん、たまには遊びに来なよ」


『そうだね。じゃあ今度おじゃまさせてもらおうかな』


こ「うん。そうしてくれたら古明地も喜びます」


『うん、まあ、よくわかんないけど』


こ「ふふ。本当にわかんないんだろうね」


『え?』


こ「ううん。どらやきとお茶、ごちそうさま」


『あ、うん』


こ「さて、私はお邪魔しないうちに帰るかな」


『ん、お邪魔?』


こ「べつに私はどっちの味方でもないし。誰がどらやきを食べようと構わないの」


『え…どういうこと?』


こ「貴方は気づいてないけど、この物語は貴方が主人公」


『…え…?』


こ「ただ、私がひとつだけ言えるのは」


『…?』


こ「貴方はきっと、私のお兄ちゃんにはならない」


『…ん…?』


こ「ふふふ。なんでもないよ。お兄ちゃんは、今はまだ知らないほうがいい」


『………?』


こ「とにかく、そろそろ帰るね」


『あ…うん…気をつけて』


こ「うん。ばいばーい」


『うん、じゃあねー』


こ「あ、最後にひとこと」


『…ん、なに?』


こ「えーっとねー」


『…うん』





こ「ズボンのチャックは閉めた方がいいよ」





『…ぅゎぉ…』


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