君を乗せてラララ二人ならきっとどこにだって手が届くから
『シュークリームです。どうぞ』
幽「あら、ありがとう」
『突然来るなんて、どうしたんですか?』
幽「特に用事はないわ。ちょっと来てみただけ」
『そうでしたか。でも、うちには、あまり面白いものはありませんよ』
幽「いいのよ。喋りに来ただけだから」
『ああ、そうですか。俺でいいならいいんですけど』
幽「で、最近どう?」
『おかげ様で無事に過ごせてます』
幽「別に私のおかげじゃないでしょ」
『まぁそれは。幽香さんはどうですか』
幽「植物の世話ばっかりしてるわ」
『なるほど。結構忙しいんですか?』
幽「ええ。なかなか大変よ」
『働き過ぎないように、気をつけてくださいね』
幽「まあ、世話しないわけにもいかないし」
『それはそうですけど…』
幽「今度手伝ってもらおうかしら」
『ええ、はい。喜んで』
幽「あ、そういえば、シュークリーム頂くわね」
『どうぞどうぞ』
はむ
もぐもぐ
『あ、飲み物がありませんでしたね。今持ってきます』
幽「悪いわね」
とたとた
がさがさ
『…お、ティーバッグが切れてる』
がさがさ
『買い置きしてあったはずだけど…』
がさがさ
『どこ置いたっけ…』
がさ…
『あ、上の棚か…台が無いと届かないんだよな…』
幽「どうかしたの?」
『いえ、ティーバッグがあそこにあるので』
幽「届かないの?」
『…なにぶん背が低いもので』
幽「まあ、確かにクソチビよね」
『…言い過ぎですよ』
幽「婉曲的に言ったつもりだけど」
『それで!?』
幽「ええ」
『というか、ティーバッグのお茶でよかったですか?』
幽「それは構わないけど」
『ちょっと待ってくださいね』
幽「どこ行くのよ」
『今、台を持ってきますから』
幽「あら、その必要はないわよ」
『…え? どうしてですか?』
幽「私が取ってあげる」
『届きますか?』
幽「そのままでは届かないわよ」
『やっぱり台いりますか?』
幽「いいえ」
『え? じゃあどうするんですか?』
幽「あなたが届かせればいいのよ」
『…届かす?』
幽「届かす」
『「高い高い」をすればいいんですか?』
幽「違うわよ。大体、持てると思ってるの?」
『いえ、あんまり女の子にはモテないですね』
ゴッ
『っ!』
幽「くだらないボケはいいから、早く」
『早く、何ですか?』
幽「ん」
ぴっ
『え、床を指差して…台を持って来いってことですか?』
幽「ん」
ぴっ
『いや、俺を指差されても…』
幽「ん」
ぴっ
『…床?』
幽「ん」
ぴっ
『…俺?』
幽「ん」
ぴっ
『もしかして、俺に台になれと?』
幽「あら、なってくれるの?」
『…急に笑顔になりましたね』
幽「そんなことないわ。ささっ、急いで」
『…むぅ…』
とすっ
『…これでいいでしょうか』
幽「上出来よ」
『それはどうも』
幽「乗るわよー」
『優しくしてくださいね』
どぐむっ
『かっはぁっ!?』
幽「うん、届きそうだわ」
『…っ…ぐ…』
幽「どうかした?」
『…あ…足…思い切り…乗せましたね…』
幽「えっと、この棚ね」
『…内臓にひびいた…』
幽「お、あったわ」
ぎゅむっ
『ぐっ…!』
幽「届くかしら」
ぎゅむっぎゅむっ
『…背伸びのふりして…爪先をえぐり込ませないでください…』
幽「うーん」
ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ
『いででででで…』
幽「あとちょっと」
どすどす
『…ははは跳ねないでください…ああ危ないですよ…』
どっすどっすどっすどっす
『あばばばばば…』
幽「っふぅ。下りるわね」
とた
『…なんとか助かったぜ…』
幽「お疲れ様」
『…あれ、ティーバッグは…』
幽「取れなかった」
『な、なんだってー!?』
幽「まあ、仕方ないわよね」
『…俺の苦痛は何だったんだ…』
幽「どうだった?」
『主に、痛かったです』
幽「上見た?」
『え、見てませんけど?』
幽「惜しかったわね。せっかくパンツ見れたのに」
『…それどころじゃありませんでしたよ』
幽「ちょっと乗っただけじゃない」
『脊椎動物の象徴が粉砕しそうでした』
幽「まあいいわ。今日は帰るわね」
『え!? もう帰るんですか?』
幽「何よ、満足できなかったの?」
『…いや、そういう意味ではなく』
幽「シュークリームありがとう。じゃ、ごきげんよう」
『…え…あ、はい。さようなら』
ガチャ
バタン
『…何しに来たんだ…』
『………』
『…幽香さんの足…』
『…あったかかっ(以下略)』
………
文「ふふふ…見ぃちゃったー見ぃちゃったー♪」




