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もっと東方寝巻巻。  作者: もっぷす
第2回
45/173

甘いと思う

遅れましたが、バレンタイン回です。

どうやら珍しいお客さんが訪れたようですね。

『いやあ、分かっちゃいるけど、期待しちゃう自分がいたりするよね。まあ、義理でも十二分に嬉しいんだけどね。普通の義理チョコならね。あーあ、もっと全面的にさりげなくアピールしとくべきだったかなー。いや、関係ないか。無理か。無理だよね。身の程をわきまえなきゃね。自意識過剰はよくないもんね。うん、平気。平気だもん…』



ピンポーン



『…また冷やかしかな…』



ガチャ



『………』


ア「………」


『…え…アリス…?』


ア「なによ。私が来たらなんかマズイわけ?」


『いや、まずくはないけどさ』


ア「まずくはないけど、なに?」


『いや、別に…それで、今日はどうしたの?』


ア「どうしたのって…別に…」


『別に?』


ア「…あ、余ったから、ハイ」



カサ



『え…』


ア「…なによ…受け取りなさいよ…」


『………』


ア「………」


『ななななななななななななななななななななななななな…』


ア「ちょっと、何バグってるのよ」


『こ…これは時限爆弾…?』


ア「違うわよ。何、いらないの?」


『いいいいや、そういうわけじゃあれだけど…』


ア「わかってると思うけど、義理だからね。ぎ・り!」


『わ…わかってるけど…』


ア「じゃあその腑に落ちない顔はどういうことよ」


『現実を受け入れられない…』


ア「はあん? 私じゃ不満なわけ?」


『ち、ちがくって…その…あう…』


ア「赤面すんじゃないわよ! 義理だって言ってるでしょ!」


『わ、わかってるけど…』


ア「袋にも義理って書いてあるでしょ!」


『うん、油性ペンででかでかと「義理!!」って書いてあるけど…』


ア「じゃあいいでしょ。変な誤解しないでよね」


『でもこんなきれいにラッピングしてあるし…』


ア「雑でいいかと思ったけど、プライドが許さなかったのよ」


『むむむ…』


ア「わかったでしょ。はい、もうこの話はおしまい。じゃ、上がらせてもらうわね」


『え、ええ、上がってくの?』


ア「何よ、誰か来てるの?」


『ききき来てないけど…』


ア「ふっ。聞くまでもなかったわね」


『う、うん』


ア「んじゃ、おじゃまします」


『あ、はい』



すたすた


すたすた



ア「ずいぶん片付いてるわね」


『あ、うん、この前かたしたからね』


ア「ふーん」


『えと、お茶でも持って来るね』


ア「ああ、うん、よろしく」



すたすた



『…ここここれはどういうことだ…すごい死角から刺客が来たぞ…まさかのアリス…あんな「義理!!」とか書かれると逆に何か…包装も丁寧だったし…いっつもつっけんどんなのにどうして…もしやツンデレ…ってか上がり込むとか意味深だよね。え、何、もしかして本当に食べてほしいのはチョコじゃなくて…とか…あ、やべ、これコーンポタージュの素だった…まあいいや…』



すたすた



『はい、おまちどうさま』


ア「何これ、コーンポタージュじゃない」


『まあ、うん、温まるよ』


ア「…お茶って言わなかった?」


『いやでも、おいしいって』


ア「…まあいいけど」



ずずっ



ア「うん。コーンポタージュだわ」


『おいしいかい?』


ア「…何よ、その気持ち悪いほほえみは?」


『いやあ、何でもないさ』


ア「はぁ…」


『ふぅ…』


ア「この家は静かね」


『まあ、俺しかいないからね』


ア「あんたがいなければもっと静かなのに」


『…出てけってかい』


ア「端的に言うとそうね」


『あはは、いやいやきびしいですなぁ』


ア「はぁ、でもそっか。あんたしかいないのか」


『うん』


ア「寂しくはないの?」


『え?』


ア「ひとりぼっちで、寂しくはないの?」


『えっと…そんなに寂しくないかな』


ア「ふーん」


『うん。遊びに来てくれる人もいるし』


ア「そっか。そうよね」


『それが、どうかした?』


ア「いや、別に」


『そう…』


ア「うん」


『………』


ア「………」


『………』


ア「ところで、他に誰かからもらったの?」


『え、何が?』


ア「チョコレートよ、チョコレート」


『あ、ああ、いや、まあ、うん、もらったといえば、うん…』


ア「えっ!?」


『えっ』


ア「嘘でしょ?」


『いや、嘘でしょって…』


ア「え、誰、誰に?」


『いやあ別にそんな…』


ア「誰、誰なのよ、答えなさいよ」


『ちょっ、そんな、別に義理だし…』


ア「いいから答えなさいよっ」



ぐっ



『ぎゃあ、シャツ掴まないで…首が絞まる』


ア「誰からもらったか言いなさいっ!」



ぐいぐいぐい



『わ、わかったから…』


ア「誰よ」


『慧音と妹紅と(衣玖さん)と』


ア「カッコって何よ…」


『橋姫、無意識、正体不明ぐらいかな』


ア「…終わり?」


『あと、命蓮寺の方からも何人か来てほしい』


ア「いや、あんたの願望はいいから」


『あー、じゃあ以上ですね』


ア「ふぅ。よかった…」


『え?』


ア「あ、いや、別に」


『そう?』


ア「うん。っていうか、あんたのくせにもらいすぎじゃない?」


『まあ、たしかに身分不相応な数ではある。ほとんどが嫌がらせとはいえ』


ア「あんまり調子に乗るんじゃないわよ」


『の、乗らないよ。睨まないでよ』


ア「どうだか」


『むぅ…』


ア「………」


『………』


ア「………」


『…ち、ちょっと自分のお茶淹れてくる』


ア「あ、うん…てか勝手にやりなさいよ」


『いやまあ、そうなんだけどさ…』



すたすた


カチャリ



『…今度は何だ、ってか他の人からチョコをもらったかって、あんなにムキになって聞くか普通。いやまさか…まさかのジェラシー? でもそのあとの、よかったって何だ。え、優越? そいつらになら勝てるみたいな? 私のほうが仲いいもん! みたいな? で、最後の調子に乗るなってのは何だ。他の女になびくなみたいな? 浮気するんじゃないわよみたいな? ってことは何? アリス的には俺もうアリスのものなの? お、お、女の子ってこんなに大胆になっちゃうの!? ドキドキが止まらない!!』



すたすた



『やっぱ日本人はお茶だよね』


ア「ちょっと、なんであんたはお茶なのよ」


『日本人だから』


ア「人にはコーンポタージュ入れたくせに。あんたもコーンポタージュ飲みなさいよ」


『いや、あったまるかなって思ってさ』


ア「まあ、あったまりはしたけど…って、お茶でもあったまるわよ」


『ほら、いろいろと考慮した結果そうなったんだよ、たぶん』


ア「たぶんって何よ」


『いや、特に意味はないけど…』


ア「ふぅん」


『………』


ア「………」


『………』


ア「………」


『…そ、それにしても今日はあれだね。いい天気だね』


ア「そうでもないでしょ」


『あれ、そう?』


ア「むしろ肌寒いわよ」


『あー、だよね、うん。そう言いたかった』


ア「…は?」


『…いや、うん…』


ア「………」


『………』


ア「………」


『…お、お茶おかわりしよーっと…』


ア「あ、そ」


『…うん』



すたすた



『…なんかすごい緊張する…え、こういうとき何しゃべればいいの…全然会話が続かないんだけど…どうしよう…見つめ合うと素直におしゃべりできないよ…あ、そうだ。何かの本で読んだぞ。会話を続けるコツは、自分でべらべらしゃべるんじゃなくて、相手にしゃべらせるんだ。相手の趣味とか好きなことに自然に話題をもっていって、気持ちよく話をさせるんだったな。よし、共通の趣味として会話を展開させてみよう』



すたすた



『そーそー、聞いてよアリスー』


ア「…何よ、馴れ馴れしいわね」


『俺、最近お人形さんにハマってるんだけどー…』


ア「!!?」


『………』


ア「!?」


『…ごめん…ちょっとタイム…』



たったったっ



『…切り口間違えた…展開が…展開が違う…予想したのと違う…俺完全に変態じゃん…へー私もよー、みたいにしたかったのに…うわー…自然さを狙ったことが裏目に出た…恐いわー。会話恐いわー。難易度高すぎ。どうしよう…戻ったらなんて言おう…とりあえず誤解をとかなければ…』



たったったっ



『なーんて冗談でしたー!』


ア「   」


『いや、なんかリアクションして!』


ア「   」


『アリース、おーい、ポタージュがひげになってるよー』


ア「………」


『お、気付いた?』


ア「………」



すっ…



『いや、目を逸らさないで!』


ア「………」


『冗談だから、さっきのは!』


ア「…本当?」


『うん、ドッキリでしたー!』


ア「はぁ…心臓止まるかと思った…」


『いやーそんなに驚いてくれるとはね』


ア「…すごい嫌な汗かいた…」


『まあとにかく、この話題はおしまいで、次の話題に入ろうか』


ア「…うん」


『………』


ア「………」


『………』


ア「………」


『…何か話したいことある?』


ア「いや、別に…というかむしろ話したくない…」


『………』


ア「………」


『………』


ア「………」


『…ちょっととりあえずお茶菓子持ってくるわ』


ア「あ…そう」


『うん』



すたすた



『…話したくない…だと…やはりさっきのミスが響いているのか…いや、待てよ…よく考えてみよう…逆に…逆によ。今日のアリスはツンデレ…つまりこの言葉にも裏がある…のか…うーん…はっ…こうかな…私たちは言葉でわかりあうんじゃない。目で、そして心でわかりあうのよ。つまり以心伝心。そう、私がしたいのはお話じゃない。ただ黙ってあなたと見つめ合うだけで、すべてをわかちあいたい…そういう…ことだったりして…わかったよアリス…静かな時間を君と共有しよう』



すたすた



『おせんべでござい』


ア「うわーありがとうコーンポタージュにぴったりね!」


『…いや、ほら、意外と合うかもよ?』


ア「そういう冒険は自分でしなさい」


『あ、ちなみに今晩、両親は帰ってこないから全然大丈夫だよ』


ア「何が大丈夫なのかしら。しかも一人暮らしでしょうが」


『まあ、シンデレラみたいな思いはしなくて済むってことだよ』


ア「当然でしょ。何が悲しくて防弾ガラスの靴なんか履くのよ」


『防弾って設定ありましたかね』


ア「擦りガラスだったかしら」


『まあ、俺の言いたいことが伝わらなかったってことは分かったよ』



バリバリ



『うん、せんべいうまい。お茶によく合う』


ア「………」


『………』


ア「………」


『………』


ア「………」


『………』


ア「…なんか言いなさいよ」


『え、おしゃべりはいやなんじゃないの?』


ア「嫌だけど、黙って向かい合ってるのはもっと嫌」


『それじゃアリスの横に座ればいいんだね』


ア「…違うわよ」


『え、いやでも、さすがにアリスの上には座れないよ?』


ア「…場所の問題じゃないわよ」


『そなの?』


ア「うん」


『………』


ア「………」


『………』


ア「………」


『………』


ア「だから黙って見つめるんじゃないわよ!」


『あ、ごめん。ついうっかり』


ア「まったく。腐ったら困るからこっち見ないでよ」


『…ひどい…そんなこと幽香さんにしか言われたことないのに…』


ア「…あるんだ…」


『ある』


ア「相変わらず毎日SMプレイに興じてるわけ?」


『いや、SMじゃないし、毎日でもないよ』


ア「じゃあ何なのよ」


『いや別に、あれは単なる…』



ピーンポーン



ア「おっ…!」


『誰だろ。魔理沙かな』



すたすた


ガチャ



霊「ちゃおー」


『何その新しい挨拶』


霊「こんにちは、だとよそよそしいでしょ?」


『まあ、そうだけど』


霊「うん。ま、そんな感じ」


『うん。で、どうして魔理沙は黙ってるのさ』


魔「お前のツッコミが早すぎて挨拶のタイミングを逸したんだよ」


『あ、それは失礼し…』



ダッダッダッ…



ア「あ、魔理沙奇遇ね!!」


魔「お、アリス!?」


霊「あら、意外」


魔「ななな、何でいるんだよ?」


ア「偶然この辺を通りかかったのよ」


霊「何その明らかなウソ」


『…あれ…まさか…』


ア「それで魔理沙は私にいったい何の用?」


魔「いや、お前には用は無いんだが…」


ア「ああ、そういえばなんか今日はチョコを贈る日らしいじゃない」


魔「あ、ああ、らしいな」


霊「らしいな、って…」


『………』


ア「偶然暇で作ってみたから、あげるわね、はい、魔理沙」


魔「お、おお、ありがとう?」


霊「…待ち伏せてたわね」


『…やはり俺は利用されてたのか…』


ア「一応霊夢にも」


霊「一応って言ったな」


『………』


ア「いやー、でもほんと偶然ねー」


魔「そう…なのか?」


霊「…違うと思うけど」


『…人の気持ちを踏みにじって…』


ア「え、何か言った?」


『…アリスの…アリスの…』


ア「私が何よ」





『アリスのバカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』





ダッ!





ア「へ?」


魔「…走り去ったぜ」


霊「…何かしら」


ア「………」


魔「………」


霊「………」


ア「…どうすんの?」


魔「誰か追いかけるべきだな」


霊「誰が?」


ア「私はいやよ」


魔「アリスのせいなんじゃないのか?」


霊「そうね。叫んでたし」


ア「知らないわよ、私は」


魔「じゃあどうするんだよ」


霊「私は追いかけないわよ、面倒だし」


ア「ほっといていいでしょ」


魔「でも、それじゃあ、これはどうするんだ?」


霊「そうね。せっかく持って来たのに」


ア「何を?」




魔「日頃ごはんをくれるお礼に」


霊「チョコレートを。ま、私のは義理だけど、ね?」


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