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もっと東方寝巻巻。  作者: もっぷす
第2回
42/173

赤いマフラー 上

『ひゃー、寒いですなあ』



すたすた



『もっと厚着してくりゃよかった』



すたすた



『今日はいるかな』



すたすた



「いるってだれが?」



すたすた



『誰って、そりゃもちろん、こ…って、うわあ!」


ぬ「どうかした?」


『び、びっくりした…』


ぬ「あんたビビりすぎ。独り言に割り込んだだけじゃん」


『そ、そうだけどさ…』


ぬ「それともなに? 大妖怪のぬえ様にお声を掛けていただいて恐縮ですってわけ?」


『それは無い』


ぬ「ちょっと裏まで顔貸そうか」


『あ、ちょ、そのフォークみたいの突きつけないで』


ぬ「フォークじゃないやい」


『みたいの、フォークみたいの』


ぬ「で、こんなところで何エロいこと考えてんの?」


『いや、エロいことは考えてないよ』


ぬ「いや、エロいサルみたいな顔してたね」


『猿の顔はぬえの方じゃないの?』


ぬ「あん?」


『まあ、とにかく俺は何もエロいことは考えてないの』


ぬ「じゃあ何してんのさ」


『いやそれは…別に何も…』


ぬ「うわっ、あやしー」


『怪しくないよ。散歩だよ散歩』


ぬ「散歩? なおさらあやしー」


『何でさ』


ぬ「ジイさんじゃないんだから散歩なんかするかっつーの」


『するよ。散歩ナメてんの?』


ぬ「てかあんたの家、この辺じゃないじゃん。なんで寺周辺まで来てんのさ」


『散歩だからだよ。自宅の周りだけ歩いてたらそれは巡回っていうんだ』


ぬ「ふうん。そうなんだ」


『うん、そうだよ』


ぬ「まあ、あんたがバレてないつもりなら言っておくけどさ」


『なに?』


ぬ「私知ってるからね。あんたが小傘のこと付け回してるって」


『!?』


ぬ「いやー、キモーい。ストーカー? ストーカーなの?」


『ちち違うよ! たまたまお寺に行く機会が多くて、ついでにお墓にも寄ってるだけ!』


ぬ「っていうか、あんた小傘のこと好きなわけ? へ~。ふ~ん」


『な、何さ、そのニヤニヤした顔は!』


ぬ「べっつにぃー」


『別に俺は好きとかそういうんじゃなくてただそのいろいろ話してて面白い妖怪だなーっていうだけだし』


ぬ「そーですかそーですか」


『何! なんか文句あんの?』


ぬ「いやあ、ありませんとも。小傘かわいいもんねぇ」


『だ、だからそういうんじゃないってば!』


ぬ「顔真っ赤にしちゃって」


『寒いからでしょ!』


ぬ「あーはいはい。そういうことにしといたげる」


『実際にそうなの!』


ぬ「んで、あの子のどこがいいわけ? 性格? 顔? 生足?」


『い、いいって何の話さ!』


ぬ「ああもう。じゃあどのへんが『面白い妖怪』なわけ?」


『そ、それは、ほら、頑張って人を驚かそうとしてるとことか?』


ぬ「はぁん、そういう健気なとこがたまんないわけだ」


『たまんないとか意味分かんないし…』


ぬ「きしし、わっかりやすー。ねえ、他には?」


『もう無いよ。それだけ』


ぬ「え、それだけ? わざわざはるばるお墓まで来るのに、ただ人を驚かすだけの妖怪に会いにきてんの?」


『いや、人を驚かすだけっていうかさ…』


ぬ「うん」


『ほら、話しやすい妖怪ってあんまいないし。妖怪のことを知るにはいいかなって』


ぬ「あーあー。そっかそっか。アカデミックな目的ってことねーはいはい、そーですかー」


『そうそう。別にそれだけだから』


ぬ「じゃあべつに妖怪のことが知れればそれでいいわけだ」


『まあ…』


ぬ「かっわいそうになー。人間のオトモダチができたって小傘喜んでたのになー」


『え…』


ぬ「そいつは妖怪の話さえ聞けたら何でもよかったわけだ。かわいそうだけど本人には言っておくかな」


『え、いや、なんでさ』


ぬ「このまま舞い上がらせっぱなしでもバカみたいじゃん。早めに誤解は解いておかないとね」


『いや、別に誤解ってわけじゃないって』


ぬ「なんで? 単なる好奇心で近づいてんでしょ?」


『い、いや、それは…』


ぬ「妖怪が物珍しいだけなんでしょ?」


『ち、違うよ』


ぬ「じゃあ何」


『だからそれは…小傘ちゃんと…まあ…仲良くというか…ただの興味とかじゃなくて…やっていけたらなぁとか…』


ぬ「つまり?」


『いや、つ、つまり…その…仲良くというか…えっと…」


ぬ「仲良くというか?」


『…その…仲良く………したいです…』


ぬ「ぬぇーいっ! そっかそっか! つまり小傘が好きなんだな!」


『…別にそこまでは言ってないけどさ…』


ぬ「ま、大丈夫、大丈夫。あいつはあんたのこと気に入ってるから」


『…ふ…ふうん…』


ぬ「あはは。にやけてるにやけてる」


『にやけてないよ』


ぬ「うれしい?」


『まあ、うまくはやっていけそうだなーって』


ぬ「いや、ぶっちゃけ言うと?」


『…まあ…悪い気はしないというか…』


ぬ「あっはははは! おっもしろいなー!」


『な、何がさ?』


ぬ「いやぁ、やっぱりこういうのは面白くてたまんないね」


『だから何が面白いの?』


ぬ「ううん、べつに。あ、さっきのだけどさ」


『さっきの? 小傘ちゃんが俺のこと嫌いじゃないってこと?』


ぬ「そうそう。一応言っとくと、異性としてって意味じゃないからね」


『まあ、なんとなくは』


ぬ「私が見る限り、たぶん男としては全く見てないね」


『…そうなんだ…』


ぬ「落ち込んだ?」


『…いや、別に』


ぬ「ま、気を落とさなくても、チャンスはあるって」


『…そうかな…』


ぬ「そうそう。なんかあったら私も協力してあげないでもないし」


『え、ほんと?』


ぬ「うわ、急に素直になったし」


『いや…これは…』


ぬ「そーんなに小傘が好きなのかぁ。すっご。もう小傘大好きじゃん」


『だから違うって!』


ぬ「よし、そんなあんたには私から助言をあげよう」


『べつにいいよ』


ぬ「ふーん知らないよ小傘に嫌われても」


『べつに嫌われるようなことは………』


ぬ「…ん、どうしたの?」


『………』


ぬ「………」


『………』


ぬ「…おーい…」


『…い…いや…べつに…』


ぬ「…だいじょうぶ?」


『うん、なんでもないんだ』


ぬ「そ、そう? まあ、とにかく私のほうが小傘のことは知ってるから」


『うん』


ぬ「小傘のタイプとかは、知っておくに越したことはないでしょ」


『まあ、仲良くやっていくためにはね』


ぬ「…あんたいいかげん好きって認めなさいよ」


『ぷいっ』


ぬ「…まあいいや。まず最初に言っておくと」


『言っておくと?』


ぬ「あんたダサすぎ」


『…辛辣な初手ですね』


ぬ「見た目からしてダサい。やる気がまったく感じられない」


『………』


ぬ「ほんとに女の子と仲良くする気あんの? そのままだとぜったい無理だから」


『…え、まず最初ってことはこんな言葉責めがまだまだ続くわけ…?」


ぬ「ほら、聞いてんの? 見てくれから何とかしなって」


『そんなこと言ったって、かっこよくないのはどうしようもならないし…』


ぬ「ならなくない」


『いまさらイケメンになれるわけでもないじゃん』


ぬ「顔はべつにいいわよ。まずは服装」


『………』


ぬ「なんなの、その試作品みたいなマフラー? 自分で作ったわけ?」


『…そうだよ試作品だよ悪い?』


ぬ「作るのはいいけどさ、それをしてカッコイイって思わせる自信あんの?」


『………』


ぬ「それと、その色もどうかと思うよ。真っ赤っていうのはちょっとねぇ」


『…自分だって真っ赤なマフラーしてるくせに…』


ぬ「私は変じゃないでしょ。あんたに赤は似合わない」


『………』


ぬ「青のほうがマシ」


『…そうかなぁ…』


ぬ「そう。このぬえ様が言うんだ。間違いない」


『…ううむ…』


ぬ「あ、そういえば、このマフラーさ」


『うん?』


ぬ「欲しい?」


『え、いや、なんで?』


ぬ「実はこれねぇ」


『うん』


ぬ「小傘からもらったやつなんだよねぇ」


『…え…』


ぬ「すごい風強かった日に、小傘んとこ行ったら、寒そうだからやるって」


『………』


ぬ「べっつに私ぐらいの妖怪になるとそんな寒さ何でもないんだけどねぇ」


『…そ…そうなんだ…』


ぬ「やさしいっていうか、ぬけてるっていうか、あの子も変な子だよなー」


『…そう…だね…』


ぬ「ん、どかした?」


『…あ…いや…べつに…』


ぬ「やっぱ気になる? 小傘がつけてたマフラーとなると」


『…うん…まあ…』


ぬ「まっ、さすがにもう小傘のにおいとかはしないと思うケド。あはは」


『…あは…あはは…』


ぬ「なんだよー、その顔は?」


『…ううん…』


ぬ「ん? 変な奴」


『…それじゃあ、そろそろ俺帰るね…』


ぬ「えっ、小傘んとこ行くんじゃないの?」


『…いや…今日は…やめとく…』


ぬ「はぁっ? なに言ってんの?」


『…じゃあ、また…』



たったったっ………



ぬ「なんだぁ? ほんとおかしなヤツ…」

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