11 向日葵の
さ「…くすん…」
『みんなさぁ、やるなら真摯な態度で聞こうか』
霊「はーい」
『…大丈夫かな…』
魔「私はちゃんと聞いてたぜ」
『まあ、割とね』
傘「私も私も」
に「私も聞いてたよ」
パ「右に同じ」
『パチェはふざけてたよね』
パ「…というか、あなたいつの間にか馴れ馴れしくなってるわね?」
『…敬う必要性を見失った』
パ「…言ってくれるわね」
魔「次いっていいか?」
『あ、いいよ』
パ「私の番よ。名誉挽回だわ」
………
パ「向日葵という花はご存知かしら」
魔「種が食べられる花だな」
『…もうちょっと女の子らしいコメントを頂きたかった』
さ「たしか、花言葉は、光輝とか憧れとか…」
傘「とか?」
さ「あなただけを見つめる…とか…です…」
魔「(//o//)」
霊「(//o//)」
に「(//o//)」
傘「(・ω・ )」
パ「(//△//)」
さ「(//〜//)」
『…何この甘い空気…』
さ「…そそそ…それで向日葵がどうかしましたか?」
パ「こ…こほん。ええ。向日葵にまつわる話をしようと思って」
霊「向日葵にまつわる話?」
パ「もともと向日葵は妖精たちの道路標識だったの」
『…やべぇ』
パ「向日葵の中に、通行止めとかが描かれていたわ」
『まじで!?』
パ「あと、上り急勾配ありとか」
さ「…妖精に勾配関係ありますか?」
パ「でも、ある時、とある数学者がそれを変えた」
傘「それはだあれ?」
パ「ピポナッチよ」
『ピポナッチ!?』
パ「ええ。芸術性に欠けるという理由でね」
霊「芸術? だって標識でしょ?」
パ「そうよ。でも彼は変えた。花柄にしたの」
さ「…花に花柄ですか」
に「でも、そんなことしたら…」
パ「ええ。事故が急増したわ」
霊「当然よ! それくらい予測出来たはずじゃない!」
『…落ち着いて。どうせ嘘話だから』
パ「予測出来たはずね」
傘「だったらどうして…」
パ「自分の美学を貫くためよ」
霊「そんなの…そんなの自分勝手過ぎる!」
パ「標識に戻せ、って苦情が殺到したわ」
魔「…あっさり戻したとは思えんな」
パ「そうね。聞く耳を持たなかったわ」
に「ひどい人だなぁ」
パ「やがて妖精たちは蜂起することにしたの」
魔「やむを得ないだろうな」
パ「人間側も受けて立つことにした。人間と妖精の戦争よ」
『………』
パ「でも、それは遅かった」
霊「…どういう意味?」
パ「妖精の数が減りすぎていたの。彼の目論見通りにね」
傘「事故のせいってこと?」
パ「ええ。だから人間側が圧倒的に有利に思われた」
魔「…引っかかる言い方だな」
パ「結果から言うわ。勝ったのは妖精よ」
に「それで標識に戻したんだね」
パ「いいえ。妖精たちは向日葵を標識にしなかった」
さ「どうしてですか?」
パ「戦争の間に、妖精だけが分かる記号体系を考案したからよ」
に「戦争が科学技術の発展に貢献してるとはよく言ったもんだね」
パ「多くの草花にその記号をあしらって標識としたの」
霊「人間にはどれが標識かすら分からないわね」
パ「ええ。妖精の数も逓増していった」
傘「それで人間は反省して、傘を大切にするようになったのね」
『…趣旨変わってるじゃん』
パ「対して、人間は敗北の悔しさを向日葵に刻みつけた」
魔「向日葵に?」
パ「向日葵の種はらせん状に配置されているわ」
霊「へぇ、知らなかった」
パ「それに沿って種を数えると、彼の考案した小隊編成の法則を見出せる」
さ「小隊編成の法則?」
パ「ええ。敗北の原因のね」
霊「…と、言うと?」
パ「小隊の構成も彼が考案したの」
傘「どんな小隊にしたの?」
パ「第一小隊から順に、数が多くなっていくようにした」
魔「初めは40人、次は50人みたいにか?」
パ「いいえ。そうではないの」
『………』
パ「1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,…」
『………』
に「う〜ん…不思議な増え方」
傘「それのどこがダメなの?」
パ「それは…」
霊「それは?」
パ「それは…」
霊「………」
魔「………」
に「………」
傘「………」
さ「………」
『………』
パ「1人では小隊とは言えない」
『…オイ、怪談はどこに行った』




