10 嵐と夜道
『…河童ってやっぱりエロいんだね』
魔「いいところだったのに」
『…聞く気満々かい』
霊「面白かったじゃない」
パ「初っ端からやってくれるわね」
傘「結局どうなったの?」
『…聞くな』
に「…他の河童に止められちゃった」
『…残念なのかよ…』
魔「とりあえず、次にいってみよう」
霊「私だわ」
魔「今度は、猥談は無しだぜ」
………
霊「あれは、ひどい嵐の、夜だった」
『…うさんくさい語り口だね』
霊「私はいつも通り、境内の掃除をしていた」
パ「嵐はどうしたのよ」
霊「…間違えた。私は…たしか…お裁縫をしてたのよ」
魔「…フィクションなんだな」
霊「………」
傘「作り話?」
霊「そうよ! 悪い!?」
『…全然悪くないから落ち着いてください』
霊「んで、上を見たら雨漏りしてたのあー怖い終わり」
に「…うわぁ…投げやり」
『…酔いが抜けてないのか?』
霊「ふーんだ」
魔「…仕方ないな、次にいこう」
さ「次は誰ですか?」
『あ、俺だ』
魔「よし、期待してるぜ」
………
『これは俺が学校で体験したことなんだけど…』
パ「学校の怪談…手堅いジャンルね」
『友達と廊下を歩いてたんだけど…』
魔「フィクションなんだな」
『…え?』
魔「お前、友達いないだろ」
『…まあ…ほら…これは…昔の話だから…』
魔「昔はいた、みたいな言い方だな」
『………』
魔「いたのか?」
『…そうだよフィクションだよ…』
さ「………」
に「………」
パ「………」
傘「…かわいそう」
『…本当はいない空想上の友達と階段を上ったんだ』
魔「ふむふむ」
『そしたら、本当はいない空想上の友達が、学校の七不思議の話をし始めて…』
霊「………」
『本当はいない空想上の友達いわく、上りと下りでは階段の段数が違うんだってさ…』
パ「………」
『それで、本当はいな…』
魔「そんなに妄想だってことを強調しなくていいからな」
『…友達と実際に数えてみたら、下りの方が一段少なかったんだ…』
さ「………」
『おかしいなって思って、何回も数えたけど、結果は同じ…』
傘「………」
『以上でーす。どってんぱらりのぷぅ』
に「…珍妙な終わらせ方だね」
魔「…こっわぁ」
パ「…ええ…これは…なかなかやるわね」
『…え?』
魔「段を数えながら何往復もしたんだぜ」
パ「ええ、信じられないわ。拷問よ、拷問」
魔「怖いな」
パ「ええ、人間のくせに見事な怪談だったわ」
『…いやいや…』
魔「にとりのも怖かったしな」
『いやあれ猥談じゃん』
パ「甲乙つけがたいわね」
『…カイダン違いだよ、とかツッコミしてよ』
魔「よし、いい流れだ。次にいこう」
『…俺の怪談怖かった?』
さ「…いえ…あまり…」
『だよね?』
霊「で、次は誰?」
さ「あ、私です」
………
さ「これはまだ私が小さかった時の話ですが…」
魔「幼女モノだな」
さ「違います」
に「…気にしないで進めていいよ」
さ「私は、外出先から家に帰るところでした」
霊「知らないおじさんに声をかけられたのです。『お嬢ちゃん、お菓子あげるからカモンウィズミー』」
さ「違います」
『…無視していいよ』
さ「すでに夜で、道には誰もいません」
パ「すると、ここぞとばかりに知らないおじさんが『カモンウィズミー』」
さ「違います」
傘「…忙しいね」
さ「私が歩いていると、後ろから足音がしてきました」
魔「ふむ」
さ「その時はあまり気にしませんでしたが、だんだん足音が大きくなっていきました」
に「………」
さ「誰かいるのかと思って振り向くと…」
傘「………」
さ「…いたんです…顔の無い人が…」
魔「…おぉ…」
霊「その人は目が無いので、民家の物置にぶつかりました」
さ「違います」
パ「私は心配して駆け寄りました『きゅぅん、大丈夫ですか?』」
さ「違います」
霊「するとその人が『ああ、なんて美しい幼女だ』」
さ「違います」
パ「『見えてねぇだろ』by私」
さ「もうやめる!」
『…うん、怒っていいと思う』




