9 河童の
『ただいま〜』
傘「おかえり〜」
『…幸せ』
さ「………」
『あ、さとりん、もう上がったんだ』
さ「結構前に」
『ピンクのパジャマか。かわいいね』
さ「それはどーも」
に「ろうそくは買えたかい?」
『んもう、ばっちし』
………
魔「上がったぜ」
『お、ろうそく買ってきたよー』
魔「お、サンキュー」
『パジャマ、似合ってるよ』
魔「前と同じだけどな」
『二回着たら似合わなくなるわけじゃないし』
魔「…そ、そうか…」
さ「怪談やるなら、さっさと始めないと朝になりますよ」
傘「丑三つ時からやるんじゃないの?」
魔「さすがにそれは遅いな」
に「おねむの時間だもんね」
霊「じゃあ、もう始める?」
パ「そうね。どうせ他にやることないんでしょ?」
魔「そうだな。では、ろうそくを」
『はいよ』
魔「よし。次は燭台」
『…へ?』
魔「へ?」
『燭台?』
魔「燭台」
『………』
魔「………」
『………』
魔「よし、床に立てよう」
『ちょっと待ってよ!』
魔「だって、立てるところ無いぜ?」
『そうだよね…』
魔「気付かなかったのか?」
『ごめん…』
魔「うーん…じゃあ、ろうそくは使えないか」
『…せっかく買ったのに…』
魔「ああ…悪いな」
『損した気は全くしないから大丈夫』
魔「それはよくわからんが…どうやって雰囲気を出すかな」
に「ランタンは?」
『ないなぁ。懐中電灯ならあるけど』
魔「じゃあ、それでいいか」
………
霊「なかなかいい感じね」
さ「そうですね。雰囲気出てます」
に「ぞくぞくするね」
パ「まあ、悪くないんじゃない」
魔「それでは、怪談を始めるぜ」
『…結構怖いな』
魔「くじで順番を決めよう」
傘「何番になるかな?」
魔「よし、みんな引いたな?」
『うん』
魔「んじゃ、確認してみてくれ」
に「あ、最初は私だ!」
魔「じゃあ先頭バッター、にとり、頼んだぜ」
に「任せて」
………
に「河童の話をするね」
魔「ふむ」
に「合羽じゃないよ?」
『…わかってるわ』
さ「それで、どんな話ですか?」
に「まず、この前…人形を…拾ったの…」
パ「人形…手堅いジャンルで来たわね」
に「その時、私は人形の恐ろしさを知らなかった…」
霊「…ごくり」
に「…人形に改造を施そうとしてしまったんだ…」
傘「きゃー!」
『いや早い早い! まだオチじゃないよ!』
傘「あれれ?」
に「…続けていい?」
霊「…うん」
に「私は技術によって動く人形を作ってみたかった」
魔「技術によらないで動く人形ならいるもんな」
に「どうやって動かすか、一日中考えてみたの」
パ「で、思いついたの?」
に「うん。仕組みについては省略するけどね」
『まあ、聞いてもわからないもんね』
に「もう夜になってたんだけど、その日じゅうに作ろうと思ってね」
霊「ふんふん」
に「そんで、人形をしまった場所に行ったんだ…」
さ「………」
に「すると…人形が…」
魔「に…人形が…?」
に「…ばらばらになっていたの」
パ「………」
魔「…ごくり…」
傘「…ひゃあ…」
霊「………」
さ「………」
『………』
に「幻かな、と思ったよ…」
『…怖い…』
に「まあ、結局は他の河童の仕業だったんだけど」
『え、ネタ明かし!?』
魔「…いいのか?」
に「だってそんな怪奇現象おかしいじゃない」
パ「それが怪談でしょ」
に「科学的見地から原因を究明しないと」
傘「かっこいいね」
霊「…怪談は?」
に「河童の仕業だと思ったのよ。私の科学的推察は見事的中」
さ「…科学的でしょうか?」
に「まあ、確率から言って、そうだと思ったよ」
『…確率?』
に「今、河童多いからね」
魔「そうなのか?」
に「年間65億くらい増えてる」
パ「…半端ないわね」
に「もう異性とみればガッと」
霊「…下ネタじゃない」
に「…やん…はずかしい…」
さ「エロエロですね」
に「尻子玉とかも抜きまくりだしね」
傘「…なんかえっちね」
に「あ、そうそう…ちょ…これ…言っていいのかな…」
魔「なんだよ?」
に「だって…ちょっ…これ…」
魔「何だよ、言えよー」
に「この前さ、私、押し倒されそうになってね」
魔「え、それでそれで?」
に「抵抗しても全然離してくれなくて…」
霊「それでそれで?」
に「すっごいまっすぐ私の目を見つめてくるの」
パ「それでそれで?」
に「熱い吐息が私の顔に当たるのね」
傘「うんうん」
に「彼が手を伸ばして…」
さ「ふむふむ」
に「ついに私の脇腹に触…」
『怪談じゃなくて、猥談じゃん!』




