節分。。。←豆
『わかってるよ。これが俺の普段の行いってことでしょ? ハイ、ハイ』
正「何一人で喋ってんだよ」
『なんでうちに集まるんですかね?』
萃「何か文句でもあるっての?」
『いやぁまだまだ寒くて熱燗の美味い季節ですねぇ笑』
レ「貴方滑稽よ」
『節分に天邪鬼と鬼と吸血鬼とが集まってる家っていいんですかね?』
萃「駄目って言うの?」
『豆散らかして喜んで、人間の奴ら馬鹿みたいでゲスよね~笑』
こ「おにいちゃん、今日は三下キャラでいくの?」
『そうだよ、こいしちゃん。久しぶりのひりつくような緊張感だわ』
こ「そっかぁ」
『こいしちゃんは鬼じゃないよね。何でここに?』
こ「私がいると鬼が増えるんだよ」
『え、この上誰か呼んだとか?』
こ「ううん、違うよ」
『じゃあ一体?』
こ「『おにいちゃん』ってね!」
\ワハハハハ!/
『次回もお楽しみに!』
萃「ふーん、あんたもとっとと終わらせて『鬼は外』したいんだ」
『いえ、そんなわけじゃ…』
こ「じゃあ、私存在意義終わったから帰るね」
『いやいや、いていいよ。いて? ぜひ』
こ「でも空気悪いし」
ピンポーン
『もう絡みある鬼はいないはず…』
ガチャ
魔「邪魔するぜ」
『いっ、よっっしぃ!』
魔「うおっ、邪気が集まってる!」
萃「あ?」
『ジャーキーって言ったんだよねはいはいあるよおつまみジャーーーキーーーね』
魔「おい、なんだこの有様は」
『分かりません助けてください』
魔「まあ、帰るわ」
『魔理沙、あのね』
魔「おまえは幻想郷で甘い幻想に浸りすぎた。たまにはこうして辛い思いもしておけ。戻れなくなるぜ」
『いや、まあ、たるんでたとは思うけど』
ガチャ、バタン
『え、マジで帰るの?』
レ「さ、茶番は終わった?」
『………』
萃「ちょっと」
『はい…』
正「ま、楽しい節分にしようぜ」
『はは…』
………
『萃香さん、鯖の缶詰めです』
萃「おう、悪いね」
『レミリアさん、オイルサーディンです』
レ「しょっぱいでしょ、これだけだと」
『合いそうな物が食パンくらいしかなくて』
レ「パスタとかは?」
『ありますけど時間かかりますよ?』
レ「面倒くさいから作らないって言うのかしら?」
萃「いや、早く呑もう。つまみなんていい」
レ「よくない。私はワインを楽しみに来たのであって、葡萄の汁を啜りに来た訳ではないの」
萃「ふん、アテがなけりゃ飲めない酒ね」
『はい、正邪ちゃん、ジャーキー』
正「何で私だけ『ちゃん』付けなんだ。ナメてんのか?」
『リスペクトしてないから』
正「ほぉ、お前やっぱり分かって、いや、全然分かってないな?」
『あっ、やば…』
正「何だ?」
『すみません、オイルサーディンは鰯でしたね』
レ「だったら何よ?」
『いえ、鰯、大丈夫ですか?』
レ「え、アレルギーとかもないし、嫌いでもないけど?」
『節分に鰯の頭飾りません? その、鬼よけに…』
レ「へぇ~」
『あっ、さては意味ねぇなあれ』
萃「とにかく始めよう。はい乾杯」
『かんぱ~い!』
正「おい、何で急に乗り気になった?」
『冷静に考えると、俺そんなに縁起とか風習とか気にしてないわ』
萃「そうだと思って来たんだ」
『なるほど…』
レ「それで突然平気になるわけ?」
『お酒を前にして萃香さんの機嫌が戻ってきたんで』
萃「へへ、悪かったね、ピリピリして」
『やっぱり節分嫌いなんですか?』
萃「そりゃ邪険にされりゃ機嫌も悪いさ。皆の災いは私が運んでるってか?」
『萃香さん…』
萃「ま、節分にかこつけて呑もうってのもあるけどね」
『そうですね。新鮮な顔ぶれで面白そうですし』
正「鬼に囲まれて面白そうとは余裕だな」
『ヤバすぎて逆に余裕出てきた』
正「逆か。せっかくだし、逆節分でもしてみないか?」
『いいね!』
正「鬼より先に賛同するなよ…」
萃「私も賛成だよ」
レ「私も。いい余興になりそうね」
正「そう全面的に肯定されると冷めてくるなぁ」
『あ、じゃあ俺が進めるけど、まず豆を…』
正「おい、勝手にやるな。私が仕切る」
萃「ほぅ…」
正「まず逆豆まきだな」
レ「手順は?」
正「まずこう、豆を用意するだろ」
『あ、ごめん、枝豆しかない!』
萃「枝豆いいね、食べよう」
『はーい。チンするんで、しばしお待ちを』
レ「で、枝豆を用意した次は?」
正「いや、枝豆って」
『正邪ちゃん枝豆苦手?』
正「そうじゃなくて、もっと炒り豆とかだろ普通」
レ「普通の豆まきするわけでもないでしょ」
正「まあいい。豆まきの反対、豆拾いをする」
『ほう』
正「まず豆を用意する」
『あ、あと三十秒待って』
正「おう」
『あと十五秒』
レ「今何時?」
『十九時半です』
正「豆はまだか?」
『あと十八秒半です』
正「いや、電子機器でそうはならないだろ」
『はい、枝豆準備完了』
萃「おお、いいね。で、これをどうすんだい」
正「床に散りばめる」
萃「食べられなくなるだろ」
レ「時間かかるじゃない」
『え、つまり豆撒くの?』
正「そん…一気に言わなくてもお前ら…」
萃「皿の上でいいだろう」
レ「四人分の小皿に載せましょ」
『取り分けて置くだけなら撒かなくていいですね』
正「ああ、そうだ。それが言いたかった」
萃「それでどうすんだい」
正「拾って食う」
『なるほどね』
レ「普通におつまみ食べてるだけじゃない?」
正「いィやァ、まだ『鬼は外の逆』があるねェ」
萃「ほう。というと?」
正「まずは『鬼は内』」
『安直だなぁ…』
レ「その次は?」
正「『福は自分で掴み取れ』」
萃「もっともだね」
レ「もっともだわ」
『天邪鬼なんですけどね』
正「これを言いながら豆を食う」
『じゃあ、レミリアさん、まずお願いします』
レ「はいよ」
『どうぞ』
レ「鬼はーうちー! 福はー自分で掴み取れェ――!」
もぐもぐ
萃「何それ」
『辛辣で草』
正「次、逆恵方巻きな」
レ「全員やんなさいよ!」
『えーっ』
レ「はやく」
『わ、わかりましたよ…』
レ「はやくはやく」
『鬼はーうちー。福は自分で掴み取れ!』
もぐもぐ
レ「は? 何言ってんの?」
『あんたもやったんだよ!』
正「次、逆恵方巻きな」
『自分もやりなよ!』
正「恥ずいから無理」
『じゃあ、やらせないでよ!』
正「で、次、逆恵方巻きな」
『そんなに逆恵方やりたいの!?』
正「まず凶方を向くだろ」
『凶方ってあんの!?』
萃「あるよ。凶方位だろ?」
正「あんの!?」
『正邪ちゃんが驚くの!?』
萃「金神っていう災いを司る神様がいる方角が凶方位って言うね」
『へぇ~、勉強になる』
萃「あとは艮、北東も凶方位だね。鬼門って言って鬼が出入りする方角何で鬼が出入りすると凶方位なんだよ」
『お、穏便に…』
レ「へぇ。じゃあその鬼門を向いて食べるのが雅ね」
正「いィやァ、まだ『食べるの逆』があるねェ」
萃「食べるの逆?」
『吐く?』
レ「汚い」
正「いィやァ」
『それ誰の真似なの?』
正「いいから!」
『はいはい』
正「『食べる』の逆、『飲む』だね」
萃「あっはは。そりゃいい。最高だね!」
レ「面白いじゃない」
『正邪ちゃん、見直…見損なったよ』
正「褒め言葉と受け取ろう」
萃「じゃ、今年の福と鬼の両方を祈念して、呑んで呑んで幸せな一年にするか!」
『はい!』
萃「かんぱーい!」
『かんぱーい!』
レ「乾杯!」
正「乾杯!」
萃「呑むぞー!」
『飲むぞー!」
正「吐くぞー!」
レ「汚い」
………
魔「邪魔するぜー」
『………』
萃「………」
正「………」
レ「………」
魔「うおっ、部屋が酒くさ…」
『………』
魔「戦場かよ…」
『………』
魔「おい、大丈夫か?」
『………』
魔「大丈夫か?」
『………』
魔「大丈夫じゃないのか?」
『………』
魔「何本飲んだんだよ…」
『………』
魔「え?」
『…頭痛い…』
魔「節分に鬼招くから痛い目見るんだろ」
『………』
魔「何したんだよ?」
『…ゃく節分…』
魔「なんて?」
『…逆節分…』
魔「は?」
『…枝豆食いながら酒飲んだ…』
魔「普通の飲み会だろそれ」




