レミィの中二病
三年半以上前に書いたネタが見つかりました。
意外といけそうなので投稿します。
レ「今夜は月が蒼いわね…」
パ「どうしたの、突然現れて」
レ「警告しに来たのよ」
パ「何よ、警告って?」
レ「ふふっ。"平和ボケ"してる様ね。貴女とも在ろう者が」
パ「…なにか事件でも起きそうなの?」
レ「暫く異変も無かったものね。無理も無いけど」
パ「何があるっていうのよ」
レ「時期が来れば解る。と言いたい所だけれど、貴女には伝えて置くわ。私に何か有ってからでは遅過ぎるから」
パ「そんなこと言うなんて珍しいわね」
レ「近々ね、此処に来るのよ、"ヤツ"が」
パ「…ヤツ?」
レ「ええ、そう。"勇者サマ"が、ね」
パ「ふうん。勇者って呼ばれてた奴なんて、これまで何人も戦ってきたじゃない」
レ「ええ。でも今回は違う。ホンモノよ」
パ「ここ最近平和だったのに誰が来るっていうのかしら。少しは楽しめそう?」
レ「楽しむどころの話じゃないわ。私と同等、或いは私より強大な力を持って居る」
パ「本当にそんなヤツいるの?」
レ「ええ。ヤツはきっと私に勝つ」
パ「レミィに勝つ…霊夢以来ね」
レ「ふっ、あはははは」
パ「…何がおかしいの?」
レ「いやいや、そんな人間もいたな、と思ったのよ」
パ「そんな人間って…」
レ「でもね、今回は全然違う」
パ「違う?」
レ「強さが、そして狡猾さも格段に違う」
パ「確かに、頭脳戦ならレミィは不利だものね」
レ「えっ」
パ「いや、聞き流してちょうだい」
レ「兎に角、私は其奴と一戦交える事に成りそうだから」
パ「でも…どうせ、結局はいつもみたいにレミィが勝つんでしょ?」
レ「其奴はね、本当に私に勝つわ。運命に拠ると、ね」
パ「そんなバケモノが来るっていうの…」
レ「ふふっ。残念ね。バケモノではないわ。紛れも無い…"人間"よ」
パ「人…間…」
レ「でも大丈夫。私が命を落とす事は無い。たとえ負けたとしてもね」
パ「まあ、吸血鬼だしね」
レ「ふふっ。そう。そうね。私は吸血鬼。さて、こんな所でお喋りをして居る場合では無いわ。"ヤツ"を迎え撃つ準備をしないとね。じゃ、またね、パチェ」
パ「ええ、死なないからってあまり無茶はしないようにね」
レ「ふっ。考えて置くよ」
スタスタ
バタン
パ「さて、今度は何のマンガに影響されたのかしら」
………
レ「パチェ、パチェ!」
パ「何よ、騒々しいわね」
レ「ちょっと調べて欲しいのよ」
パ「調べるって、何を調べればいいの?」
レ「私の腕よ。昨日から右腕が…あっ、いや、ううん、何でも無い!」
パ「気になることがあるなら調べておいたほうがいいんじゃないの?」
レ「ううん、良いの。こんな事言ったって…"崩壊の魔"の話をしても…仕方無いから」
パ「…クラッシュ・オブ・マジック?」
レ「ええ。"崩壊の魔"って言うのは、私の右腕に宿った契約」
パ「へ…へえ」
レ「昔、私は強さを願った。そしてね、"暗黒の龍"と契約してしまったの。強大な力…全てを破壊する力を得る代わりに、其の生涯私の右腕は呪われる。"力"を使えば使う程、私の右腕は"崩壊"して行くのよ」
パ「…話しても仕方ないって言いながら話すのね」
レ「でもね、私は後悔してないわ。だって、此の力のお蔭で平和を守れるから。"絶望の霊魂"に対抗出来るのは、此の力しか無いんだもの」
パ「…ふうん。ってかさっきから読み方に突っ込みどころが…」
レ「あ、あ、あ、あああ」
パ「大丈夫? 震えてるみたいだけど…」
レ「くっ、ヤツら、もうこんな所まで…」
パ「何? 誰か来るの?」
レ「"来る"んじゃない。"来ている"のよッ!」
パ「え、何、急に大きな声出さないでよ」
レ「私に危害を加えるのは構わないわ! でもね、パチェや咲夜を…私の大切な仲間を傷付けてみなさい! 絶対に、絶対に許さないからぁッ!」
パ「え、ちょ、え、何なになに? 誰と喋ってるの?」
レ「ただし、フランは別に良い!」
パ「うーわ、姉にあるまじき発言…」
レ「喰らえぇっ!」
パ「危なっ! 何、なんで拳振り回してるの?」
レ「くそっ、やはり駄目か。通常攻撃はヤツらには効かない…」
パ「ヤツらって誰。ってか、効かないって知ってるならやるな」
レ「こうなったら…パチェの前では使いたくなかったんだけど…"吸血邪封拳"を使うしか無さそうね…」
パ「えっと…大丈夫? 咲夜呼ぶ?」
レ「誇り高き天と地の精霊よ、大いなる吸血鬼の力を呼び覚まし、今戦わん。いざ、光を導き闇を滅ぼせ! 喰らえええええええっ!」
パ「………」
レ「………」
パ「………」
レ「ふうっ…ふうっ…勝っ…た…」
パ「だ…大丈夫? いろんな意味で…」
レ「ありがとう、大丈夫よ。でも今のは…かなり消耗したわ。ヤツらもそろそろ本気を見せつつ有るみたい…」
パ「ふ…ふうん」
レ「でも安心して。パチェには指一本触れさせない。私が居る限り、ね」
パ「へ、へえ。こころづよいわぁ」
レ「又何か有ったら呼んで頂戴」
パ「…どちらかというと呼んだら何かありそうだけど」
レ「あ、私の力の事は、咲夜には秘密ね。あの子、心配しちゃうだろうから。それじゃ」
スタスタ
バタン
パ「…うん、別の意味で心配すると思う」
………
レ「パチェ、大変よ!」
パ「…今度は何よ」
レ「ヤツらが…"暗黒の霊魂"が動き出したわ!」
パ「…バッドスピリッツじゃなかったっけ?」
レ「そ、それは通称。本当の正式名称は"暗黒の霊魂"だったのよ」
パ「…ふうん」
レ「禁忌の降霊の術を使って"邪神-ダイダラボッチ-"を復活させたみたい!」
パ「邪神というか巨人ね」
レ「パチェ、悪いんだけど、私に力を貸して頂戴」
パ「………」
レ「恐いのは分かる。でも、ヤツは小さな霊魂を吸収して力を溜めて行く」
パ「それと私に何の関係があるのよ」
レ「だから其の霊魂を片っ端から叩くのよ。そうすればヤツは弱いまま」
パ「私に何ができるっていうの」
レ「此の館への侵入者を退治して。部屋ごと消し飛ばして構わないわ」
パ「私は構うんだけど」
レ「解って頂戴、パチェ。大切な物を守る為、大切な物を犠牲にしなきゃならない、そんな時も有るのよ」
パ「大体どうやって退治するのよ。その霊魂っていう侵入者は通常攻撃が効かないんでしょ」
レ「そう。其れについては…パチェ、右手を貸して」
パ「は? まあ、いいけど」
レ「ふっ、はあああああああああああっっっ!」
パ「………」
レ「今、私の力の一部を授けたわ。これで貴女も霊魂を退治出来る」
パ「…ふうん」
レ「はっ、あ、あれは!」
パ「…なによ」
レ「霊魂よ! 未だ小さいけど…今の内に倒して置きましょう!」
パ「…どうぞ」
レ「パチェ、今与えた力を使ってみる良い機会だわ!」
パ「えー…」
レ「己の霊力を込めて拳を振るうのよ。さあ、早く!」
パ「…こ、こう?」
レ「もっと強く!」
パ「…っと」
レ「惜しいわ! あと少し!」
パ「…っ」
レ「ダメよ! そんなんじゃ倒せない。ハイ、もう一回!」
パ「…えいっ…」
レ「てやああっ!」
パ「!?」
レ「危なかったわ…あと少しでパチェは大ダメージを受ける所だった」
パ「…あ、そ、そうなんだ…」
レ「未だ力を上手く扱えないみたいね。無理も無いわ。私も此の強大な力を完全にコントロール出来るまで十月十日は掛かったから」
パ「何か産まれそうね…」
レ「其れにしても、此のペースで現れるとすると…私一人じゃ手に負えないわ」
パ「奇遇、私も。あなたがこのペースで現れるなら私ひとりじゃ手に負えないわ」
レ「止むを得ん。咲夜にも…協力して貰うしか無いか…」
パ「…前は秘密って言ったのに…」
レ「もう…そんな流暢な事は言ってられないのよ」
パ「そ、そうなんだ…たぶん、『悠長』の間違いだと思うけど…」
レ「咲夜、咲夜ァ!」
スッ…
咲「ここに」
パ「…改めて見ると、この主人にしてこの従者あり、ね」
レ「時間が無い。簡潔に言うわ。貴女に私の力の一部を授ける」
咲「力の一部?」
レ「ええ、邪悪を払う、聖なる力よ」
パ「…悪魔のくせに…」
レ「右手を貸しなさい」
咲「わかりました」
レ「ふあああああああああっっっ!」
咲「きゃ!?」
レ「力を授けた」
咲「ああ、なるほど…びっくりした…」
レ「侵入者の退治を手伝って欲しいの。紅魔館に入り込んだヤツを全部やっちゃって頂戴」
咲「巫女や魔法使いですか?」
レ「そんな有り触れた存在は無視して良いわ。もっと超常的な存在――霊魂よ!」
咲「………」
レ「霊魂が集まると危険なの。もし見掛けたら、出現場所ごとぶっ飛ばして良いから」
咲「…は、はぁ」
レ「くっ!? な、何ィ、私の部屋の方から反応がっ! ごめん、パチェ、咲夜、行って来る!」
タッタッタッ
バタン
咲「………」
パ「…私の方を見ないでよ」
咲「………」
………
レ「ぐおおおおおおおおおおおおっ!」
ドタドタドタ!
ガッ!
…
ドッタアアアアアァァァァァァァァン!
パ「うわああああああああああ! 本棚があああああああァァァァァッ!」
レ「くっ…けほっけほっ…今のは効いたわ…」
パ「お前ええええええっ! 今のは効いたわキリッじゃねええええええ!」
レ「落ち着いて、パチェ。此の部屋は今安全に成った。私の左肩は…ちょっとケガしちゃったけどね、へへっ…」
パ「あんたの肩なんかどうでもいいわ! 倒れた棚はどうすんのよ!」
レ「出現場所ごとでもやっつけないと駄目なの。あの棚はね…犠牲になったのよ」
パ「何が犠牲よ!? あんたの妄想の犠牲か!? 直して! 今すぐ直して!!」
レ「パチェ、良い? 今から私が言う事、よく聞いて」
パ「なによ今更! 言い訳でもする気!?」
レ「争いは争いを生む。でもね」
パ「でも何よ!」
レ「争いを止めたければ………争うしか無いのよ!!!」
パ「………」
レ「………」
パ「訳わかんないわよっ! ああもうホントマジこいつ許さんわ! 口にニンニク詰め込んで鼻から聖水流し込んでやる!!」
レ「パ、パチェ、落ち着いて。興奮状態だと霊魂の思う壺よ!」
パ「聖水鼻うがいしなさいよ!」
レ「ととととりあえず、いったん冷静に、ね?」
パ「…はぁ…はぁ…」
レ「ハイ、深呼吸ー。そして落ち着くー」
パ「はぁ…はぁ…そうね…少し落ち着くことにするわ」
レ「ほっ。そうそう。冷静さを欠いては"絶望の霊魂"に勝てないからね」
パ「冷静に撃退法を考えることにするわ」
レ「良かった。解ってくれたのね、パチェ。其れでこそ私の親友だわ」
パ「親友だと思うなら、私を巻き込まないで欲しいんだけど」
レ「…解ってる。でもね…貴女の力が必要なの…」
パ「…レミィ…」
レ「ハッ…また…こんな時にっ…」
パ「…まさか、また現れたとか言い出すんじゃないでしょうね…」
レ「大丈夫よ。此処は私独りで何とかするから」
パ「レミィ…もういいわよ。もういい」
レ「え、パチェ…どういう…事?」
パ「また例のごとく侵入者が現れた。間違いないわね?」
レ「え、ええ、その通りよ」
パ「そしてその侵入者は出現場所ごとぶっ飛ばしていいのよね?」
レ「ええ、でも今は私独りで戦うから、パチェは休んでいて」
パ「その必要はないわ」
レ「え?」
パ「咲夜ああああああ! 侵入者が現れたわ!」
咲「は、はい。ここに」
パ「侵入者よ!」
咲「はい、退治いたします」
パ「レミィの言いつけ通り、出現場所ごとぶっ飛ばしてちょうだい!」
咲「かしこまりました。その侵入者はどちらに?」
パ「それは…」
咲「それは?」
パ「レミィの頭の中よ!」
レ「えっ」




