雛と漫才してみた
『どーもー。よろしくお願いしますー』
雛「どうも。鍵山雛です。よろしくお願いします」
『いやいや、お忙しい中、来て頂いて、ありがとうございます』
雛「いえいえ。気にしないでください」
『お客さんに言ったんですよ』
雛「あら、そうでしたか。うっかり♪」
『ちょっとかわいいと思ってしまった』
雛「え、今かわいいって言いました?」
『はい。とってもキューティクルです』
雛「髪の表皮みたいに言わないでください。それを言うならキュートです」
『なるほど。自分で言いますか』
雛「あなたが間違うからですよ」
『ごめんね』
雛「いいよ」
『で、キュートな雛さん』
雛「もう言わなくていいです。恥ずかしくなってきました」
『了解であります』
雛「でも、私も本当に暇ではなかったんですよ」
『ああ、忙しい中来てくだすって』
雛「私にも役目がありますからね。本当は忙しいんです」
『そうですよね。ありがとうございます』
雛「今日だって、集めるのを中断して来てるんです」
『ああ、厄を?』
雛「いや、町内会費を」
『町内会費!?』
雛「ええ、町内会費。ご存知ありませんか?」
『いや、知ってますけど…』
雛「私の役目なんです」
『町内会長なんですか?』
雛「いいえ」
『あれ? 違うんですか?』
雛「町内会長は、町内を統轄する役目です。だから違います」
『じゃあ、何なんですか?』
雛「町内会計次長です」
『町内会計次長!?』
雛「町内会計次長です」
『町内会計長じゃなくて?』
雛「町内会計次長です」
『会計長とは違うんですか?』
雛「町内会計長は、町内の会計を管理する役目です。だから違います」
『町内会計次長は?』
雛「町内会費の集金が役目です」
『かなり役割が細分化されていますね』
雛「会費集めも大変なんですよ?」
『ああ、お金の問題は複雑になりますからね』
雛「ちゃんと払ってくれない妖怪もいて」
『人間にも妖怪にもいるんですね、そういうのは』
雛「あ、人間にもいるんですか?」
『はい。人間では大概、ババタリアンですね』
雛「そうですか。うちの町内のは、ババタリアンではありませんが」
『へえ。どんな人なんですか?』
雛「河城にとり」
『にとり!?』
雛「あっ、今、イ○ーヨーカドー想像しましたね?」
『ニ〇リじゃなくて!?』
雛「ああ、それそれ。マークが似てるから、ごっちゃになってしまいました」
『ええ、独特な感性をお持ちのようで』
雛「まあ、とにかく、にとりが払わないんですよ」
『何か理由があるんでしょうかね?』
雛「彼女が言うにはですね…」
『言うには?』
雛「ほんなもん払わなアカンのか? 皆払っとるんか?」
『おお、訛っとる』
雛「法律で決まっとるんか? 何時何分何秒誰が決めたんや?」
『…小学生か』
雛「とにかく私は払わんで。帰れ帰れ。って言うんです」
『タチ悪いですね』
雛「――って言うんです」
『あ、そこまでがセリフ!? にとりは誰の話をしてたの!?』
雛「まあ、そんな感じで払わないんですよ」
『ええ、どんな感じかさっぱり分からなかったんですけど』
雛「だから私も言ってやりましたよ」
『おお、ガツンと』
雛「ちょ…マジでお願いします…ホント…!」
『弱い!』
雛「土下座でも雨乞いでも何でもしますから!」
『雨乞いってジャンル違わない?』
雛「そしたら、彼女はこう言うんですよ」
『おお、何て言った?』
雛「うん、わかった」
『わかっちゃったのかよ!』
雛「ねえ、ホントに」
『ホントに、じゃないよ。解決できたじゃないか』
雛「でも雨乞いさせられましたよ」
『俺の雨乞いのイメージは、ヘンな踊りなんですけど』
雛「そうです。恥ずかしい格好で恥ずかしい踊りを」
『…恥ずかしい格好?』
雛「お、食いつきましたね。さすが男子」
『…う…』
雛「よっ、この男子!」
『はやし方が変ですよ』
雛「まあ、恥ずかしいって言っても、ふんどしですけどね」
『…充分だと思いますよ』
雛「それで、訳分かんない呪文を唱えるんです」
『どんな感じですか?』
雛「ザラキーマ」
『はい危ない』
雛「ザキマズン」
『はい混じってる』
雛「あぁん」
『…おお…なんかすごくよだれ出てきた…』
雛「って感じですね」
『…喘ぎ声も雨乞いの一環なの?』
雛「それを繰り返しながら、10分くらい踊るんです」
『死の呪文と喘ぎ声を繰り返して』
雛「そしたら、雨が降るそうで」
『すぐ降るの?』
雛「一ヶ月後に」
『いや、遅いな!』
雛「ねぇ。一ヶ月です」
『結構先を見通さなきゃいけない』
雛「大変ですね」
『ね。君の相手をするのもね』
雛「まあとにかく、気合いで踊りきったんです」
『で、結局、にとりは払ってくれたんですか?』
雛「ええ。話せば分かってくれたんです」
『話以上のことをしてますけどね』
雛「でもまあ、ちゃんと払ってくれましたから」
『払ってくれたんですね』
雛「体で」
『いや、体かよ! えちぃな!』
雛「もうすごかったんですよ」
『いや知らないよ!』
雛「おかげで今日起きるのも辛くて」
『しかも昨日の出来事かよ!』
雛「ねえ、大変でした」
『いやいや、大変でしたじゃなくて』
雛「でも、お金は私が肩代わりしたんですよ」
『あなたが体で払わせるからですよ』
雛「ええ、でもまだ困ったことがあって」
『なんですか?』
雛「椛がね、払ってくれないんですよ」
『お、また払わない人が』
雛「ええ。払ってくれない」
『彼女は何て言ってるんですか?』
雛「体は勘弁」
『あんた体で払わせようとしたんか!』
雛「もちろん」
『いや、もちろんて』
雛「だから私、言ってやりましたよ」
『はい、何て言ったんですか?』
雛「ザラキーマ」
『いや死んじゃうよ! いい加減にしろ!』
雛「どうもありがとうございましたー」
『ありがとうございましたー』




