「借人」と書いて「かりゅうど」と読もうぜ
魔「…あぁ…」
トタリ…
魔「…ほんとに…」
トタリ…
魔「…ふざけるなよ…」
トタリ…
魔「…山の上の…」
トタリ…
魔「…神社とか…」
トタリ…
魔「…もう…」
トタリ…
魔「…おうち…かえるぅ…」
ドサッ
魔「…ついっ…たはぁ…」
早「あら、どうしたんですか、こんなところまで?」
魔「………」
早「どうしました?」
魔「………」
早「もしもーし」
魔「…み…」
早「み?」
魔「…みず…」
早「え、あ、はい。今持って来ます」
………
早「なるほど。大変でしたね」
魔「いや、何も言ってないんだが」
早「これは失礼」
魔「で、まあお前に用事が」
早「もしかして、ケンカしちゃって仲直りの方法を私に聞きに来たんですか?」
魔「は?」
早「違うみたいですね」
魔「借り物競走だ」
早「あっ、懐かしいですね!」
魔「懐かしいのか?」
早「はい。うちに来るってことは、借り物はブルマか何かですかね」
魔「いや、全然違うが」
早「それでは何でしょう」
魔「お守りをくれ」
早「お守りですか。わかったと言いたいところですが…」
魔「ダメなのか?」
早「お守りをお守りとして使わないのでしたら」
魔「貸し借りはマズイってわけか」
早「あまりおすすめはしません」
魔「まあ、もともと買うつもりだったがな」
早「そうなんですか」
魔「ああ。経費で落ちるし」
早「経費って、それじゃあお遣いじゃないですか」
魔「たしかに」
早「彼は何のお守りを?」
魔「指定はなかったぜ」
早「やっぱりお守りとして使う気ないじゃないですか」
魔「まあ」
早「お守りは祈りを込めて初めて意味があるんですよ?」
魔「それはお守りに意味があるんじゃなくて、祈りに意味があるんじゃないのか?」
早「有り体に言えばそうです」
魔「おいおい、巫女がそんなこと言っていいのか?」
早「お守りは祈りを込める依り代のようなものですから、強い祈りを込められるなら別のものでもいいと私は思いますよ」
魔「じゃあお守りはいらないじゃないか」
早「じゃあお聞きしますけど、普段からご自分で祈りを込めている物があるんですか?」
魔「無い」
早「お守りは祈るきっかけであり、依り代であり、肌身離さず持てるライナスの安心毛布でもあるんです」
魔「ふむ。なかなか巫女っぽい話だったな」
早「祈りも願いも無く買うのは感心しません」
魔「つまり売れないってことだな?」
早「いえ、そうではありません」
魔「はい?」
早「買う理由があれば喜んでお売りします」
魔「どういうことだ?」
早「プレゼントするんですよ」
魔「プレゼントだぁ?」
早「せっかくの縁を活かさない手はありませんよ」
魔「それだと私が買わなきゃならないだろ」
早「そうです。魔理沙さんの好きをいっぱい詰め込むんです」
魔「は?」
早「お前と…ずっと一緒にいたいんだぜ…とか言って渡したらいいじゃないですか」
魔「あんまり私をナメるなよ?」
早「そろそろいい加減何かアクションを起こしましょうよ」
魔「別にそういうやつじゃないからな」
早「このままなら本当に知りませんからね?」
魔「何がだよ」
早「誰か他の人と仲良くなっても知りませんよ」
魔「心配無いな。あいつは人付き合いが下手だから」
早「借り物揃えて帰ったら、女の子とちゅっちゅしてても知りませんからね!」
魔「はは、あり得んあり得ん」
早「じゃあプレゼントはしないんですね?」
魔「いや、しないと売ってくれないんだろ?」
早「はい」
魔「まったく。こすい商売だぜ」
早「失礼ですね。魔理沙さんのために言ってるのに」
魔「ああ、はいはい」
早「とにかく、お守り持ってきますね」
魔「おう、頼んだ」
早「ここで待っててください」
すたすた
魔「まったく。余計な出費だぜ」
すたすた
早「持ってきました。どうぞ」
魔「サンキュー」
早「はい」
魔「って、このぷりぷりエビグラタンがぁッ!」
早「ぬばぼーっ。何ですか一体」
魔「このお守り、安産祈願じゃないか!」
早「いや、何でぷりぷりエビグラタンって叫んだんです?」
魔「それは食べたかったから…。とにかく他のお守りにしてくれ」
早「何のお守りがいいんですか」
魔「全然何でも構わないけど、強いて言うなら恋愛成就…」
早「えっ!」
魔「以外のやつ」
早「おもぼーっ。何でですか意味わかんないですよ」
魔「いや、お前のおもしろ叫び声も意味わからんが」
早「いやいや、恋愛成就にしましょうよJK」
魔「いや、だって…」
早「なんですか。魔理沙さんUC」
魔「あいつが知らない女とベタベタしてたら、私はその横でどんな顔して飯をたかればいいのか」
早「ぽもどろーっ。どういう思考回路してんですか!」
魔「えっ」
早「カップルの空間に割り込んでご飯たかるとか鬼でもそんな嫌がらせしませんよ」
魔「嫌がらせじゃなくてただ飯を食いたいだけなんだが」
早「というか、恋愛成就のお守り渡して結ばれればいいじゃないですか」
魔「いや、私と成就するとは限らないだろう」
早「ひげぶーっ。図々しいのか控えめなのかわかんないなこの人は!」
魔「だからとりあえず恋愛成就とかは無しで」
早「ええっ、何か論破したみたいに締められたんですけど…」
魔「他に何があるんだ?」
早「他は、健康祈願とか、ミラクルラッキースケベ祈願とか、トキメキ遅刻しそうな新学期の朝に運命の転校生と激突祈願とかですね」
魔「ああ、健康祈願とか、ミラクルラッキースケベ祈願とか、トキメキ遅刻しそうな新学期の朝に運命の転校生と激突祈願とかか」
早「はい」
魔「なるほどなるほど…」
早「どうです?」
魔「って、サクサクエビクリームコロッケがぁッ!」
早「おまめーっ。何ですか藪から棒に」
魔「そんなお守りあるわけないだろ」
早「ええ…ひどいいちゃもんですね…」
魔「きわめて自然な指摘だと思うが」
早「というか、またエビとかどんだけエビ好きなんですか」
魔「いやエビはマジ好きだけど、お前がふざけるからつい言っちゃった的な」
早「ええっ、そんな私が藪をつついて蛇を…あっ、エビを出したみたいに」
魔「そんな上手いこと言ってな…その顔なんだよ」
早「魔理沙さん、これはですね」
魔「あん?」
早「ドヤ顔です」
魔「見ればわかる」
早「で、結局何にするんです?」
魔「じゃああれだ、元気で長生きできる…ええと…」
早「ああ、あれですね」
魔「不老不死」
早「健康祈願」
魔「じゃあそれ」
早「はい、ではどうぞ」
魔「サンキュー。じゃ、帰るぜ」
早「ちょっとちょっと」
魔「何だ、急いでるんだが」
早「納めるものを納めてください」
魔「ああ、金ね。忘れようとしてたぜ」
早「駄目ですよ」
魔「ちぇ、で、いくらだ?」
早「はい、ええと、お守りはですね」
魔「うむ」
早「健康祈願なのでですね」
魔「ああ」
早「100万円です」
魔「この本格ピリ辛エビチリ野郎がぁッ!」




