「借人」と書いて「かりゅうど」と読めとな
レ「あら、咲夜」
咲「はい、お嬢様」
レ「登山帰り?」
咲「いえ、粗大ゴミの回収です」
\誰が粗大ゴミやねん!/
レ「咲夜、これもしかして…」
咲「何でしょう?」
レ「しゃべる粗大ゴミ?」
\誰がしゃべる粗大ゴミだ!/
レ「ツッコむ粗大ゴミ?」
\誰がツッコむ粗大ゴミだよ!/
レ「ツッコむドM?」
\アッタリ~ン/
\って誰がドMだ中身わかってるやん!/
咲「というわけで」
レ「うん」
咲「ゴミです」
\ちゃうわ、ゴミちゃうわ!/
レ「それにしても、出かけるときには身につけていなかった心綺楼にとりが装備しているサイズほどもある登山用のリュックサックを背負って帰って来たからどんな険しい山岳に挑んだのかと思ったけど、まさか中に人間まるまる一人が入っているとは思考の末端をかすめることさえも決して有りはしなかったわ」
咲「はい。私も最近お嬢様がお気に入りのセイロンの茶葉を仕入れるついでに香霖堂に寄ったところ、突如闖入してきたダメ男に調味料を貸せと意味不明なことを脅されて、店主をもその脅迫に利用する極悪非道な鬼畜の所業を受け入れざるを得ず、湖を渡れないとかほざきだすゴミ男のために偶然店内にあった登山用ザックを借り受けてこのボケ男を収納してはるばるここまで飛行しようとは夢にも思いませんでしたわ」
\たぶん今の誰も読んでないよ/
レ「ともあれ、貴方は調味料を借りにここに来た、と?」
\はい。というか一旦出してもらえます?/
レ「普通、調味料くらい自分で買うものではなくて?」
\今回は借り物競走なんです/
レ「借り物競走?」
\物を借りる競走です。一旦出してもらえます?/
レ「ふーん。なかなか面白そうね。で、指定が調味料だったと」
\ええ、魔理沙の発案で/
レ「でも普通はもっと近所から借りない?」
\ここからと指定が。あと出してもらえます?/
レ「指定ねぇ。咲夜と会えなかったら、どう来るつもりだったのかしら?」
\それは…困り果ててましたね/
レ「無計画極まりないわね。だいたい人間なんていうのは…」
\いい加減出してもらえませんかねぇ!/
咲「あら」
レ「どうしたの、咲夜」
咲「ザックから声が」
\今さら!? 俺だよ俺! 俺だ俺だ俺だ俺だ!/
レ「うるさい」
咲「よっこらせ」
ゴン
\ふじちゃくっ!/
咲「いつもよりうるさいわね」
レ「ほら、開けたわよ」
『あざす。ふぅ、久々の二重カギカッコだ』
咲「うわ」
『うわって何ですかね』
レ「で、何を持っていくつもり」
『もし可能ならちょっと珍しい調味料を』
咲「雑巾の絞り汁」
『咲夜さんひどい』
咲「じゃあ何の絞り汁がいいのよ」
『絞り汁一択!? でも咲夜さんの搾り汁ならちょっと以下略』
咲「ちょっと何かしら?」
『なんでもないです』
咲「とりあえずガラムマサラでいい?」
『え、そんなんあるんですか!』
咲「あるわよ。お嬢様、カレー大好きだし」
レ「オイィ! カレー大好きとか言うんじゃないわよ! ガキみたいでしょうが!」
『でも本格的なスパイスが入ってるとは、違いのわかる吸血鬼ですね』
レ「ふっ、よくぞ見抜いたわね。高貴なる吸血鬼の食へのこだわりを」
咲「まあお嬢様のには入れてないんですけど」
レ「何でよ! 入れなさいよ! てか入れてないなら言わないでよ!」
『咲夜さんは天然だなぁかっこすっとぼけ』
咲「じゃ、はい。明日までに返してよ。三倍で」
『咲夜さんって俺を困らせるプロだよね』
咲「まあ明日と三倍は冗談としても、ちゃんと返してよ?」
『了解であります』
咲「用事は済んだ?」
『はい。ありがとうございます』
咲「じゃ、早く帰って」
『え、どうやってですか?』
咲「………」
『………』
咲「………」
『………』
咲「泳げッ…!」
『…おこなの?』




