114話 戦え!爆裂の最終試練
~前回までのあらすじ~
最後の四天王バロディアスを倒し、ついに全ての宝玉を集めた主人公たち。突如襲い来る盗賊団の猛攻をかいくぐり、いよいよ蒼の台座まで辿り着く。しかし、食糧は尽き、その身も満身創痍、もはや彼らの精神は限界に達していた。果たして彼らは第六の試練を乗り越え、封印の門を開くことができるのか!
~~~~~~~~~~
『くっ、もはやこれまでか…』
レ「珍しいわね、貴方がこんなところで諦めるなんて」
『ふっ、俺ももう若くはないんでね、レミィ』
妹「昔から諦めが早かった癖に、よく言うわね」
『そうだったかい、妹紅?』
妹「最初の四天王ザンドフを倒したときのこと、忘れたの?」
『ああ、水の魔力を司るザンドフは北の洞窟の奥深くに咲くと言われているフレーミルの花から抽出された蜜を合成した武器が弱点だと知りながらもマトスカンドの町から脱走した凶暴な魔獣が洞窟入口に棲み着き始めたという情報を手に入れて諦めたときか』
影「でも貴方はただ諦めたんじゃない。機転を利かせて北の洞窟を訪れることなくザンドフを倒す武器を得ることを考え出してその計画通り最寄りの花屋でフレーミルの花を購入してスタンプカードをいっぱいにしてさらに武器屋では幸運にも五千人目の来客となることで通常価格の一割引で武器を揃えて奴に立ち向かった。そうでしょ?」
『ふっ、そんなこともあったね、影狼』
レ「で、今回は諦めなの? 別の手があるの?」
『どうかな。とりあえず、敵を撒けていればいいけど』
妹「近くにはいないと思う。気配は感じないわ」
影「ちょっと待ってて…くん…撒けている、と思うわ。少なくとも相当距離は取れている」
レ「ふん。便利な犬コロだこと」
『おいおい、レミィ。影狼がいなけりゃ今の俺たちはないぜ』
妹「本当。毒の支配者である第二の四天王ペノムピロプの狡猾にして非道な罠を見破り奴の居場所を突き止めて不意を突くことができたのはひとえに影狼の鋭敏かつ繊細な嗅覚と温かくしかも柔らかな獣耳のおかげだわ」
『そうだな。ファインアントの城下町で町長から直々に屋敷に招待されて行ったところ並べられたご馳走に大量の唐辛子が入っていることに気付き不審に思った影狼がその町長こそが四天王ペノムピロプだと見抜けたことが勝因であるのは間違いないけど獣耳に関しては全然触らせてくれないんで俺の方でフラストレーションが溜まるというかそろそろ触らせてほしいというかあとおっぱいもちょっと触りたい』
妹「レミリアは一番ご馳走に飢えていたから、影狼がいなかったら火ィ噴いてたわね」
レ「ま、まあ、あのときのことは感謝してるわ」
影「ふふ。助かっているのはお互い様。別に気にしてないわ」
妹「レミリアはもっと仲間に感謝したら?」
レ「な、なんでそんなこと」
『まあ、確かにレミィも活躍してるからね。第三の四天王アースノードから仕掛けてきた俺たちにとって圧倒的に不利な勝負でその能力を有効に活用して見事勝利を収めた上に四京メノボストロイプレンテンドルク円という莫大な旅の資金を手にすることができたのは全てレミィがいてこそだし』
影「ええ。奴が用意した試練は自らの統治する大都市ノッフのカードゲーム大会で優勝するというもので何とか決勝まで辿り着いた私達の前に立ち塞がったアースノードの禁止カードをふんだんに入れて仕組んであったデッキに運命を操る程度の能力をもって事故を起こしてボロ勝ちして泣かせるとともに優勝賞金をごっそり頂いたあのときね」
妹「それはそうだけどさ、皆が支えあったからここまで来られたんじゃない?」
レ「それは…そうね。貴方があの音速のマッハとも呼ばれる最後の四天王バロディアス戦で見せた頭脳的な策略とそれを実行に移せるだけの大胆な行動力が無ければ私たちはこの宝玉レヴォノステリエを手に入れること能わなかったのだから礼は言っておくことにするわ」
『あれは流石だったね。極限まで絞り抜かれたシャープなボディから生み出される目にも留まらぬ速さが売りのバロディアスが挑んできたカルタ勝負で正座している相手の膝の上に座ることでその視界を遮ることに加えて可動域さえも制限することに成功した妹紅の勇敢で不敵な作戦があったからこそ俺たちは勝つことができたんだ』
妹「べつにそんなの…照れるじゃん…」
影「こう考えると、皆がそれぞれの持ち味を出すことで四天王を倒せたっていうことになるのよね」
レ「ええそうね。もしかしたら私たちがこうして集ったのは、偶然じゃなくて運命だったのかもしれないわね」
『ふっ、運命かどうか、一番よく知ってるのはレミィなんじゃないかい?』
妹「たしかにそうね」
レ「ふふっ。そうね。それじゃあレミリア・スカーレットの名のもとに断言するわ。私たちがここに集ったのは決して偶然ではない。私たちが、数多の苦難を乗り越え、数多の強敵を倒し、そして最後には世界を…この汚れきった世界を救う。あの、《白の世界》を取り戻す。それは、女神の紡いだ"物語"。紛うこと無き"運命"なのよ」
影「貴方が言うのなら間違いないわね。私たちは信じるわ。貴方の言葉を。貴方の強さを。そして何より、私たちの絆を」
妹「でもさ、そうは言っても、現実は厳しいみたい。食糧がさ…無いのよ…もう」
レ「う、それは…」
影「………」
『おいおい。暗い顔しなさんなって、お嬢ちゃん方。これ、なーんだ』
妹「それは…!」
レ「ま、魔法石じゃない! 一体いつの間に…」
影「あっ、まさかスタンプカード!」
『そ。花屋でスタンプを溜めたあのカードを使ったんだ。スタンプ五個で初恋のあの子の真っ赤なマフラー味のグミ。十個で甘そうで甘くない少し甘いアセスルファムカリウム。そして三十個、すなわち全部埋めれば魔法や一部の技を使ったときに消耗するマジックポイントを大幅に回復することができるこの魔法石がもらえるってわけさ』
妹「それがあればあんたのマジックポイントを回復してその辺の石ころをやたら口の中に甘ったるさが残るおはぎに変えるあの魔法で盗賊団に襲われた三日前からまともな食べ物を口にしていない私たちのお腹を満たせるのね!」
レ「空腹さえ満たせればこっちのものよ。お腹空きすぎて全然集中できないしあと歩き疲れてふくらはぎパンパンだったからちょっと休みたくて先延ばしにしていた全部で六つあるうち最後の試練であるマインスイーパーの上級をクリアするミッションも余裕でこなせること請け合いだわ」
『ほら、早速おはぎを四人分生成したぜ』
影「この魔法も久しぶりね。ああ、こんなラップとかしないでお皿の上に無造作に置いたまま雨が降ってることに気付いて洗濯物取り込んでるうちに時間が経ち過ぎたようなえもいわれぬ固さだったわね」
妹「私も食べよ。この口に入れた瞬間にこれもしかして泥団子じゃねって思うくらいに何を入れたらこうなるのかよくわからない異様にざらざらした舌触りのおはぎがこんなに懐かしく感じるなんてね」
レ「最初は少し戸惑ったわよね。こういう白雪姫の絵本とかで魔女が手に持ってる場面が十中八九描かれているそれ見るからに美味しそうじゃねぇだろってぐらい鮮やかで毒々しい林檎並の明確な紫色をしているんだから」
『でも食べられただろ? 確かに一番初めは誰が毒味をするかで喧嘩になって口論の末に公平にじゃんけんで決めることにしたはずだけどいざやってみると負けた影狼が口に運ぶ途中で異臭がするとガチ泣きし始めて結局女の子を泣かす男って最低だよねみたいな台詞で追い詰められた俺が食べてみてクッソ不味いけど食べられるって結論に達したじゃないか』
影「さあ、お腹もふくれたことだし、盗賊団が執拗に狙ってきた一国のGDPに匹敵するレベルで高価な宝玉レヴォノステリエを眼前に迫った思ったほど青くないむしろ紺色に近い蒼の台座に嵌め込むことで横にあるデスクトップパソコンを起動して最後の試練を始めましょう」
『よし、点いたぜ。どうやらゲームはこのマス目状になっている魔法アスファルトの地面を使って行われるみたいで万が一地雷を掘り当ててしまったらギャグマンガでお馴染みの吹っ飛んだあとで上半身だけ地面にめり込んで犬神家よろしく足だけ地上に出ている刺さり方をしてしまうと思われるぜ』
妹「それじゃあ、しっかり数字を見ながらよく考えて掘っていく必要があるわね」
レ「じゃ、まずここ」
BOMB!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
~~~~~~~~~~
ジリリリリリリリリリリ………
「…すぅ…うーん…爆発オチなんてサイテー…むにゃ…」
ジリリリリリリリリリリ………
「…うぅ…うるさい…よっと…」
ジリリリ………カション
魔「はぁ…もう朝か…」
魔「って、私の夢かよッ!!」




