15 湯中りですの巻。
早「えー、それでは裏企画を始めまーす」
村「いえーい」
文「何ですか、裏企画って?」
早「ここまでは硬派を気取っちゃってる彼ですが」
輪「ゲームの女の子が好きって言ったけど」
早「じゃあ、現実の女の子に興味無さげな彼ですが、本性は不明です」
魔「いや、本性だと思うが…」
早「でもちょっと誘惑すればデレる可能性もあります」
村「ああいうのに限って彼女できたらデレデレするんだよねぇ」
輪「そうなの?」
村「たぶん」
文「知ったかなんですね」
早「というわけで、彼のだらしねぇ本性を暴いてしまう企画です」
文「これはなかなか面白そうです」
輪「これって結果によっては修羅場にならない?」
早「彼次第です」
輪「まあ、もちろんやるけど」
魔「やるのかよ…」
早「ルールは簡単。彼をデレさせれば勝ちです」
魔「どうやってやるんだ?」
早「何か枕許で甘い言葉でもささやけばどうですか」
文「これで落ちればムッツリですね」
魔「やめてやれよ…」
輪「じゃあまず誰が行く?」
早「まずは船長さんで」
村「いきなり私? 終わっちゃうじゃん」
輪「何よ、その自信は」
村「とりあえず行ってくるわ」
そろそろ…
村「ねぇ…まだ起きてる…?」
『…ん、船長どうしたの?』
村「…なんか…眠れなくって…」
『へー』
村「…その…そっち…入ってもいいかな…?」
『ダメ』
村「………」
『………』
村「ひ、一人だと眠れなくて…」
『なんで?』
村「なんか…えと…怖い?」
『あんた幽霊だろ!』
村「じゃなくて…んー…さみしい?」
『一輪さんに言えよ!』
村「いやでも…君と一緒に寝たいかな…なんて…えっと…変だよね! 急にこんなこと言うなんて!」
『うん、変』
村「………」
『おやすみ』
村「………」
てちてち…
村「無理だと思う」
早「まあ、もともと船長さんには期待してません」
村「ひどい!」
魔「まあ、頑張った方だと思うぜ」
早「次は文さん、行けそうですか?」
文「カメラをお預けします。決定的瞬間を是非」
早「任せてください!」
文「魔理沙さん、残念ですが男は皆こうなんですよ…」
魔「………」
文「では」
そろそろ
文「あの…よろしいでしょうか…」
『ん…文さん、どうかされました?』
文「…どうもこの時間はあまり眠くありませんでして…へへ…」
『烏天狗って夜行性なんですか?』
文「ふふ…当ててみてください」
『じゃあ夜行性で』
文「正解は…ひみつです」
『へー』
文「………」
『………』
文「寝付けるまで、少しお話しませんか?」
『まあ少しならいいですけど』
文「えへへ…じゃあ失礼します…」
『ちょい!』
文「なっ、なんですか?」
『俺の布団に入らないでください』
文「え…でもお話してくれるって…」
『布団に入らずにお願いします』
文「じゃあいいです」
すたすた
文「彼は男ではありませんでした」
輪「偏った結論ね」
早「えへへ、とか気色悪い笑い方するからバレたんですよ」
文「昼間、冷ややかな視線を向けすぎたかしら」
魔「何やってるんだよ…」
村「次はどうすんの?」
早「仕方ありません。最終兵器を投入します」
輪「お、ということは…」
文「すなわち、魔理…」
早「私です」
文「は?」
村「何で最終兵器?」
早「いえ、普通に一番かわいいからですが?」
村「みんな石投げろ、石」
文「何が普通に、よ」
輪「自意識過剰」
早「嫉妬はやめてください。醜いですよ!」
村「醜いのはあんたじゃい」
文「このDQNが」
輪「傲慢な娘ね」
早「とにかく行って来ます」
村「勝手にしろーい」
早「彼が私の瑞々しい肢体にかぶりついてきたら止めてください」
村「ねーよ」
文「ねーよ」
輪「ねーよ」
魔「おまえたち…」
早「ではではっ」
とてとて
早「あのぅ…」
『…何ですか』
早「かっ…体が火照って…眠れないんです…」
『湯中りじゃないですか』
早「違います。なんか…胸もドキドキして…」
『湯中りだと思いますよ』
早「違います。あの…わかりますか…心臓が…ドキドキって…」
『湯中りですね』
早「ちっがーう。もう。女の子に言わせるつもりですか?」
『湯中りってことを?』
早「違いますっ。その…今日だけでいいんです…一緒に…」
『一緒に?』
早「一緒に…寝てください!」
『え…同じタイミングってことですか?』
早「違います。同じ布団で寝るんです」
『え…早苗さんと同じ布団を購入しろってことですか?』
早「違います。私が貴方の布団で寝るんです」
『え…俺の寝床を奪うってことですか?』
早「ああもう! もういいです! バカ、バカ、バカンス!」
『…バカンス?』
すたすた
早「彼は熟女好きでした」
輪「偏った結論ね」
文「やっぱりダメだったじゃない」
村「あんなに、胸、胸って言っといてダメとか…」
早「あの人の見る目が無いんです」
文「あれだけ誘って反応無しとか女として終わってますね!」
早「はいー? 自分だって、えへへで警戒されるとか普段の性格どんだけ悪いんだって」
魔「よせよせ。醜い争いになってるぜ」
輪「そうよ。まだ私達の負けは決まってないわ」
文「へ?」
早「もう美少女は使いきりましたよ」
輪「まだ私行ってない!」
村「一輪は無理だと思うよ」
文「というか無理ですよ」
早「というかいたんですか?」
輪「まあ皆頑張ってたと思うわよ。結果は伴ってないけど」
早「何ですか、この人?」
輪「まあでも、私みたいな落ち着いた子がタイプの人もいるわけだし?」
文「あ、付き合うなら誰、の話を引きずって」
村「みんな、石投げろ、石」
輪「貴方がたみたいな、おつむ弱くて元気なのが好きなのもいるだろうけど?」
早「はい? 頭に行く養分が胸に来てるだけですぅ」
魔「いやそれバカって認めてる…」
輪「まあ、せっかくの機会だし、私のを参考にしてみたら?」
村「くっ、なんて自信だ」
文「みんな、塩撒け、塩」
早「どうせ無理に決まってます」
輪「ま、見てなさいって」
そろそろ
輪「…少し…いいかしら…」
『…一輪さん?』
輪「貴方、やっぱりすごいわね」
『何がですか?』
輪「貴方は人間なのに、妖怪とも自然に接してるでしょ」
『自然なんですかね?』
輪「ええ。まるで種族の壁を感じないくらい」
『壁なんてあるんですか?』
輪「確かに妖怪の立場は昔と変わったけど、未だに壁は厚いわ」
『まあ、妖怪のが強いですからね』
輪「強いか弱いかよりも、大切なことがあるわよ」
『え…なんですか?』
輪「ありのままでいられること。私たちにとっての、姐さんの傍みたいな」
『なるほど』
輪「そんな、妖怪にとって心地好い場所を、私は確かに、貴方に見たわ」
『たぶん、気のせいだと思いますよ』
輪「いいえ。本当に思うの。貴方は姐さんと同じ何かを持っている」
『聖さんと同じ何か…』
輪「ふふ。難しく考えないで。ただ私が言っておきたいのはひとつだけ」
『…何ですか?』
輪「貴方なら…貴方は…」
『…俺は?』
輪「貴方は姐さんと同じ何かを持っている!」
『…さっき聞きました…』
輪「…あれ?」
『………』
輪「いや…えっと…」
『………』
輪「なんというか…その…」
『………』
輪「一緒に寝ましょう!」
魔「諦めろよ!」




