9 整数番の男性の巻。
早「ちょっと男子! 魔理沙さんが泣いちゃったじゃないですか!」
村「悪いんだ悪いんだ先生に言ってやろー」
『え、俺何かしました?』
輪「乙女が悩んでるっていうのに…」
文「会話を放棄してマンガを読むとは」
『いえ、なんか、ガールズトークに混じったらダメかなと』
早「まあ、それはダメです」
文「会話に加わらず、話を振ったらすぐに反応してください」
『めっちゃ難しい!』
村「ガンバ!」
『あ、でもセーラー服の子に応援されると頑張りたくなる』
輪「ガンバ!」
『あ、一輪さんいたんですか?』
輪「………」
早「魔理沙さん、泣かないで」
魔「いや、泣いてないからな…まだ…」
『ごめんね魔理沙』
魔「なんていうか、私、おまえ、嫌いだわ」
『え゛っ』
早「もっと魔理沙さんのことを気づかわないとダメですよ」
『気づかって話から外れましたよ』
文「あ、この人一生彼女できない」
『………』
村「パジャマほめるとかさ、かわいいって言うとかさ」
『うーむ、なるほど』
早「それじゃあ早速どうぞ」
『魔理沙、かわいいよ』
魔「…なっ…」
『そのパジャマ』
魔「………」
村「あーあ」
文「あーあ」
輪「あーあ」
『えっ』
文「やっちまいましたね。見て下さい、この早苗さんのメッセ顔」
早「………」
『冷たい目をしていらっしゃる!』
早「…全てが終わりました…」
『意味深なこと呟いた!』
文「これはもう脈とかじゃなくて駄目ですね」
村「ポンコツ」
輪「使い物にならない」
早「絶対許早苗」
『え、何がですか? もしかして俺?』
魔「ああもういいや。早く晩ごはんにしようぜ」
『いやいや、さんざん食べたでしょう』
魔「じゃあお菓子」
『いや、あれでご飯足りんかったんかい』
魔「ケチ」
『ケチで結構』
魔「あーあ、ホントになんかもう帰ろっかな」
『何で!?』
魔「このあと何する?」
『とりあえず早苗さんたちはお風呂入らないんですか?』
早「入ります」
村「順番どうする?」
輪「アホな人順で」
早「それじゃあ、船長さん、どうぞ」
村「いやいや、どう考えてもお宅でしょう」
輪「じゃあ多数決であんたね」
村「えっ、なぜか一輪にも一票入れられたし!」
文「どっちも同じくらいアホだと思いますよ」
早「同じ門徒どうしですもんね」
文「いえ、アホ巫女とアホ船長の話なんですが…」
村「まあいいや。とりあえず入ってこようか」
『どうぞ』
村「よし、行こ」
『えっ』
村「大丈夫。何もしないから」
『いや、何で俺を連れてこうとすんのさ』
村「いや、大丈夫だって、怖がんなくても」
『いや、ちょっ、船幽霊だからでしょ。やだよ』
村「素潜りの練習だと思って、ね?」
『やだよ。お風呂で潜って三途の川に出るとかやだよ』
村「水の掛け合いするだけだから。えーい、やったなー、って」
『じゃあその柄杓置いてってよ、ここに』
早「その前に混浴なんて魔理沙さんが許しませんよ、ね?」
魔「あーいやーべつにかってにすれば」
早「ちょっと男子!」
『なんですか!』
早「いちゃこらするから魔理沙さんが拗ねてるじゃないですか!」
『いや、ただ単に関心が無いだけかと…』
村「いちゃこらじゃないし」
輪「純粋な悪意だものね」
村「船幽霊じゃけんね」
『俺は絶対入らぬ』
村「ぐぬぬ、仕方ない。一人で遊ぶか」
すたすた
文「やっと行きましたか」
早「さて、あとは魔理沙さんの機嫌を直さないと」
魔「べつに機嫌とか悪くないし」
『すっげぇ不機嫌!』
輪「とりあえず謝りなさい」
『え、と、ごめんね魔理沙』
魔「何が」
『え?』
魔「何について謝ってるんだよ」
『いや、なんか機嫌損ねちゃったみたいで…』
魔「なんかって何だよ」
『それは…』
魔「とりあえず謝っておけば済むっていう発想はどうなんだろうな」
『う、ごめん…』
早「あーあ、本当に怒ってるパターンですね」
文「というか、ここまでしたら気づくと思うんですが」
輪「まあ…」
『い、一輪さん』
輪「何?」
『魔理沙が何で怒ってるか、こっそり教えてください』
輪「ばっかもーん!」
『ひぇっ』
輪「自分の頭で考えよ!」
『はっ、はいーっ!』
文「情けないですね」
早「もっとしっかりしてください!」
『うう…そう言われましても…』
早「…彼はダメですね」
輪「さて、この事態をどう切り抜けるか」
文「もう無理じゃないですか?」
早「いえ、まだ王様ゲームがあります」
文「何それ」
早「はい、全員集合ーッ!」
魔「なんだよ」
早「とりあえず一人ひとつずつくじを引いてください」
輪「常備してるのね…」
文「引きました」
魔「なんだ、三って」
『…何始めるんですか?』
早「王様だーれだっ! アタシだよ!」
『くっ、やはり王様ゲームかっ…』
早「じゃあ整数番の男性が三番にキスで」
『ちょっとマテ』
早「おっと、くじを引いておいて旗色が悪くなると逃亡ですか」
『いや、だって王様ゲームするって聞いてませんし』
早「くじを引いた時点で同意したも同然です」
『男性って俺しかいないし』
早「整数番を引かなければ免れました」
『あるんですか?』
早「奇跡は起きるものやない。起こすもんや」
『あと三番魔理沙だし』
早「番号覗いてまで魔理沙さんとキスしたいんですか?」
『いやさっき魔理沙が口走ってた…』
文「いいから早くキスしてくださいよ」
『ちょ、この人たちおかしいよ!』
輪「そうね。ここはキスすべきだもの」
『そうですよね、よかっ…よくない!』
魔「………」
チラッ…チラッ…
『何なに何なのその視線!』
魔「…はーっ…」
『なんで口臭チェックしてんの!』
早「あのォ…早くしないと進まないんですケド…」
『なんかクレームが入った!』
文「…チッ…」
『舌打ちか舌鼓が入った!』
輪「舌鼓なわけがあるか」
『ツッコミが入った!』
早「ほら、するならする。さもなければキスをしてください」
『一択じゃないですか!』
文「わがままですね。じゃあフレンチとディープの二択で」
『違う、そうじゃない!』
輪「そこに接吻と口づけとを加えて四択に」
『増えてない!』
早「じゃあAとベーゼも入れて六択です」
『ゴタクを抜かすな!』
輪「こいつ…上手いぞ!」
魔「で、どうするんだよ…私は…」
村「上がったよーっ!」
輪「水を差すな!」
『船 幽 霊 だ け に !』