サブクエスト 「目覚め」
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、某狩ゲーなどにはいっさい関係ありません。
異世界漂流十六日目。
そして、再び見えた巨牛との戦いは有利な砂浜ではなく、高い木と高い木の間にある下草が生い茂る間隙のような場所で、しっかりとした地面は互いに不利にならず、零次にとっては絶好の待ち伏――残念ながら、木の上での待ち伏せに適した木が無かった――の地形で、巨牛にとっては視界の悪い森からの出合頭での事だった。
勝負は一瞬だった。
巨牛は迷う事無く、空恐ろしいほどの迫力と地響きをと共に突進して来る。
対する零次は、寸前で横に回避しながら、すれ違いながら背中の大剣を抜き放つと、甲高くも鈍い音が響く。
零次が狙ったのは首や胴ではなく、角の先端部分を、突進の勢いに逆らう事無く、むしろ加速させるように追い打ったのだった。
その一撃は存分に巨牛の脳を揺らし、一瞬だけ前後不覚に陥らせる。
「喰らえ《顎門》」
零次の厨二臭いセリフと共に、魔力(仮)を大剣の制御核に流し、魔力(仮)で構成された牙が伸びる。合言葉は「恥ずかしがらずに大声で」、らしい。繰り返し繰り返し同じ事をこなして、条件反射の域で牙を出せるようにするための工夫だ。決して現実に超常の理を操れるから厨二病では無い……よ?
閑話休題。
零次は最初の一撃で振り切った勢いを殺さず、円を描くようにさらに勢い付けた一撃を、巨牛の首目掛け振り下ろす。
流石に一撃で首を落とす事はできなかったが、甲殻を食い破り首の半ばまでめり込んだ大剣は、十分にその役目を果たしていた。
まさに、一撃必殺。(試作型)大剣の面目躍如を果たしたと言えよう。
今回の巨牛の狩猟は、容易く終わったかに見えたが、それは結局のところ結果論に過ぎない。
柿麻呂の超感覚でいち早く気付けた(右眼のチートでは障害物の多い森林中での索敵する技術が零次にない)おかげで、巨牛が突進するための助走距離を失くし速度が乗らなかったのが一つ目。
二つ目は、右眼のチートのおかげで、巨牛が脚に魔力(仮)を溜めるのが一目で分かり、戦闘の素人でも突進するタイミングも分かるのだ。そしてタイミングさえ分かれば、戦闘のど素人でもカウンターを決めるのは、比較的容易かった。
その大きく二つの要素――他は最低条件なので割愛する――が無ければ、結構な時間をかけた消耗戦になっていた可能性が高く、森の中でそれは自殺行為だった。
ゲームと違い、乱入してくるモンスターが一体とは限らないからだ。
元々この巨牛は群れる動物(はぐれた巨牛を発見したのも柿麻呂のお手柄)で、もし戦うとしても二体が限度で、三体以上となると確実に敗北していただろう。
それだけならまだマシな方で、零次が直ぐに大剣を抜いていれば今頃あたり一面に血の匂いが充満し、血の匂いによって来た肉食の何かに囲まれていた可能性が非常に高く、そうなれば非常に危ないと言わざるを得ない。
「それ以前に、何か仕留めた獲物から抜け難いんだよなぁ、この剣」
使い込むほどにますます禍々しさに磨きがかかっていく大剣に、ぼやきながら一抹の不安を感じる零次。
何しろ洗っても洗っても牙部分が段々と赤黒く染まって来て、恐る恐る右眼で見てみると、黒ずんだ靄みたいな魔力(仮)がまとわり付いていたのを確認すると、零次は真面目にどうしようかと悩んだ物だ。
怪しい装備に頼らないといけない現状では、正直前途洋洋とは言えないが、思ったよりも悪くないのでたちが悪い今日この頃だった。
苦労して巨牛を拠点まで運んでから大剣を抜き、解体するとびっくりする程血が出なかった件について、零次の感想がこれ。
「そうだ、死んで(血が)固まったんだ! そういう事にしておこう」
ちなみに、狩りの最中に零次に近寄る以外では、柿麻呂は大剣に近寄りもしないそうな。
サブクエスト「目覚め」リザルト
試作型大剣【顎門】が、○○として覚醒します。
以後、微弱な○○をまとい、○○属性を付与します。
なるべく間を空けないようにメインを上げようと思います!
でも、予定は未定です!!!