幕間 「柿麻呂観察記録」
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、某狩ゲーなどにはいっさい関係ありません。
異世界漂流三日目。
最近、柿麻呂の食事量が半端無い。
てか、ありえない量を食べる食べる。
それから、よく寝る。
食っちゃ寝と言えば、なんとうらやましいと思いきや、柿麻呂は鬼気迫る勢いで食べて、倒れこむように寝るのだ。
これも異世界に来た影響なのだろうか?
これから、気をつけて見て行こうと思う。
何しろ、この世界で唯一頼れる相棒なのだから。
異世界漂流四日目。
観察しだしてすぐに気が付いたのだが、毛の生え変わる季節でもないのに抜け毛が凄い多い。
まあ、寒い日本から暑い異世界に来たのだから、適応しようとしているのかもしれないが、それにしては早すぎな気がする……。
暑さで倒れるリスクが減る分は良いことだ。そう思う事にした。
異世界漂流七日目。
薄々は気付いていたが、柿麻呂は物凄いペースで大きくなっている。
このペースが続けば一ヶ月もかからず、大型犬と同サイズになりそうだ。
がつがつ食べる理由が分かってほっとし……ん~大丈夫かな?
無理矢理な成長? が柿麻呂にどんな影響を及ぼすか……。今後を考えれば柿麻呂が大きくなるのは良い事なのだが、急激な変化に危うさを感じて、「危険が危ないでっし」と、本当に危ない言葉なだけにぼやかして思わず呟いてしまったが、それは仕方のないことだ、と。何かに言い訳しながら今日の観察を終える。
異世界漂流十日目。
柿麻呂に変化が現れた。
名前の由来となった眉のような辺りが、眼に見える模様に変化した。
見た目だけなら大して驚きもしなかったが、変化はそれだけに止まらなかった。
その日、来る日も来る日も巨牛の肉ばかりで、いい加減飽きてきたので「鋸蟹でも食いてぇなー」と呟いたら、寝そべっていた柿麻呂が立ち上がり、こちらに向かって一回だけ吠えたのだ。
その時、なんで武具一式を装備して先導する柿麻呂に着いて行ったのか、論理的には説明付かない。ただ、あの一吠えが「見つけた」と言ってるように聞こえただけだ。そう、いつもの猪猟の時の様に。
海岸沿いに1kmほど歩いただろうか? そこまで近づけば右眼のおかげで分かった、鋸蟹が砂の中に隠れているのを。
砂の中に隠れた鋸蟹を、1km程離れた場所から察知するとか「何それ凄い」と、我知らず口から出てしまったのも仕方ない事だと思う。そう、仕方のないことなのだ。
決して、俺の右眼が霞むから妬んだわけではないのだ。ないのだ……。
その時の俺は少なからずショックを受けてたのだろう、二重の意味でのフルスイングで、砂中から出てきた鋸蟹の――硬い甲羅部分を狙わないだけの理性は残ってたので――頭を、文字通り吹き飛ばしてしまったのだ。
それでちょっと頭が冷えた。
生き残るために、柿麻呂がパワーアップするのは実に良い事じゃないかと。
それと、やっぱり鋸蟹は美味かった。
異世界漂流十五日目。
色々と検証してみたが、柿麻呂はある程度の言葉を理解しているようだ。
そんでもって、柿麻呂とは群れのリーダーとその手下ではなく、相棒として接するようにした。
勿論のこと、立場としては俺のほうが上なのだが、最初に食べる事が出来るほうが偉いと、勘違いしないようになったので、食事は一緒に食べる様になった。
これは、時間経過ですぐに失われる魔力(仮)を出来るだけ取り込んで、パワーアップを図ろうとした結果でもある。
もう一つ柿麻呂が身に付けた、遠距離でも発見する事のできる超感覚。
こいつを利用して、意思疎通を図りやすくなった利点を武器に、明日は島を探索してみようと思う。
さて、明日から忙しくなるぞ。
次回予告どおりメインクエストをアップする予定でしたが、なかなか書き終わらず、急遽幕間でお茶を濁しました。すいません。
話を掘り下げるのは良い事だと思う事にしました。
そんでもって、次はサブクエストになります。
柿麻呂パワーアップ回でした。
じゃあ次は……。