メインクエスト『甲牛獣・サピバージャの狩猟!!!』
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、某狩ゲーなどにはいっさい関係ありません。
地響きを立てて現れた巨牛は、意外な事にすぐさま零次に襲い掛から無かった。
重苦しく張り詰めた空気が、この場を支配する。
巨牛は戸惑っていた。
天敵から逃れて、ほっとしたのも束の間、見た事のない生き物が目の前に居る。
大きさは問題にならないほどの小ささだが、その体躯に似合わぬ巨大な牙が油断のならぬ相手だと、巨牛の生存本能が警鐘を鳴らしているからだ。
零次は焦っていた。
生き残る為の修練と己の油断の所為で、鎧と己の二重の意味でのガス欠寸前になってしまい、動けなくなって死ぬなんて悔やんでも悔やみきれない。
巨牛は傷を癒す為にも、すぐさま安全な場所で休息を取りたい所だが、獣のともすれば臆病と評されるほどの慎重さが、迂闊に後ろを見せるのを躊躇わせた。何しろ頼みの綱の甲殻が、一部とは言え抉られ直接肉が露出しているのだ、巨牛は不安で不安で仕方なかった。
普段なら気にも留めないほど小さいな生物に巨牛が引くか、攻めるかで迷っていた所、小さき者が声を上げ向かって来る。
零次はこちらを窺っている巨牛に、時間を稼いで鎧の魔力(仮称)の回復に努めるべきかと思案するが、却下した。この生死を分けた戦闘の緊張に、ごりごり削られる気力と体力の方が尽きそうだからだ。
ならば、主導権を握るべく、こちらから積極的に攻撃しようとしているように見える行動をとる事にする。
まずは、基本通り傷口に狙いを絞って、自分自身の鼓舞の為のと、もう一つ別の目的で、雄たけびと共に突進する。
「おオオオオおオオオオオオオオオオオオオオオ」
不意を衝かれた巨牛は、慌てて威嚇の声を張り上げ小さき者の声を掻き消す。
「ブモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
小さき者は動きを止めず、そのまま突っ込んでくる。狙いは右後ろ足の甲殻が抉られた部分。
だが、所詮小さき者。そこそこ速く動けるようだが、歩幅が狭すぎて巨牛が少し向きを変えるだけで、その努力は徒労に終わるかに見えた。
小さき者は、向きを変えられるとすぐさま逆を突いてくる。左後ろ大腿部から左臀部の甲殻部分も、火で炙られ続けて脆くなっている恐れがあり、下手をすると巨大な爪で破られるかもしれず、慌てて向きを戻す勢いのまま角で掬い上げるよう頭を振る。
渾身の攻撃が、何の手ごたえの無い事に巨牛は訝る。
視線をやれば、小さき者は何事も無かったかのように、最初の位置に戻っていた。
そして、この小さき者は一連の行動を、手を変え品を変え繰り返し繰り返し行い、巨牛はただただ苛立ちをつのらせるばかりだった。
零次は何度目かの攻撃に見せかけた突撃を繰り返す。
危険を冒す必要があれば躊躇う事無く実行に移すが、基本的に零次は石橋を叩いて渡るタイプだ。
だからこそ、過度な安全策は逆に危険だと、零次は判断した。
安全な回避に専念した所で、時間制限まであまり余裕が無い現状を打開することは、限りなく不可能に近い。だからと言って、紙一重の回避が出来るかと言えば不可能だ。
だからこそ、零次は切実に才能を欲し、その必要な才能とは一握りの天才と呼ばれるものにしか備わっていないものだ。具体的にどういったものかと言うと、迫り来る攻撃の瞬間毎に、どこまで理想を目指し、どの程度妥協すれば最善を得られるかを瞬時に閃き実行する事が出来る才能なのだ。
そしてそれは、通常なら短くない時間をかけて積み重ねた経験が物を言う技能でもあるのだ。それと、もう一つ忘れてならないのが、どれほど時間を掛けても――才能が無くて――全く物にならない事をあるのを考えてしまう零次は、振り払うように回避に専念する。
(無いものねだりしてもしょうがないが、それでも考えてしまうしまうよな……っと危ねえ、余裕がないくせに無駄な思考は命取りだな)
無駄な思考を割く余裕が出来た事に、零次は気付かなかった。いくら零次に才能がないといっても、命懸けの戦闘何一つ学ばない事はありえない。
何より、どれ程危なくなっても、決して諦めたりはしない零次の姿勢が実を結び始めた。諦めない理由の一つが某バスケ漫画の監督が言ったように、諦めたらそこで人生終了なのだから。
零次が諦めなかったからこそ気付けた利点を最大限に生かすべく、精確さを心掛けて慎重に回避を重ねていく。
利点は二つ。
普段通りに踏ん張れない砂の足場では、零次以上に影響を受ける巨牛は、移動と攻撃の速さと鋭さに欠けるのが一つ。
もう一つが、砂浜に出来る足跡から、どの程度までなら踏み込めるかを慎重に計れる事だ。これは、戦闘の才能など欠片もない零次が、どうにかして戦闘の指針を得ようと、思考を巡らし無い知恵絞り考え抜いた策だ。
(もう一歩、踏み込めるか? いや、ここはまだ危険を冒すのは早い)
零次は先程より一歩踏み込んだが、巨牛の攻撃はことごとく空を切る。まだ、一歩半程の余裕がありそうだが、慎重に間合いを計り、まだ早いと自重する。
(あ、危ねえー。くそ、こいつの方がセンスが良いってどーゆー事よ! 牛にまで負けるとか、ないわー)
零次は空気を引き裂きながら迫り来る角を、冷静(内心、牛にまで才能の面で負けて穏やかではないが)に回避しながらその時を待つ。
動けなくなる時が着実に迫り来る中、零次は跳ねる心臓の鼓動とは裏腹に、攻撃と見せかけた回避を淡々とこなし続ける。
時に、狙う順番を変えて。時に、緩急を変えて。このフェイントが失敗すれば後がない事を知りながらも……。
実は巨牛は巨牛で、体力が底を尽きかけていた。
天敵に襲われたショックで、人間で言うところのパニック状態に陥り、実に一時間にも及ぶ全力疾走を続けてここにたどり着いたのだった。
そして、慣れない砂上での戦いで、疲れないほうがどうかしている。
その疲れた体に鞭打って、生を掴むために巨牛は力を振り絞り突進しようと力を溜めるが、少し遅かったようだ。
小さき者に、出鼻を挫かれてしまった。
零次は改めて、右眼に感謝の念を抱いていた。
右眼のおかげで視界が限定される兜の中から、通常どころか第三者の視点で死角が存在せず、戦闘センス皆無の零次にも回避し続ける事が出来、魔力(仮称)の残量が一目で分かり、ぎりぎりまで小細工を仕込み続ける事が出来た。
終わりの時間が遂にやって来た。
鎧の燃料が後わずかになった瞬間、零次は開始から初めて攻撃に移る。
今まで零次は、傷口を狙えば、次に燃えている方。燃えている方を狙えば、次に傷口を狙い、愚直なまでに同じ行動パターンを繰り返していた。
同じパターンでの攻撃は、巨牛に慣れが出来、次第に攻撃が当たりそうになり始め、零次は死を覚悟したのは一度や二度では無かった。
それでも繰り返したのは、危険を冒すだけの見返りがあると信じての事だった。
巨牛は攻撃が当たりそうになってきて、体力も余裕が出来た事によっていざ攻撃に移ろうとしたところ変えられ、フェイントとしての効果がより高まる結果になった。もちろん、零次に戦闘の機微が分かるはずも無く偶然の結果だが。
一瞬、巨牛の動きが止まる。
勝利の行方の天秤が、零次に傾いた瞬間でもある。
零次は大剣で砂浜の砂を、棒立ちとなった巨牛の顔に掬い撃つ。
砂の目潰しで視界を奪われた巨牛は、悲鳴交じりの雄たけびを上げる。
零次はここを先途とばかりに、追撃の指令を出す。
「柿麻呂! Bite!!!」
己の出番は今か今かと待っていた柿麻呂が、隠れていた船の陰から矢のように飛び出して、巨牛の鼻面に噛み付く。
そこで零次が望んだ状態となり、風を巻き込みながら初めて大剣を振るう。
巨牛は、甲殻に覆われていない鼻面を齧られて、痛みで思わず反射的に仰け反ってしまった。
固いもの同士がぶつかる鈍くも甲高い音と共に、巨牛のうっすらと戻った視界は、九十度反転する。
ドンッ!
巨牛は己が地に転がったのを自覚したのも束の間、強烈な力が首にかかり無理やり顔が上を向く。
そして巨牛が最期に見たものは、ぎらつく獣の目と鋭い牙だった。
零次の狙いは途中――時間経過と共に、巨牛が天敵から逃げ切ったと判断して――から、一撃必殺に変わった。
いや、そもそも全力での攻撃は一撃しか振れない、と言ったほうが正確か……。
さんざん傷口か、燃え脆くなっているかもしれない二箇所を狙い続けたのは、全てはその為だ。
そして、零次は極度の疲労で途切れそうになる意識を必死に保ち、巨牛が痛みの反射で仰け反る瞬間、体が自然と動いた。
「柿麻呂! Back up!!!」
巨牛が突進するための前傾姿勢から、仰け反った姿勢に変わると言う事は、下がった重心が上に行ったという事だ。
足を怪我した場合、普段通りに立つか? いや、間違いなく怪我をした足をかばう。それは獣も変わりはしない。結果、怪我をした右足をかばって、左足をメインで支える=重心が左に傾く。
柿麻呂と入れ替わるように零次が巨牛の左前脚に回り込み、大剣を振りかぶり、遠心力をたっぷり乗せた峰打ちは、表面積が増えた事により風を巻き込みながら、左前脚の蹄を手前側に打ち抜くように薙ぎ払う。
結果、零次の狙い通り軸足を払われた巨牛は、成す術も無く横転してしまう。
優勢に見えるが、ガス欠寸前で一つのミスも許されない零次にも後が無い。
細心の注意を払いながら、倒れた巨牛の角を足場にし、蹴り駆け上がり飛び上がる。
零次にとって幸運な事――巨牛にとって不幸な事――に、角は側頭部から横に伸びて前、九十度近い角度で急に曲がり前方方に向かって少し上方に反って生えている。上方に反っているのは、突進時に前傾姿勢で頭が下がる為に、突き刺し易くなる為の進化の産物だろう。
そんな、生き残るための進化の果てに得た特徴が、横転した巨牛の角は絶妙なスロープとなって、残り体力が乏しい零次にとって、非常に有り難かった。
体重、装備を含めて百kgを超え、さらに、鎧の効果で脚力を強化された零次に、全力で角を蹴り抜かれた巨牛は、丸太のような首をもってしても捻らされてしまう。
零次の狙いは甲殻の弱点ともいえる部分。正確には甲殻自体の弱点ではなく、関節部まで覆えないと言う事だ。
そして、首は稼動部分であるゆえに、どうしても甲殻に隙間が出来る。零次はそこへ、首を捻らせる事でより隙間を大きくしたのだった。
「これで、終わりだーーーーーーー!!!」
大剣にありったけの魔力(仮称)流し込みながら、飛び上がった零次は無防備な巨牛の首めがけて、万感の思いをこめて振り下ろす。
飛び上がっての斬撃は、重量武器の特性を余す事無く発揮し、試作大剣の効果も相まって、肉を切り裂き、骨すら砕き切った。
そうして、見事狩猟を終えた零次は遂に力尽きたのか、首を叩き切った状態で気を失ってしまった。
どれほど時間が経っただろうか? むせ返るほどの血臭が辺り一面漂い、あまりの臭いに零次は飛び起きる。
「どうな!? 勝てたのか……」
目の前には首に大剣が食い込んだままの巨牛の死体に、零次を差し置いて食べるわけにも行かないと、涎を垂らしている柿麻呂がお座りして待っていた。
柿麻呂のそんな態度に、零次は空腹を感じる事が出来た。
「ははは。どんだけ、緊張してたんだよ俺」
何もかも始めての慣れない訓練を課し、唯でさえ疲れきった体を巨牛との戦いで酷使したのだ、自覚した途端に猛烈な空腹感を解消するために、零次は早速行動に移す。
「有り難く、頂くぜってその前にいい加減、剣を抜くか」
巨牛の首に食い込んだままになってる大剣を零次は抜き放つと、放置してた為か大剣の牙部分が血を吸って赤黒くなっている。
「洗えば落ちるかな? まあ、手入れ(道具的な意味で)は後で考えるとして、先に飯だな」
巨牛に感謝の念を抱きながら、零次は解体し始める。
ここで勘違いしてはいけないのが、これは完全に、徹頭徹尾、食べる側の自己満足に過ぎない事なのだから。ぶっちゃけ死んだものにとってどのような理由――食べる為に、身を守る為に、愉悦の為に、試し切りの為に、実験の為に、金の為に、名声の為に――で、どんなに感謝されようとも、全く無意味なのだ。
良く聞く、どんな死因――老衰でも、病死でも、バナナの皮に滑って転んでも、痴情の縺れで刺されても――でも死んだ者にとっては一緒だ、と言う話と同じ話だ。
もちろん、感謝する事は悪い事ではない。ただ、自然の対して感謝すると言う事は、自然を大切にすることに繋がる。そして、大切にするからには、節度を守り乱獲等、自然を壊す行為を慎むだろう。
こうしてみれば、実に良い事に聞こえる。だが、何にとって良い事だろうか?
自然を守る事は、長期的にそこで糧を――突然、何らかの要因で環境が変わらなければ――得られる事になる。
そう、全てが己にとって良い事だ。
全ての生ある者は、須らく利己的なのだから。
英雄的行為、献身的行為、犠牲的行為、それら全てがそうした方が本人にとって良い事だからに過ぎない。
わざわざ複雑に考えて、何事にも意味をつけようとするのは、知恵ある人の宿命なのだろうか……。
長々と語ったが、つまり何が言いたいかというと。
「食べきれねぇな。勿体無-い」
己が消費しきれない事に対する、罪悪感を軽くするための言い訳である。
やはり、零次は日本人なのだった。
物を大切にし、無駄を省こうとするのは、大多数の日本人としての習性みたいなもので、零次も例に漏れずそうだったみたいだ。
「うーむ。やはり、ここは海水から塩を作って保存食とするべきか? いや、プロがやっても肉が腐るまで出来る訳無いか……海水を煮詰めて濃い目の塩水を作って干し肉でも作るって、気温が高すぎるなぁ」
ぶつぶつ呟いているが、手を止めず解体を進める。
幸いな事に、巨牛の皮はごく普通の牛革と対して変わず、解体し難いほどではなかった。
早速、腐りやすい内臓を食べれるだけ食べようと、どんどん解体していくが、一際目を見張るものがあった。
「なんだ? 妙にこの内臓だけ(右眼で見ると)輝いてるな。もしや!? これが某カレー漫画であるように、美味い素材が輝いて見える奴か!!!」
俺にも遂に隠された才能が開花したか! 分かっててボケている零次。
命がけの戦闘を終えて、緊張が一気に緩んだのだろう。少々妙なテンションになっている。
「生きの良い内臓だから生でいけるか? ん~、寄生虫が怖いか……てか、目に見えて輝きが衰えていく……」
零次は船内にあった鍋で海水を汲み、即席で作ったかまどで火に掛ける。
やはり、寄生虫は怖いのと、味付けなしの生肉を食べるのを躊躇った為、沸騰した塩水でささっと潜らせる、つまりしゃぶしゃぶをしようとしている。
「あー、やっぱ箸が欲しいな。落ち着いたら作るかー」
沸騰した鍋から湯気が立ち上った時には、薄切りにされた輝く内臓が皿に盛られて準備は万端だった。
「そーれ、しゃーぶしゃーぶっとっ、潜らせれば出来上がりっと」
切り取った時より二割ほど輝きが減ったが、それでも鋸蟹のミソとは比べ物にならないほど|輝きを放っている《魔力(仮)に満ちている》。
本来、十分な血抜きの処理をしていない内臓などは食べれたものではないのだが、零次は口に含んだ瞬間に広がる強烈なまでの旨味と違和感に、驚くのを後回しにして一心に貪るように食べ続けた。
魔力(仮称)の塊のような内臓を、半分ほど喰らい尽くしてやっと我に返る零次。
「違和感があると思ってたら、この内臓かすかに血の臭いがする程度だ……まっ、美味いからいいか」
零次は有る程度食べたので、柿麻呂が食べれそうな分量だけ不思議な内臓を取り分け、目の前に置いてやる。
「……」
「へっへっへっへっへ」
盛んに尻尾を振りながら、それでも主の顔を窺い、許可が下りるのを今か今かと待ち続ける柿麻呂。
「さて、柿麻呂なら生でも大丈夫そうなんだが、どうしたもんかなー」
いざ、柿麻呂に与えようとした所、あれほど警戒した寄生虫等の危険をどうするか考えていなかったことに、今さら気付く。加熱処理しようにも塩水しゃぶしゃぶは(犬は発汗機能がほぼないので塩分を調節し難い動物)なので、よりまずい訳で……。
「焼くか」
とりあえず安易な解決法で乗り切る事にした零次は、さっと炒めてから十分冷まして柿麻呂に与える。
「よし!」
零次の許可が下りた途端に、猛烈な勢いで食べ始める柿麻呂。
「いや、時間かかってマジですまんかった」
あまりの食べっぷりに思わず謝る零次だが、それはそれ、これはこれとして残りの内臓の始末に取り掛かる。
「ふー、食った食った」
輝く内臓だけでもかなりの量があったにも係わらず、なぜかどんどん食が進み、痛みやすい内臓を思ったより消化できた(全体から見れば僅かな量しか消費できていない)。
仕留めたばかりの肉が温かく。そのままだとすぐに腐るのと皮とか剥ぎ難いので、食休みを終えた零次は鎧を着込み、船にあった網を巻きつけてから、同じく船にあった小船に転がして乗せ、海に向かって引き摺って行く。
入り江の入り組んだ岩場の中で、巨牛が入りそうな潮溜まりを見つけると、その中に豪快に転がして入れる。
「ちと、水温が暖かいけど、塩水のおかげで腐りにくいだろうし、ダニとかの寄生虫も始末できるし、海様々だな」
数時間後……としたかったが、零次は剥ぎ取った素材の保管場所が無い事に気付き、急遽、拠点の船内の掃除を始める羽目になった。
結果、綺麗になったが、空が白み始めた頃にやっと終えたのだった。
流石にこれから解体を始める気力が沸かずに、零次は素直に寝ることにする。むしろ、巨牛との死闘を演じて、食事を終えた後に、よくあれだけ動けるものだと、呆れを通り越して、感心してしまうだろう。
それだけ、初めて狩った巨牛に思い入れが強く、早く剥ぎ取りがしたくて掃除にも熱が入って時間があっという間に過ぎてしまったのが真相だ。
そして、翌日(すでに日が変わっているが)の正午あたりに起きた零次の一言目が、
「翌日っ! エ○ストリ○ム○下座あああ!!」
と叫んでいたそうな。
……それはそうとあれだけの巨体にしては、あまり寄生虫が浮いてこなかったのが気になるが、とりあえず剥ぎ取りの開始である。
「さてと、残りの解体と素材の剥ぎ取りを済ませようかなっと」
役に立つかどうか分からないがそれこそ、それはそれ、これはこれなのだろう。
何しろ、巨大なモンスターを討伐し、そこから剥ぎ取りなんて、モ○ハンファンとしてはたまらないシュチュエーションなのだから。
後ろ足と止めを刺した首以外には傷がないので、皮と甲殻はほぼそのまま素材として剥ぎ取れた。
特に太い骨を選り集めて「これは、大きな骨じゃー」とか、肋骨部分をそのまま残して鎧の骨組みに出来ないか妄想してみたりと、好き勝手やっている。
最後に頭骨を剥ぎ取り終了する。
「兜に加工するのも難しい程でかいなぁー」
素人の零次が素材や利用法などを気にしても、今のところ無駄でしかない。まあ、だからこそ色んな妄想が膨らむのだろう。
零次は狩り獲ったモンスターを剥ぎ取り素材を得た事を、後々非常に助かるのだが、それはまだまだ先の話だ。
メインクエスト『甲牛獣・サピバージャの狩猟』リザルト
試作型大剣【顎門】は、サピバージャの○○を喰らい、○○化の兆しを見せ始めた。
零次は巨牛の内臓を食べ大量の○○を得た事により、体力、○○、色眼と千里眼の使用時間も大幅にアップした。
柿麻呂は巨牛の内臓を食べ大量の○○を得た事により、固有の能力と相まって体が作り変わります。
剥ぎ取り素材一覧
甲牛の頭骨――甲牛の頭。角の傷が多いほど勇猛な証。
甲牛の肋骨――内臓を守る頑健な骨。工房で様々な用途に加工される。
甲牛の大骨――甲牛から獲れる骨のなかでも特に大きくて太い。工房では部位ごとでも呼び名が違うらしい。
甲牛の織毛甲――織り込まれた剛毛が、しなやかで水も通さぬフェルトと化した。防具の緩衝材としては一級品。
甲牛の皮――織毛甲の下にある牛皮。加工のしやすさからインナー素材としては割りとポピュラー。
甲牛の蹄――巨体を支え、大地を踏みしめ力強く蹴りだせる一品。
えーっと、活動報告にあるように、現実逃避してました。
遅くなりましたがなんとか投稿しました。
次こそ早く投稿できる……と良いなあ。
次回予告!
前回の次回予告が嘘予告じゃなかったのは、決してネタに困ったわけじゃない!!!
柿麻呂に異変が!?
次回「柿麻呂がいっぱい!?」乞うご期待