第45話:静かなる包囲
「浅井と朝倉が、動きを強めております」
柴田勝家の報告に、城内の空気が重くなる。
織田家を取り巻く状況は、確実に悪化していた。
神谷はその軍議の場で、広げられた地図を睨みつける。
(やはり……加賀美の策が着実に効いてきている)
史実よりも早すぎる包囲網の形成。その背後にいるのが誰か、神谷には分かっていた。
「北の守りを厚くせよ。油断すれば、一気に崩されるぞ」
信長の厳しい声が響く中、光秀や勝家が次々と策を提案していく。
そんな中、秀吉が場の空気を和ませるように口を開いた。
「いやはや、これほどに殿を恐れる者たちが多いとは……まさに我らが殿の威光ですな!」
家臣たちに笑いが漏れるが、神谷はその言葉に僅かな引っかかりを覚えた。
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軍議が終わった後、神谷は密かに勝家を呼び止めた。
「勝家様、少しお時間をいただけますか」
「なんだ、神谷」
二人きりになると、神谷は声を潜めて言った。
「……このままでは、織田家は危うい。手を打つべきです」
「ふん、わしとて分かっておる。だが、下手に動けば敵の思う壺よ」
勝家は腕を組み、神谷をじっと見つめた。
「貴様、何か策があるのか?」
神谷は頷き、未来の知識を応用した奇策を提案した。
「敵が包囲を固めきる前に、情報戦で撹乱するべきです。偽情報を流し、動きを鈍らせるんです」
勝家は目を細めた後、ニヤリと笑った。
「面白い……その役、貴様に任せる」
「承知しました」
神谷は決意を胸に、その場を後にした。
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その日の夕暮れ。
神谷は庭でお市と向き合っていた。
「……状況は、やはり良くないのですね」
お市の不安そうな声に、神谷は小さく頷いた。
「ですが、まだ手はあります。諦めるには早い」
お市はそんな神谷をじっと見つめ、ふと微笑んだ。
「神谷様は、いつも前を向いているのですね」
「立ち止まっている暇がないだけですよ」
そう言って視線を逸らす神谷に、お市はそっと歩み寄った。
「……もしもの時は、私も力になります」
「お市様……」
神谷はその言葉に胸が熱くなるのを感じた。
(この人を、絶対に守る)
そう心に誓いながら、二人はしばし夕暮れの空を見上げていた。
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一方その頃、京では加賀美が新たな指示を出していた。
「次は、内通者を使え」
「はっ」
部下が去った後、加賀美は静かに呟いた。
「神谷悠真……どこまで抗えるか、見せてもらおう」
その目は冷たく、そして確信に満ちていた。
歴史は、着実に加賀美の手の中で動いていた——。
ふん、どうにも面白くない状況じゃ。
浅井も朝倉も、まるで誰かに操られておるような動きよ。
だが、神谷が妙案を出してきた。あやつの知恵、存分に使わせてもらうとしよう。
……それにしても、秀吉の奴。相変わらず底が知れんわい。
読者殿、これからますます波乱の予感じゃ。
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次も楽しみに待っておれ!
──織田家筆頭家老・柴田勝家、かしこみ申し上げ候。




