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HAMA/Legend Dimension  作者: わらびもち
第十章 約束の決戦
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第67話 防御不能

 ーー「想像以上に強力だね。神聖力を使った身体強化っていうのは。名前はあるのかい?」


 サタンは構えずにそう尋ねてきた。神聖力を使った技にわざわざ名前をつける必要はないだろうが、なるほど。“神聖力を扱う技術”については名前を与えた方がいいのかもしれない。


 ーー「まだ完全じゃねぇんだけど……そうだな。神聖力を完璧に扱えるようになれば、その技術を“彼岸”とでも呼ぼうか。つっても使えるのはおれしかいないだろうが。」


 ーー「分からないよ?にーさんみたいなイレギュラーはいつでも発生し得るんだか……らッ!」


 ーー「いきなりはナシだろッ!!」


 サタンは話の途中で飛びかかってきた。(電流)が全身に走り、震動が身体を貫いた。痛くて重い。が、この距離は非常にいい。手を伸ばさなくても届くこの距離は。


 ーー「『月夜満ツクヨミ』!!」


 ーー「ゔッ……!?」


 おれは懐まで伸びてきたサタンの腕を掴み、彼女の体内へと炎の斬撃を流し込んだ。加えてその炎は神聖力と反応して体内で爆発し、斬撃は神経や魔力回路を通って身体中へと渡った。身体から吹き出した爆炎でさえ空気を歪ませるほどの威力を持っていた。そして当然、神聖力の操作コントロールを乱したためにおれにもそれなりの負担がかかっていた。身体の内側を防御する術などない。故に普通の生命体であれば、いや、例え不死の身体を持っていたとしても、その肉体を保つことなど不可能だ。それでもなお肉体を保っているのだとしたら、ましてや何事もなかったかのように立っていたとしたのなら、それはまさに……。


 ーー「異常者バケモノめ……。」


 ーー「ゲホッ………ゲホッ……。酷いじゃないか。一瞬でこんな威力の技を出せる時点で、にーさんだって充分に怪物バケモノでしょ……?」


 サタンは血反吐を吐き出しながら、爆煙の中を歩いて出てきた。おれはおれを普通だとは思っていないが、それを踏まえてもサタンは異常だ。効いてはいる。確実に。効いた上で決定力には欠けていた。それならもっと強い力で叩くしかない。おれは先ほどから刀に蓄えていた神聖力に魔素を少しばかり雑に混ぜた。この程度なら爆発はしない。……しないが、ギリギリの状態であるために、爆発するほどの魔素を加えればそのエネルギーは極端に増幅する。


 ーー「サタン!!」


 ーー「ん?」


 ーー「おれは今から思いっきり刀を振る。最後の一撃にはならねぇだろうが、大事な一撃だ。まさかとは思うが……避けたりはしないだろうな?」


 おれは声を張って挑発した。全ての力を振り絞った一撃にはならないが、今残っている神聖力はほとんど使い切ってしまうだろう。つまり、これが効かなかったら、おれに勝機はなくなる。逆に有効打になりさえすれば、まだまだ勝ち目はあるってことだ。おれはサタンの性格はよく理解しているつもりだ。アイツもまだ戦いを楽しみたいことだろう。


 ーー「ふっふっ……。ボクは優しいからね、にーさんの挑発には乗ってあげるよ。でも……その技を正面から破られても、べそかかないでよ?」


 ーー「ありがてえな。サタン様様だよ。」


 おれは刀を脇に構え、全ての神聖力を注いだ。神聖力と魔素は今にも爆発しそうなバランスで保たれている。そしてそのバランスをほんの少し、感覚でしか分からないほどに乱し、神聖力は爆発を開始した。そしてそれに更に少しずつ魔素を混ぜていき、爆発を加速、調整していった。能力スキルによる炎が刀を渦巻いていき、さらにその炎は爆発を飲み込んで成長した。


 ーー「少し……危なそうだね……!!」

 ーー「『召雷ゼウス』!!」

 ーー「ッ!?」


 刀を握って突進していくおれに向かって、サタンは時空を歪ませるほどに強力な雷を放った。サタンの能力スキルは自然災害を操るものだ。彼女の扱う雷は一般的な雷魔法とは異なり、落雷という現象そのものを強化して発動している。故にその威力は雷の範疇を大きく超すことが可能なのだ。サタンの強力な魔力によって発動されれば、大地を割るほどの雷が連射されることになる。

 そして、それはまさにおれの求めるものだった。神聖力は魔素、あるいは魔力と不均衡に混ざり、爆発反応を起こすとき、周囲の魔素や魔力を飲み込んで更に大きな爆発になる。そしておれの炎はその爆発エネルギーを食って成長する。つまり、今おれの刀を渦巻いている炎は、魔力を用いた防御、あるいは攻撃を全て吸収してお返しするというわけだ。迎撃も不可能なまさに“防御不能の一撃”。防ぐ方法は回避しかないということだ。


 ーー「『天煌神アマテラス』!!」


 ーー「うぐッ…………!!」


 10メートルにもなりそうな巨大な炎を纏った刀を、おれは力の限りに振るった。炎に強い耐性を持っているおれでさえ熱を感じるほどに熱く、その斬撃は遥か彼方に見えるサタンの作り出したこの神域の結界に穴を開けるほどに強力だった。この技を回避させないように煽ったのは正直ズルい気もしたが、これくらいしなければまず勝てないほどに隔絶した差があった。………さて。楽園のような地が一転、地獄のような灼熱の地へと変化したわけだが……サタンはどうなってるだろうか。腕の一本でも持っていけていれば嬉しいのだが……。


 ーー「ハァ………かはッ…!ハァ……ハァ……。……いや……スゴいね……。ッ……。」


 サタンは炎を竜巻で巻き上げて現れた。そして神域は再び楽園へと戻った。見た感じ五体満足ではありそうだが、中々に深い傷を負っているようだった。恐らく骨や内臓にも損傷ダメージは入っているだろう。おれもおれで軽傷とは言えない上に神聖力という大きな手札を失ったわけだが、こうなれば勝負の行方は分からない。おれは少しでも早く優位に立てるよう、魂を奮い上がらせて神聖力の回復にも努めた。


 ーー「…魔力量は半分くらいにはなったか……?おれも戦えるのはあとほんの少しだ……。」


 ーー「第二ラウンド………決着ケリつけようか……。」


 おれとサタンは一層気を引き締めて向かい合った。依然、不利なのはおれの方だろう。だがそれがなんだ。不利な場面など数えられないほどに経験してきた。そして同じ数だけ勝ってきた。屁理屈だが、おれは今もなお優勢だ。悲観することなど、おれには何一つとして存在しなかった。

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