第50話 光
ーー「は!??」
おれが“果ての地”になるって言ったのか?いや、“果ての地”ってのは世界の交差する地のことだろ。おれがそれになるってのは………どういうことだ?
ーー「まぁボクの話を聞いてよ。厳密にはにーさんが“果ての地”になるんじゃなくて、にーさんが直接根源に、つまり世界の外側に行ければよくない?ってこと。」
ーー「………?………ああ!そういうことか!次元を超えて影響を及ぼす力なら世界も超えられるだろうってことか!」
ーー「そ!どう?」
確かに一理ある。どこにあるかも分からない土地を探すより、おれが根源に至るために直接道を作ってしまえばいいと。そもそも全てのものは追及すれば根源に至るというのだから、おれの力をそこに向かわせればいいではないか。………。
ーー「いや、冷静に考えれば現実的じゃないな。そもそも世界の外側ってのをおれが理解できないと始まらないからな。」
ーー「……そっか。まぁ普通に考えればそうだよね。」
実際に、世界の外側に作られた“鬼火舞”を握っていても、その“世界の外側”の力は感じられない。おれがあらゆる力を支配できるとはいっても、それはこの世界を出れば完全に遮断されてしまう。どれだけ頑張っても辿ることはできない。だからこの世界から外側に繋がっている、今存在している道を探すしかなさそうだ。
ーー「悪いな。まぁ刀から力を感じるようになったら何か変わるかもしれねぇけどな。」
ーー「気にしなくていいよ。ボクにできることなんて提案するくらいしかないしね。」
ーー「そうか。じゃあ今日はもう寝よう。部屋は好きに使ってくれて構わないからな。」
ーー「おぉ!!にーさんの空間収納って家も入ってるのか!!」
おれは家を取り出し、そしてそこで夜を過ごすことにした。サタンにも空いてる部屋を自由に使ってもらい、おれはおれの部屋で寝た。獄境で過ごす初めての夜は、思ったよりも何の変哲もない時間であった。
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ーー「おーーい!!にーさん!起きてーー!!」
ーー「うぅ………サタンか……?」
眠っていると、おれの腹が重くなり、薄目を開けてみるとサタンがおれを起こそうとしていた。まだ外は暗いっていうのに……ていうかなんでおれの部屋に勝手に入ってきてるんだ。
ーー「おれの部屋に入ってきてんじゃねぇよ。それにまだ夜中じゃねぇかよ。」
ーー「部屋は好きに使っていいって言ったじゃんか。それに夜じゃなくて昼だよ、昼。」
昼だと?何を言ってるんだ。窓の外に広がる闇を見ればどう考えても…………あ、いや。そういえばおれは今獄境にいるんだっけか。なら昼と言われても不思議じゃないな。………まったく、朝になっても暗いのは嫌なものだ。
ーー「起こしにくるのはいいけど、それ以外の理由でおれの部屋には勝手に入るんじゃねぇぞ。起こしてくれたのはありがとう。」
ーー「そりゃボクだって普段はノックくらいするよ。………にーさんってもしかして朝弱い?」
ーー「……………まぁな。」
ーー「………ああ、ずっと現世で過ごしてたから?魔族は現世の朝には弱いもんね?」
確かに遺伝的な……というより生物的に朝が苦手という可能性もあるけれど、おれの場合は単純に寝るのが好きってだけな気もするな。実際のところは分からねぇけど。
ーー「おれは魔族として生きてるわけじゃねぇけどな。頭に血が昇ったときに“おれは魔族なんだ”って実感することはあるけど。」
ーー「凶暴性……っていうか力が爆発的に強くなるでしょ?気をつけないと、魔に堕ちたら戻れないよ。にーさんはまだ善神としての魂が宿ってるんだから。」
ーー「大丈夫だよ。滅多なことがなければ怒ることはない。それに今まで以上に怒ることがこれから先あるとは思えないからな。」
負の感情に呑まれ魔に堕ちることは、ある意味生物としての境界を超えることでもある。それゆえに力の限界がそれまで以上に引き上げられたりもするようだ。サタンと戦うときにはそれくらいの力が必要になるかもしれないが……魔に堕ちることなく上手く制御できたりはしないだろうか。一時的に魔なる力を引き出せるように………あの全身の血が燃え上がるような感覚が鍵になりそうだな。“果ての地”を探しながらその辺りのことも考えておくか。
ーー「まぁとにかく出発するか。今日も北でいいんだよな?」
ーー「うん。だってどこに行けばいいかは分からないし。とりあえずずっと北に行こう。」
そうしておれ達は今日も北にまっすぐ進んでいった。獄境の集落というのは現世ほど発達していないようで、どこも小さな村のようであった。“カネ”という概念もなく、物々交換かただ強者に略奪されるくらいしかないようだ。ただ強力な魔族が住むような屋敷は現世のものとは遜色がないほどに立派で、色んなもの・情報が保管されていたりもするらしい。そして遥か北の地には“最後の魔王”と呼ばれる強力な魔族が住んでいる。
ーー「行ったって無駄な気はするけどなぁ。少なくとも世界の内側の全てを知り尽くしているはずの創造神様が知らない情報を、この世界の者が持っているとは思えない。」
ーー「そりゃそうだけど……少しでも可能性があるなら試さないわけにはいかないでしょ?ボクだってもし手掛かりが掴めれば儲けものとしか思ってないよ。」
まぁそうと言えばそうなんだが……“手掛かりのない手掛かり”を探す旅というのは思ったよりも面白くないものだな。光の少ない世界でおれ達は魔物を退けながら、ただひたすらに北に上った。




