投獄
ーー「おっちゃん、これいくら?」
街を歩いているとたくさんの露店が並んであった。その中に色んな小物が売ってある店がある。おれは興味を持ったので、店主のおっちゃんに声を掛けた。
ーー「お、若い兄ちゃんが来たか。それは……金貨5枚だな。」
ーー「高ッ……ご…5枚……?」
こんなちっちゃなものに50,000Gもするのか……。いや、小さいから加工料とかが掛かるのかな。50,000かぁ……いや、その程度を惜しむべきじゃないよな。
ーー「……そんなもん欲しがるってことは………兄ちゃん、もしかして“そういう”ことか?お洒落って訳じゃなさそうだもんな。」
ーー「まぁ……そういうことだな。」
ーー「兄ちゃん若いし……応援っつーことでまけてやるよ。金貨3枚でどうだ?」
ーー「え!!いいのか!?…………いや…でもちゃんと払うよ。これにお金を惜しむのはどうかと思うからな。」
ーー「はっはっ!そうか!いや、良い心掛けじゃねぇか。じゃあ50,000貰うからこれも持ってけ。」
そう言っておっちゃんは洒落たアクセサリーをくれた。何の魔法的効果もないけれど、綺麗なものだった。
ーー「いいのか?ありがとう。」
ーー「毎度ありッ!」
おっちゃんに金貨を渡しておれは再び進みだした。おっちゃんは手をひらひらと振って見送ってくれている。……ちくしょう。カッコいい野郎だぜ。おれも手を振って宿に向かう。
宿は高くもなく、低くもないところにした。寝る場所に無駄に金を掛ける必要もないからな。それはそうとケチるほどでもない。ベッドの寝心地が悪くなければ………まぁ…ここのベッドはあんまり良くないな。フカフカしていれば良かったんだが……まぁいいか。細かいことは気なさなかったっていい。たった一晩の問題だから。おれはベッドに入って夜を越した。
相変わらずおれは昼に起きた……ということもなく早朝に起きた。というのも、外に人の気配がしたからだ。何人もの人が、宿の外で構えているようだった。……おれに用じゃなければいいんだが…。おれは朝から少々不快になりながら宿を出た。すると目の前には集団のリーダーのような男と、その横にいつか見た男が立っていた。
ーー「!ボス!アイツです!」
ーー「昨日のクマさんじゃねぇか。名前は確か……ウー……なんとかだったな。」
ーー「ウーラリードだ!」
そうそう。ウーラリードだ。昨日勝手に金を抜いたことを怒ってんのか?……いや、そんな感じでもねぇよな。……で、ウー………アイツが“ボス”って呼んでるってことはあの男が……。
ーー「アンタがパーセンダか?」
ーー「パルセンダだ。聞いたところによると昨日、彼が世話になったそうじゃないの。」
ーー「え……?いやいや、そんなことないよ……ありませんよ。」
ーー「いやね、ウチの者がやられておきながら無視するのもいかんでしょ?だからウチで話だけでも聞かせてもらうと……手荒な真似はせんからさ。」
パ……パーセンダ?は奇妙な笑みを浮かべながらそう言った。なんか……ウーもそうだったけど嫌な雰囲気だな。……でも面倒ごとは嫌だしな……。
ーー「ウチってどこだ?おれ今旅の途中なんだけど。」
ーー「ユーグラってとこさ。なんて言ったらいいかね……中央大陸の東端の街だ。君がどこを目指してるのかは知らんけどさ。」
ーー「行く。連れてってくれ。」
おれは食い気味にそう答えた。東側ならちょうど進行方向と同じだ。そこまで運んでいってくれるならなんの文句もない。少なくとも今は大人しく従っておいた方が得だ。
ーー「そうか。思ったより従順で助かるよ。ま、念のため拘束はさせてもらうよ。」
ーー「お?」
パーセンダがそう言うと、おれの手元から鎖が出てきておれの両腕を縛った。頑丈そうだな。推測ではあるが、恐らくは魔力を封じる能力だろう。おれにはこういう類の力は効かないんだが……今はこのままでいいか。そしてウーが空中に手をかざすと、不思議な門が出てきた。それをくぐると、いつの間にかおれは建物の中にいる。
ーー「驚いたか?ウーラリードの能力はマーキングした場所にいつでも空間を繋げられるってもんなのさ。便利だろ?」
ーー「空間魔法系か。珍しいな。」
ーー「で、話なんだけど……。」
ーー「え”ッ……?」
おれは牢の中に放り投げられ、パーセンダは鉄格子の前に堂々と腰を下ろした。話……を聞かれる雰囲気じゃないな。手の鎖を解く気配もない。
ーー「やっぱね、ウチにも面子ってもんがあるんよ。だから君が二度とウチに逆らわんようしっかり躾けんとな。」
ーー「えー………やだ。」
ーー「ま、僕は忙しいから他の人に頼むから。そうそう、気づいてると思うけど、この牢は魔障石でできてるから出よう思っても無駄だかんね。じゃ。」
そう言ってパーセンダはどこかに行ってしまった。……ていうかおれには関係ないけど魔障石でできてんのか。魔障石って獄境にある石だったから……魔族との交易がちゃんと出来てんだな。なんか安心した。
ーー「兄ちゃんは……俺らと話をしようさ……。」
ーー「………。」
簡単に捕まっちまったのはおれの失態として……さて、どうやって脱出しようか。