第27話 要注意人物
ーー「よし、こうしよう。今ミスロンで捕えてるウーラリードと一緒にデモンゲートを北大陸に送るとしよう。そうすれば北と南を自由に行き来できる。おれは中央大陸には転移できるから万が一の場合でも対応できるだろう。そして早いうちに北と南の国民は避難させておこう。人がいたんじゃまともに戦えないからな。」
ーー「敵の優先順位は?」
ーー「魔神達の能力を把握していないから今分かる要素だけで話すが……。第一にアスタロトを倒すべきだ。というか、アスタロトが出たらおれが応戦する。次に第七の魔神・アスモデウスだな。アイツは恐らく人を操る能力を持っているだろうから。他は分からん。が、軍隊で応戦するときは時間稼ぎに徹してもらいたい。充分な戦力が整うまではな。」
ーー「………大魔王様、貴方が魔神を容易く殺せるのならば、アスタロトよりも下位の魔神を優先的に処理していく方が賢明では?」
ーー「交渉のときは状況が良かったから殺せたが、2人以上となるとそう簡単ではない。それよりもアスタロトを相手にするべきだ。おれが1人でヤツを引きつければ残りの6人で3人の魔神を相手できるからな。2年前の戦闘でセリアとイリアは理解しているだろうが、ルシフェルほどの強さの者を相手にするとなると法帝であろうと簡単に殺されてしまう。上手くいけば時間も稼げるだろうし重傷を負わせられる可能性だってあるが……危険だ。」
ーー「確かに。」
ーー「それでだ。当然のことながら魔神達はおれを消すための作戦を考えてくるだろうからおれが死ぬ可能性も充分にある。気をつけるがな。だがまともに戦闘をすれば相手も無傷とはならない……はずだ。だからどうか折れずに戦ってくれ。そしてもう一つ、魔神は魔族以上に生命力が強い。くれぐれも油断しないように。」
伝えるべきはこれくらいかな。おれは能力で即死させられることもないし生命力で言っても魔神共に負けることはないが………どうも嫌な予感がするからな。そもそも、正面から戦ってアスタロト1人に勝てると断言することもできない。いや、能力が効きづらいおれの方が圧倒的に有利と考えてもいいのだけれど……それを差し引いてもどうもな。
ーー「承知しました。ではアスタロトが出れば直ちに大魔王様にお伝えすれば良いと。」
ーー「ああ。……まぁ恐らくおれのとこに出てくると思うんだけどな。」
魔神が北大陸や魔界に出ないという根拠は、さっき話した“利が無い”というばかりではない。魔神達は随分とプライドが高いからな。十中八九おれのいるところに攻めてくる。違ったとしてもおれを避けるためにイリアのいる北大陸だろう。少なくともおれという脅威から逃げるために大した戦闘員のいない地へなど行かないはずだ。それに獄境との繋がりが最も安定しているのは魔界だからな。
ーー「どっちにしろ相手の動向が分からず後手に回る以上、人類の戦力はまだ充分とは言えない。それだけに各々力を付けることを怠るな。」
後のことはいざ攻めて来られなければ分からない。獄境へ行って魔力を探ってもどうしても見つけられなかったからな。あまりに遠いのか隠れているのか。探っても無駄ならいつ来ても平気なように備えるしかない。面倒なのは鍛えて疲れてもそのとき攻めてくる可能性があることか。………まぁなんとかなるだろ。
一通り伝えるべきこと、共有すべきことを伝え、今回の会議は幕を下ろした。というのも、今この瞬間も何も起こらないと言うことはできないからだ。恐らくまだ大丈夫だろうけど、それも確信があるわけじゃない。そうなるとみんな早く帰ってしまった方がいい。おれとセリア達も例に漏れずそそくさと会議堂を出た。すると、おれ達に着いてきた護衛の者とは別の男達がそこに立っていた。
ーー「えー……っと?」
ーー「初めまして。ズーザミアより伺いに来ました。ズーザミアの太政大臣、リムアータ・アルトと申します。魔神がいつ動くか分からないとのことですので、お2人の都合がよろしければ、ぜひともズーザミアの王城にお越しいただきたく馳せ参じました。」
ーー「……ほう。迷惑を掛けておきながら、おれ達がそっちに赴けと?」
ーー「……!!申し訳ございません!しかしながら事態が事態でございますゆえ。どうかご慈悲を!」
おれはアルトに魔素の圧力をかけながら低い声でゆっくりと尋ねた。しかしながら、彼は膝を着き、頭を下げたまま答えた。なるほど、確かに彼の言うことは正しい。おれもズーザミアの者が良ければ行こうと思っていたから。その上で彼の言葉に裏がない、つまりおれ達のために今を選んだのなら、それに応えるのは構わない。が、馬車やら何やらに乗っていくのでは時間がかかりすぎる。今は一分一秒も惜しいのだ。………いや、それほどではないか。まぁ早いに越したことはない。
ーー「セリアは構わないか?」
ーー「ええ、いいわよ。」
ーー「そうか。じゃあ………。」
ーー「!?」
おれはズーザミアまで転移する門を開いた。これを潜れば時間もかからない。強いて言えばちょっと疲れるくらいだ。
ーー「せっかくだ。王子達に会いに行こうか。」
アルト達や護衛も連れて、おれは門を潜った。少し空間の歪みを感じたかと思うと、目の前には相変わらずに立派に立った城が構えてあった。




