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4話 2人でプロジェクトの否定を

「はぁーーーー」

「長いため息だな」

「誰のせいだと思ってんの?」


 アリエラに送られて部屋に入った瞬間、私はベッドへダイブした。

 ここは個室なのでミチカゼも遠慮なく私から出ている。


「なぁ〜もう少し騎士団長と話せよ〜。美味しい展開望んでたんだが?」

「なんでミチカゼの欲求の手伝いをしなきゃいけないの。……まさかアリエラが意識無い私の身体を洗った時もそんな風に興奮してたの?」

「コハクの身体には全然興奮しなかったが百合となれば別だ。随分と優しく丁寧に洗っていたぞ」


 ミチカゼは満足した表情をしながら私の部屋を飛び回る。

 式神と言ってもほぼ幽霊みたいな感じだから捕まえるのにも難しそうだった。


「堅物の騎士団長とスラム街から出てきたプロジェクト参加生。良いカップリングじゃないか!」

「黙れや」


 私は寝転がりながら鼻息を荒くするミチカゼを睨む。

 これから一心同体として生きていかなきゃいけないなんて気が重い。


 まぁミチカゼ以外だったらもっと大変なんだろうけど。


「それでどうすんの?さっきのアリエラのアドバイス聞いていたでしょ?」

「急ピッチってやつか。二次試験そんなにヤバい内容なんかな?」

「一次試験より過酷なのは当たり前だし、落ちる人数も多いだろうね」

「本当、何で俺落ちたんだろうな」


 ミチカゼは私の側へ降りてきて空中であぐらをかく。


 一次試験の内容は約2週間無人島で生き残ることだった。

 使えるのは魔法か武器だけで、食料を調達するにも獣と戦うにも己の力でやるしかない試験だ。


「今更だけど一緒に行動していた方が良かったのかも。チームを組むなとは言われてなかったし」

「でも俺と組んだらコハクも脱落者になっていた可能性もあるぜ」

「ミチカゼが私と一緒に合格していた可能性もあるよ」


 私達は数秒見つめあった後、鼻で笑う。本当に今更だ。


「とりあえず今後の作戦についてはミチカゼに任せるよ。私、考えるの無理だし」

「俺が式神になっていなかったらどうしてたんだよ」

「ミチカゼが式神にならない選択肢ってあったの?」

「無いな」


 たぶんどんな未来になっても結局ミチカゼは私から離れなかったと思う。

 だからだろうか。謎の安心感があるのは。


「ミチカゼ」

「ん?」

「生き残ったからにはプロジェクトを否定するよ」

「勿論だ。俺とお前でな」


 私はミチカゼに拳を向ける。ミチカゼも同じようにすると私達は強く拳を弾き合わせた。


ーーーーーー


 翌日。私のスマホにはアリエラからのメッセージが届いた。


【強化施設の特別フロアへ来るように】


 たったそれだけのメッセージ。何を期待していたのかミチカゼは朝から項垂れていた。


 そんなミチカゼを収納して私は部屋から出る。

 アリエラから言われたミチカゼの存在を見せてはいけない約束はちゃんと守っていた。


「あらコハク様。おはようございます」

「おはよう。ササ」


 宿舎から強化施設へ向かっていると、誰もが振り返るようなお嬢様感を漂わせるササと遭遇する。


 この子はよく強化施設で行われる訓練で組まされる子だ。


「昨日はお疲れ様でした。コハク様も無事試験を突破出来て安心です」

「ササもね。疲れは取れた?」

「ええバッチリです。でも他の人達はまだ疲れが残っているようで、食堂に人はあまり居ませんでした」

「そっか。2週間も無人島生活だったから、それが普通なのかもね」

「ふふっ、そう考えるとワタクシ達は普通から外れていますね。参加生として誇らしいことです」


 ササは上品な微笑みを浮かべて私の隣に来る。この子は否定的な考えの私達とは違って、プロジェクトを崇拝している側だった。


「コハク様はこれから強化施設へ?」

「うん。でも今日は別フロアに呼ばれているんだ。だから相手は無理かも」

「そうなのですね…。コハク様と手合わせが出来ないのは寂しいです」


 シュンとした表情をしながらササは俯く。すると突然、私に一瞬の頭痛が起こった。

 顔を顰めてしまったがササには気付かれてないようだ。


「では途中まで一緒に行きませんか?コハク様の一次試験の話を聞きたいです」

「良いよ。ササの話も聞かせてね」

「はい!」


 ササは嬉しそうに頷く。そうすればまた、一瞬の頭痛が走った。

 まさかとは思うけど……後で問い詰めてやろう。


 私はササと並んで強化施設へ歩いていく。お互いに無人島での話をしていれば結構過酷な内容で、プロジェクトのイカれ具合を再確認した。

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